2000年11月はこの4公演

 


劇団☆新感線
「古田新太之丞・東海道五十三次地獄旅〜踊れ!いんど屋敷」

サンシャイン劇場 11/4〜11/21
11/15(水)観劇。座席 20-29

作 中島かずき
演出 いのうえひでのり

 古田新太之丞(古田新太)、からくり戯衛門(粟根まこと)、ふぃっとねす小僧半次(河野まさと)の三人は“世直し天狗”と称し、悪代官の屋敷に押し入っては蔵を荒すという、いいんだか悪いんだかわからない行為を繰り返していた。そんなある日、悪徳商人・曇屋丸兵衛(深沢敦)と仮面侍X(右近健一)の悪だくみの密談中に現われた世直し天狗は、見つかりながらも千両箱一つを盗んで逃げだした。しかし、中には小判はなく、とある書状が入っているだけであった・・・。
 次の日だか数日後だか忘れたが、世直し天狗の昼間の顔である“探し物屋”に、江戸座という南蛮歌舞伎の看板女優・南蛮阿国(羽野アキ)から、ある書状を探して欲しいと依頼がきた。その探し物の書状は、どうやら世直しテングが盗んだ書状であるらしかったが、その事実を隠し、書状を探しに南蛮阿国らと東海道を大阪まで旅に出る事となった新太之丞達。その街道筋には同じ書状を狙う天草四郎紀香丸(高田聖子)、曇屋丸兵衛に雇われた闇の死売人・風魔木地郎(こぐれ修)、由比正雪(逆木圭一郎)、糸引納豆之介(池田成志)などが待ち構えていた。さまざまな登場人物が入り乱れ、書状の争奪戦が繰り広げられる・・・。果たして書状は誰の手に落ちるのか?仮面Xの正体は誰なのか?南蛮阿国の本当の目的はなんなのか?そんな話しが盛り込まれながら物語は進んでいく。でも、根本は単純明快なチャンバラ活劇。1994年の『新感線・秋味「古田新太之丞・東海道五十三次地獄旅〜ハヤシもあるでヨ!」』の改訂版。

 歌って踊っておきまりなギャグに笑いながらも、登場人物紹介に重点を置いた前半はむちゃくちゃ退屈。この芝居の最大の弱点は、この説明的な導入部分のつまらなさかもしれないと思えるほど。しかし、話しが膨らんでいく、後半はむちゃくちゃおかしかった。まったくもって両極端。ただ、物語的には深みはない。しかし、単純明快だからこそ要所要所のおかしさが生きているのかもしれない。頭で考える事なく直感で笑ってしまうみたいな。物語的には『ゴローにおまかせ』『宇宙防衛軍ヒデマロ』シリーズを思い出す“おバカ”路線。今回新感線の役者が中心という事もあってか、昔のスタイルの新感線を感じた。かぶり物のこぐれ修、変なおやじの逆木圭一郎など、もう懐かしいやらおかしいやら。20周年記念(偶然だが、私が観た新感線もこの公演で20本目)だってのに、いや、20周年記念だからこそ、原点的な“おバカ”な作品を選んだのかもしれない。新感線を支えているのは、こんな“おバカ芝居”を愛する人達だって事も忘れてなかったんだなぁ〜。かっこよい芝居もいいけど、やはり自分的にはこれこそ新感線って感じがする。この心意気にこれからも応援するぞーって気持ちになった。客いじりこそなかったが、アンコールでの客を巻き込んでの歌って踊っては、懐かしくて懐かしくて。そこで流れた♪ゴローにおまかせ〜♪は、これ又オールドファンには嬉し過ぎ。でも初めての人は引くかも・・・。まぁ20周年記念のお祭り騒ぎって事で大目に。劇中曲では、クィーンの「BICYCLE RACE」をアレンジした「GOINGMY TO-KAI-DO」が最高であったが、『花の紅天狗』(だったと思うのだが・・・)のオープニングの「BOHEMIAN RHAPSODY」にはかなわなかった。まぁフレディ・マーキュリーを演じた右近健一の油がのりきった時期ってのもあるんだけけど。羽野アキ、高田聖子がそろって舞台に立っているのも嬉しい限りである。キャラも昔のまま。でも、年齢だけは加算されてるけど。客演の池田成志も最高。池田の客演は確か『宇宙防衛軍ヒデマロ5』だっかた(記憶曖昧)を初めとして新感線の舞台で観るのは3回目(見逃しているのがあったらごめん)だが、毎回おかしすぎである。

