【東京都渋谷区の会計事務所】中川 尚税理士事務所 税理士 中川 尚 (東京税理士会 渋谷支部所属) |
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租 税 判 例 研 究 9後発的事由に基づく更正請求の可否/出資口売買契約の無効確認判決 ○種別:高知地方裁判所 第3号通知処分取消請求事件(棄却)判決 ○判決年月日: 平成22年1月22日 ○事件番号: 平成21年(行ウ)第3号 ○裁判結果: 棄却 1 概要 本件は、原告X2(祖母)の平成9年度の所得税の申告及び原告X1(孫)に対する平成9年度の贈与税の決定処分に係る課税標準等の基礎となった原告ら間の出資口の売買契約が、錯誤により無効であることが判決によって確認されたこと(本件確認判決)を理由に、原告らが国税通則法23条2項1号に基づく減額更正の請求をしたところ、処分行政庁が更正をすべき理由がない旨の通知処分をしたため、原告らが通知処分の取消しを求めるとともに、原告らの主張額に基づく減額更正の義務付けを求めている事案である。 2 争点 後発的事項によって、通則法23条1項は適用されるか (更正の請求) 3 前提となる事実 ・X1は平成9年X2より、有限会社Aの出資金のうち1687万3千円(1口15000円×1125口)の譲渡を受け、売却契約を行った。X2はその契約に基づいて譲渡所得を計上したうえで所得税の申告をした。 ・平成12年2月、X2の父が死亡し、X1は同月にA社の代表取締役に就任した。 ・X2の死亡した翌年の平成13年8月頃から税務調査を受け、税務署によれば、上記売買契約における出資金の適正な時価は、1口10万2590円で評価すべきであり、原告の計算は錯誤であるとして、平成13年8月、X2に贈与税の申告をするよう指摘した。 ・その指摘を受けて、平成13年10月に売買契約の無効であることを確認し、すみやかに売買代金1687万3千円を返還する確認書を作成。同月、臨時社員総会において、X2の出資口2000口のうち、1125口をX1に変更して、X2は875口、X1は1125口とする定款の変更を議決した。 ・無効確認に伴い返還処理を行ったうえで、平成9年分の所得税の更正の請求をしたが、平成14年2月、処分行政庁は更正すべき理由がないとして、平成9年分の贈与税5775万9700円、無申告加算税866万2500円とする不可決定処分をした。 ・原告らは、平成15年9月に決定処分の取り消しを求めて提訴を行うが、地裁判決では平成17年2月、高裁判決では平成18年2月、最高裁判決では平成18年10月に請求は棄却された。 ・平成18年12月、X1はX2を被告として、本件売買契約の無効確認を求める訴訟を提訴し、平成19年5月、本件売買契約が無効であることを確認する判決が言い渡され確定した。 ・平成19年7月、上記確認判決が確定したことを受けて、原告らは平成9年分の贈与税および所得税の更正を請求したが、処分行政庁は更正をすべき理由がない旨の通知処分をした。 ・平成19年10月、原告らは異議申し立てをするが異議審理庁から棄却され、平成20年1月国税不服審判所長に対して審査請求をしたが、同年8月に棄却された。 4 裁判所の判断 国税通則法23条2項の趣旨に鑑みれば、同項1号に定める「判決」とは、納税申告 時には予想し得なかった事由その他やむを得ない事由に基づき課税標準等又は税額等の基礎となった事実を変更するものをいうと解すべきである。 本件確認判決は、原告X1につき、本件売買契約によって贈与税が生じるにもかかわらず、これを認識していなかったという課税負担の錯誤があることを理由に同契約が無効であると判示しているものと解される。 原告らは、本件売買契約によって、原告X1に贈与税が生じるか否かについて関心をもっていたにもかかわらず、出資口の適正な評価を誤り、同契約を締結しても贈与税が生じないと軽信し、原告X1においてはその申告をしなかったものであって、これを十分に検討し、あるいは、税理士などの専門家に相談していれば、評価通達に従った出資口の適正価額が幾らで、原告X1に贈与税が生ずるか否かにつき、比較的容易に認識できたと認められる。 原告らは、法定申告期限経過後にされた税務調査の際の指摘を受けて錯誤に陥っていたことを認識し、その納税申告の内容を翻して更正請求に及んでいるところ、このような課税負担の錯誤及びそれに基づく減額更正の請求を認めた場合には、租税法律関係を不安定にし、納税者が税額等についての十分な調査をした上で適正な申告を行うことによって租税法律関係を効率的かつ合理的に確定するという申告納税制度の趣旨を没却することになりかねない。 これらの諸事情に照らして考えると、本件確認判決は、納税申告時には予想し得なかった事由その他やむを得ない事由に基づき課税標準等又は税額等の基礎となった事実を変更するものということはできず、国税通則法23条2項1号に定める「判決」に当たらないものというべきである。 5 判決 本件各処分は適法であり、取り消されるべきものではないから、本件訴えのうち、原告X1の平成9年分の贈与税について取得した財産の価額を零円にすべき旨の更正処分及び原告X2の平成9年分の所得税について株式等譲渡所得の金額を零円にすべき旨の更正処分の義務付けを求める訴えは、いずれも行政事件訴訟法37条の3第1項2号の訴訟要件を欠くものとして却下すべきである。 ※国税通則法第23条 ○第一項 「納税申告書を提出した者は、次の各号のいずれかに該当する場合には、当該申告書に係る国税の法定申告期限から5年(第2号に掲げる場合のうち法人税に係る場合については、9年)以内に限り、税務署長に対し、その申告に係る課税標準等又は税額等(当該課税標準等又は税額等に関し次条又は第26条(再更正)の規定による更正(以下この条において「更正」という。)があつた場合には、当該更正後の課税標準等又は税額等)につき更正をすべき旨の請求をすることができる。」 1.当該申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあつたことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額(当該税額に関し更正があつた場合には、当該更正後の税額)が過大であるとき。 2.前号に規定する理由により、当該申告書に記載した純損失等の金額(当該金額に関し更正があつた場合には、当該更正後の金額)が過少であるとき、又は当該申告書(当該申告書に関し更正があった場合には、更正通知書)に純絹失等の金額の記載がなかったとき。 3.第1号に規定する理由により、当該申告書に記載した還付金の額に相当する税額(当該税額に関し更正があつた場合には、当該更正後の税額)が過少であるとき、又は当該申告書(当該申告書に関し更正があつた場合には、更正通知書)に還付金の額に相当する税額の記載がなかったとき。 ○第二項 「納税申告書を提出した者又は第25条(決定)の規定による決定(以下この項において「決定」という。)を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する場合(納税申告書を提出した者については、当該各号に定める期間の満了する日が前項に規定する期間の満了する日後に到来する場合に限る。)には、同項の規定にかかわらず、当該各号に定める期間において、その該当することを理由として同項の規定による更正の請求(以下「更正の請求」という。)をすることができる。」 一 その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したとき。 その確定した日の翌日から起算して二月以内。 |
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