本多劇場 9/3〜9/19
9/11(土)観劇。座席 A-3
作・演出 ケラリーノ・サンドロヴィッチ好景気に浮かれたいた2002年の夏、東京を大地震が襲った。首都脱出を図る避難船団が続々と出発していく中、公平な抽選によりその最終便に乗り合わせたのは、健康診断の結果が不安な船長(廣川三憲)やジュラルミンケースを抱えた銀行強盗(山崎一/西牟田恵)、保険金を受け取れない姉妹(峯村リエ/松永玲子)、元保険勧誘員(村岡希美)、2億円の宝くじを当てて歌手として復帰した一之江キリナ(犬山犬子)、誘拐犯・金王周三郎(大倉孝二)など、ワケありの人たちばかりであった。
今回のラストは賛否両論で、ナンセンスとしては面白いとする派と、あの終り方はないんじゃないの〜とする派だ。私はラストでずっこけたので、後者だったりする。マスコミがまちまちの情報を流し、その流通する情報や噂が拡大していき、現実がわからなくなってくる中盤までは非常におもしかった。しかし、(注意!オチばらしになってしまうので、今後ビデオなどで観ようと思っている人は読まない方が懸命・・・)死者を運ぶのが船だったり、みんな死人として終りにしてしまうオチには物足りなさを感じずにはいられない。そこにはナイロンならもっと意外なとオチがあったのではないかという気持ちがあるのだが、そんな気持ちを見透かしてのあのオチだとしたら、マンマと術中にはまった事になるが・・・。
レビューとは離れてしまう上に、おこがましいとは思うが、私ならこんなオチというのを考えてみた。それまでの流れが、殺人事件とか起こっているわりにはゲラゲラ笑えたので、ラストは一転して暗く、あの船は死人を乗せているのではなく、あふれてしまった人口を減らす為の“姥捨て”船というのはどうだろう。金に振り回され、右往左往している乗員達であるが、結局は国に殺される。地震さえも国がシュミレートした作り話。『トゥルーマン・ショー』という映画があったが、その映画同様にある地域全てが作りもの。地震を体験した上に、人知れず合法的に殺される・・・映画のパクリになってしまうが、これをリアルタイムでTV放送してたりすると娯楽というものの究極が見えてくるのではなかろうか・・・。しかし、こんな内容を神戸でやったら反感買いまくりだわな。で、タイトルの“金(マネー)”に関しては、なんか弱かったかな、と思う。金を媒体に心の不毛さは垣間見えたが、地震という状況下での右往左往の方が印象に残ってしまい、それに絡む金の話が弱かったみたいな印象が残る。どうせなら、地震という災難は抜きにしてストレートに金の話に持ってきても良かったのではないだろうか。でも、そんなどろどろをあのラストであっさり流した事で、金の価値感みたいなものを見せているとしたら、あのラストもありなのか・・・とも思ってしまう。考えが支離滅裂である。
舞台装置に関して言うと、船の甲板が舞台となっていたので、最前列はちょっと辛かった。まるで海に浮か亡霊が、船を見上げているようであった。役者に関しては、言うまでもない程の充実ぶりである。今回は客演者もよく、特に不条理な世界に溶け込まない山崎一が、ずばぬけて良かった。西牟田恵に関しては西牟田でなくても・・・という感じだったのでイマイチ。
“NYLON100℃”自分が観た公演ベスト
1.カラフルメリイでオハヨ'97 2.ファイ 3.フローズン・ビーチ 4.吉田神経クリニックの場合 5.ザ・ガンビーズ・ショウ Bプロ 6.薔薇と大砲〜フリドニア日記#2〜 7.偶然の悪夢 8.フランケンシュタイン 9.テイク・ザ・マネー・アンド・ラン 10.イギリスメモリアルオーガニゼイション 11.ロンドン→パリ→東京 12.下北沢ビートニクス 13.ザ・ガンビーズ・ショウ Aプロ
作・演出 むっちりみえっぱりかつて一世を風靡した、なわとびアイドルグループ「Someting to Drink」の栄枯盛哀な話。ホームページ( http://hello.to/mucchiri_mieppari/)にあらすじが出ていたので、無断借用(ごめんなさい)。