 今回の芝居を観て、新感線にはサンシャイン劇場の舞台は狭く感じた。いろんな意味で。東京初登場がシアタートップスだった事を考えるとすごい成長である。


“劇団☆新感線”自分が観た公演ベスト
1.阿修羅城の瞳
2.花の紅天狗
3.直撃!ドラゴンロック2・轟天大逆転〜九龍城のマムシ
4.仮名絵本西遊記 2
5.ゴローにおまかせ 3
6.SUSANOH―魔性の剣
7.宇宙防衛軍ヒデマロ 5
8.古田新太之丞・東海道五十三次地獄旅〜踊れ!いんど屋敷
9.西遊記〜仮名絵本西遊記より〜
10.LOST SEVEN
11.スサノオ〜武流転生
12.星の忍者(再演)
13.髑髏城の七人(再演)
14.仮名絵本西遊記 1
15.宇宙防衛軍ヒデマロ 3
16.ゴローにおまかせ 2
17.ゴローにおまかせ 1
18.髑髏城の七人(初演)
19.アトミック番外地
20.野獣郎見参!
 

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故林プロデュース「2(1),コントサンプル」

梅ヶ丘BOX 11/14〜11/16
11/16(木)観劇。座席 自由(最後列:招待)

作・演出 故林広志

 故林広志の“コントサンプル”の第二期の1回目公演という事で題名もそのまま『2(1),コントサンプル』と極めてシンプル。第一期の成長株である“親族代表”の野間口徹、『薄着知らずの女』に出演した大石丈太郎、『薄着知らずの女II』に出演した三浦竜一、丸山和則、他は全て新顔というフレッシュな面々(大谷隆二、星野源、鍋島雅幸、吉田マコト、桔川友嘉、森谷ふみ)で送るショートコント集である。
 とりあえず演目。
1、デリックさん
2、移り気
3、車内販売(angel version)
4、許されざる物
5、人前SPEAK-1
6、「私の秘密は何でしょう」
7、人前SPEAK-2
8、最後の勧誘
9、ジム・ファイブ

 新作の『デリックさん』『移り気』、そして役者を代えて過去何度か演じられてきた『車内販売』のニューバージョン、演芸寄りのトークコント『人前SPEAK』(何日中に何人に話さねばならないってのがどんどん違う話しになって大きくなっていく・・・不幸の手紙に正確に伝わらない伝言を加え、そこに悪意までもプラスした作品。)、TV番組のパロディ『私の秘密は何でしょう』、ヒーローもののパロディ『ジム・ファイブ』、ブレストの段階だけ監修して台本・演出を川島健一に任せた(と言っても最後は故林広志の手が入ったみたいだけど)『許されざる物』などショートコント9作、約70分。

 いろいろな試みが見られるコントサンプル。その新しい方向性を探る第二期の1回目とあって、なかなか新鮮さが見える。第一期からは『親族代表』『漢字シティ』の単独企画が生まれたが、第二期からも新しい企画が誕生するのだろうか。その一番の試みが70年代に着目した『デリックさん』ではないだろうか。舞台は約15年前の大学のとある部室。学生運動が盛んだった60年代が過ぎ、何かシラケタ空気が流れている時代。デモ参加を呼びかけても人は集まらない、そんな状況下での物語。前日、泥酔した男(大谷隆二)は寝言で何か言ったらしい。その寝言に対して部室に集まって来た奴らの対応が微妙に違う。一体何があったのだろうか。答えは一向に明かされない。そんな擦れ違いを笑いで見せる作品。“笑い”としてはイマイチだったが、方向性はおもしろいと思った。ただ、70年代の記憶が薄い若い世代が客層の大半を占める公演で、その時代の雰囲気を笑いに繋げるのは容易ではないと感じてしまった。別に70年代が舞台じゃなくてもいいじゃん的な空気が流れていたように感じる。ならば、あくまで傍観者的に70年代をバカにしてしまっても良かったのではないだろうか。「70年代の奴らってバカじゃない」みたいな空気で笑っていたら、実は現在を生きている自分達に対する悪意がたっぷりだったとか。余談になるが、舞台上に置かれた“少年チャンピオン”は当時の物だったとか。でも、リアルな物よりは、実際には存在しないけどありそーな物、例えば“ラブ・ピースこけし”だとか、そんなものをちょこんと置いておくのもよかったんじゃないかと思った。まぁともかく、今後の展開が気になる1本ではあった。

