選択と集中

 

木樽専門のウェブサイトがある。もともとディスプレイ什器やインテリアを販売をする会社の一事業部で販売されていた商材の一つでしかなかった木製の樽だ。

現在ほどネットが普及していない当時、インターネットによる販売は、社内では懐疑的で、積極的に手を挙げる人がいなかったため管理部門で財務などを担当していた女性が本を読んだり人に聞いたりしながら製作することになった。

 

開設当初は売上も思わしくなかったが、インターネットが普及するにつれ、徐々に増えていき、それまでの取引先だけでなく、今までまったく取り引きがなかったところから直接注文が入るようになった。

　

そんな矢先、不況の影響で会社が倒産、自ら起業し、事業を継続していくことを決断し、ウェブサイトの販売部門だけを引き継いだ。

 

　最初は、前の会社と同様、多くの商材を扱っていたが、1年半経過しても売上は思うように伸びず、思い切って商品の絞り込みを行い、自信を持って売りたいものだけを売ろうと木樽に決めた。

 

　木樽は、ほとんどが国内でつくられ、素材は四万十檜を間伐したもので、香りの良さと丈夫さで知られる四万十檜を専門の木樽職人が樽に仕上げていくという高い技術を持つ日本に数人しかいないという職人の手仕事でつくられたものだった。

 

　専門サイにすることによって、国産の木を使い、職人が手づくりしていることもアピールしやすくなり、また木樽に絞ったことで、木樽の新たな使い道など、アイデアが次々に浮かぶようになったという。

 

　当時、木樽のほかにも売れていた商材があり、それを切り捨てるのは勇気がいる決断だったが、木樽に集中することで本当に売りたいものを前面に出すことができた。

 

大手企業であれば、経営資源を全方位に向けることが可能だが、中小零細企業にとっては、少ない経営資源を無駄なく配分するためには選択と集中が欠かせない。