なわとびアイドル「Something to Drink」は、RUN(佐藤沙恵)、SUMIRE(江川瑠衣)、PANSY(樋口徳子)、UME(山本由佳)、SAKURA(古谷充子)の5人組。ロックミュージシャン菊池・J(吉田麻生)のプロデュースでデビュー曲が大ヒットするが、その後は鳴かず飛ばず。ただ一人売れっ子のSUMIREが結婚して引退すると宣言した朝に、熊になったPANSYに食べられてしまう。
・・・こんな内容。アイドルグループの崩壊をこうも情けなくチープに描いたのには頭が下がる。平田オリザが集団の崩壊を『海よりも長い夜』で見せたが、それに匹敵する素晴しさであった。最後のオチは熊になったPANSYに喰われるという今までの脈絡なんてどーでもいいばかばかしさ。その感覚が好きである。時間が2時間と長かったのが、ちょっと辛かったが(でも全然退屈はしない)次回公演も是非観たい、と強烈に思った。
“むっちりみえっぱり”は、世田谷区主催の演劇ワークショップで知り合った6人で1997年に結成されたらしいが、その劇団名といい、そのへなちょこさといい、久しぶりに“いいぞぉぉぉぉ〜”という衝撃を受けた。鳥肌が立ってしまった、とまではいかなかったが、その一歩手前のぞわぞわ感を味わった。どう書いていいやら非常に困るが、以前猫ニャーを初めて観た時もそう感じたのだが、得体の知れない何かゲル状の物を握って確かめようとするのだが、握る事が出来ず指の間から逃げ、又何か違う得体の知れない物質に変わっているって感じ。って余計にわからないが、そんな感じなのである。
余談になるが、今年(去年?)のGG演劇フェスの公開二次審査で落選したらしいが、もったいない話しである。審査員は何を審査しているんだか、とちょっと悪口を言ってみたりして・・・。
構成・演出・振付 大島早紀子92年、93年、98年に上演された作品の世紀末バージョン。2000年の北米30公演ツアーに先駆けての公演。
98年版の公演時の雑誌インタビューで『秘密クラブは“自分自身”の中にあるいろんなイメージなんです』と大島早紀子が語っていたが、今回はそのイメージに変化があったのだろうか、私は、前回とは違う作品として受けとった。作品の違いなのか、自分の受け方の違いなのかは判断できないが、私が観た98年版と比較すると、まったく違うイメージを受けた。H・アール・カオスは、自分の作品やスタイルを解体しながら、再構築していくという方法を取っているらしいので、再演でも新作としての印象が強い。それも魅力の一つだと思うので、変化に対しては肯定的な見方である。
前回は、ある秘密クラブを訪れた人が、さまざまな部屋に迷い込んでいき、覚める事のない悪夢のような情景の中で、もがき苦しむ幻想的な舞台・・・と自分は感じたが、今回は、さらに退廃的なイメージが強まり、より苦悩が伝わってくる舞台になっていた。前回は白河直子が演じる人物に堕天使(=悪魔)の姿を見たが、今回はその堕天使に翻弄され、その狂気の中で猜疑心や欲望が膨らみ、苦悩する一人の人間の姿が見えた。秘密クラブという場所は、人間の心の部屋としてのイメージであり、どの部屋に逃げ込もうとも心の安らぎは訪れない。まるでノイズが頭の中を支配し、追い払う事ができない様な苛立ちを覚えた。前回は、舞台が終った途端、不思議と気持ちが晴れ晴れとしたが、今回は重いままであった。そんなところも自分としては、大きな違いであった。前回同様、白河直子の存在は大きい。登場するだけで空気が一変する程である。そして、効果的なライティングは、この舞台には欠かす事が出来ない素晴らしいものであった。
“H・アール・カオス”自分が観た公演ベスト
1.ロミオとジュリエット 2.秘密クラブ…浮遊する天使たち'98 3.秘密クラブ…浮遊する天使たち2000
川下大洋、三上市朗、後藤ひろひとのプロデュース集団『大田王』の第二弾。他の出演者は楠見薫、久保田浩(遊気舎)、粟根まこと(新感線)、福田転球、石原正一、山内圭哉。この日だけのゲストで、M.O.Pの木下政治。