 今回の公演の中で一番気に入った作品は、ラストがちょっとダークな『移り気』。移り気な女子社員(森谷ふみ)と、同じく移り気な係長(野間口徹)がいる会社に就職した、真面目な新入社員(大石丈太郎)の話。役者のうまさも加わって非常に面白かった。ラストの暗転で物語が頭の中に広がる面白さはさすが。

 役者としては、野間口徹の成長が目を引いた。前回の『親族代表ライブ』で、故林広志が作り出す間と言うか空気を自分のものとして吸収している感じだったが、今回もすごくいい味を出していた。『移り気』での係長役も良かったが、特筆すべきは『許されざる物』での“人間コーヒーメーカー寺岡さん”の演技。言葉は少なく顔の表情のみでの演技だが、素晴しかった。見直したって言うか、何か脱皮して笑いのツボを掴んだように感じた。作られたものではなく、自分の個性を生かした笑いという感じで好感が持てる。もしかして笑いの神様が降りて来たのだろうか・・・ってのは大袈裟か。今後が大いに期待できる。親族代表ソロライブの2回目を大いに期待したい。


“故林プロデュース”自分が観た公演ベスト
1.薄着知らずの女II
2.当時はポピュラー/奥本清美さん(23才、OL)
3.コントサンプル(スペシャル)〜ガバメント・オブ・ドッグスがゲスト〜
4.薄着知らずの女
5.当時はポピュラー2“北沢順一さん”(39才、医師)/Aプロ
6.当時はポピュラー2“北沢順一さん”(39才、医師)/Bプロ
7.親族代表コントライブ“人間力学ショー”
8.漢字シティ『すりる』
9.コントサンプル/2-99,aG:
10.2(1),コントサンプル
11.真顔のわたしたち〜親族代表/漢字シティ・プレゼンライブ〜
 

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劇団木霊「彗星達のボレロ」

早稲田大学大隈講堂裏劇団木霊アトリエ 11/15〜11/19
11/18(土)観劇。座席自由(4列目中央:招待)

作・演出 山田寛

 海の上にある都市。中央には天文台がある。その天文台は統制局の人間が治めており“都市”の人間はその場所を“塔”と呼んでいた。都市では、頭の中が真っ白になり死んでいく“白死病”と呼ばれる病が流行っていた。“塔”の人間と“都市”の人間は、相容れず闘争の日々を送っていた・・・。そんな、ちょっとSFちっくな物語。

 と、書くと単純明快な物語に思えるのだが、そうもいかないのが早稲田演劇の悪いところ。意味がありそうなシーンやセリフで頭の中が混乱してしまう。もう少し自分に理解力があればいいのだろうが、理解不能なシーンがあまりにも多すぎる。何が物語の核と成しているのか、結局理解できぬまま終演してしまったのである。困ったもんだ。
 一番の難問であり、物語のキーポイントではないかと思うのが、12人の何か。当日パンフには「劇中に登場する12の同心円・12といえば?」と書かれてあるのだが、12で思いつくのは星座くらい。その12人が楽園と呼ばれる物を作ったみたいな事を言うのだが、それと“塔”の物語の関連性も解らない。“彗星”と呼ばれる別人格を有する人間の存在も意味不明。難し過ぎて頭から湯気がでそう。

 演出に関しても不満が残る。舞台に登場するのが二人だけというシーンが多く、話のテンポも良くない。なんか順番に登場しては演じて・・・の繰り返しで自然さが感じられない。
 役者では、コールを演じた坂田厚子が良かったのだが、若干硬さがあり、自然さが薄く感じたのは残念である。個人的なのだが、トキサダを演じた天野耕平の悪人ぶりには感激した。天野耕平には是非とも悪人を演じて欲しいと願っていたので、夢叶ったりなのである。ただ、まだまだ悪人度が足らない。観客から憎まれるくらいの悪人、「正義は必ず勝つ訳ではない・・・」と落胆してしまうくらいの絶対悪。そんな悪人を演じてもらいたかった。極端に言ってしまえば、殺しても殺しても絶対に死なない、まるでホラー映画みたいな悪人。自分の死を目の前にしながらもほくそえんでいるくらいの悪人。そんな同情を一切拒絶してしまうような悪人が観たかった・・・。


“劇団木霊”自分が観た公演ベスト
1.オリオン座が消えるまで
2.彗星達のボレロ
 

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げんこつ団「外半球」

下北沢駅前劇場 11/16〜11/20
11/19(日)観劇

作・演出 吉田衣里

申し訳ありません。まだ書けていません。

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