前回同様、わざわざ大阪まで観に行った甲斐があった、と言える公演であった。こんなバカなものを高い交通費を出してまで、わざわざ観に行くとは、なんて物好きな・・・という意見もあったが、この“バカなもの”ってのが一番好きな私には、とんでもなく嬉しい公演であり、大満足で帰路につけた公演であった。腹抱えて笑いましたよ。マジで。本筋に『スパイ大田王』というのが流れてはいるが、関係ない話も多い・・・。内容を全て書くのはしんどいので、適当に列挙しときます。
こんだけ盛り込んでます。ただ一つ残念だったのが、『BUGS in the BLACK BOX』でやった、格闘アカペラを再度演目に加えてしまった事。曲目やら設定は違っているが、一度キリだからこそ伝説だったし、面白さがいつまでも頭の中にこびり付いていたのに、再度演じてしまっては、面白さ半減である。ピットアカペラだけで充分だったと思うだけど・・・。
- 久保田浩の前座ショー
(客入れも久保田浩で、客入れから前座ショーが始まっている周到さ。本題の前座ショーの内容は、スポーツ百景。「お前、そのスポーツ実はへたやろっ」ってのを一人芝居で見せる)
- Opening<Mission Impatient>
⇒作/後藤ひろひと 演出/久保田浩
- 暗黒の魔女サビーニャ
(“ハムナプトラツマラン”という呪文を唱えながら登場する楠見薫がサビーニャ。合い言葉を聞き逃した久保田浩が、コンタクトを取る本人であるサビーニャに、占いで合い言葉を教えてくれと頼むという内容。そこで出された合い言葉は、“セリフを噛んだら役者をやめる”という久保田には辛い合い言葉・・・で、言ったそばからセリフを噛む久保田浩)
⇒作・演出/後藤ひろひと
- 蘇る七曲署(『太陽にほえろ』のパロディ)
⇒作・演出/石原正一
- スパイのいる駅(作者が題名を決めなかったので、題名は日替わりらしい)
⇒作/土田英生 演出/楠見薫
- コムサデ正一
⇒構成/山内圭哉 コーディネイト/石原正一
- ぼけぼけサラリーマンの日常<この日だけのスペシャルメニュー>
(バス待ちの二人。レンタルビデオで借りたタイタニックの2巻目が、間違ってゴーストバスターズになっていたのに平気で見ていたイシザワ(三上市朗)と、話が噛み合わない同僚(木下政治)の会話)
- 格闘アカペラ『てんとう虫のサンバ』
- 大田王インフォメーション(映像)
- オーディション転球(“BOYS TIME”のオーディション風景)
⇒福田転球自作自演
- 訓練施設三十郎
(地獄の里群馬県にある、三船敏郎になる訓練施設“赤いコンニャク”に侵入したスパイの話)
⇒作・演出/後藤ひろひと
- 人間120ch(テレビものまねメドレー)
⇒川下大洋自作自演
- ショッカー・プレゼン
(各々考えた怪人の強さ比べ。この日の対決は楠見薫の“怪人ぴあまん”VSドナイシタインン博士の“乳のみ怪人ナツゲルゲ”)
⇒構成/粟根まこと
- 覆面課長<マスクド・サラリーマン>
(とある洋食屋での三人の会話)
⇒作・演出/三上市朗
- いさおショー
⇒三上市朗自作自演
- 放送局占拠
⇒作/川下大洋
- スター・ウォーズに出たい!
(ハリウッドに電話して『スター・ウォーズ/エピソード2』に出してもらおうという企画)
⇒構成/山内圭哉
- ピットアカペラ『What a wanderful world』
- 後藤ひろひと一人芸『ウッカー』
(“ウッカー”と言いながらウルトラQのタイトルを作るだけの芸)
⇒後藤ひろひと自作自演
- あもきゅー<Amon&Tenkyu>(“BOYS TIME”の練習風景)
⇒構成/石原正一
- ムトゥ(インド映画のパロディ)
- ところどころで挟まれる石原正一演じる『水泳くん』の映像
- 終演の挨拶は、じゃんけんで負けた川下大洋
“大田王”自分が観た公演ベスト
1.BUGS in the BLACK BOX 2.MISSION IMPATIENT