ザムザ阿佐谷 11/29〜12/3
12/2(土)マチネ観劇。座席 自由(5列目左端:招待)
作・演出:田辺茂範、斎藤マリ、むっちりみえっぱり針房典(大沢ラーク)はハリ財閥の御曹司であるが、ビビビッと感じる女性と未だに出逢えないでいた。それならばと、幼なじみのドナー(足立雲平)とコクヨ(山本由佳)は、資産家を集めた合コンを企画した。でも、富豪限定の合コンなのに居酒屋。それもコースメニュー・・・。果たしてこんな合コンで房典は、理想の女性と巡り逢えるのか・・・そんな合コンを覗き見る本宮(樋口徳子)。彼女は、昔ロボット対戦で負けたロボットに似ている房典に恋し、近づく手段としてロボットララ(大佐藤沙恵)を操作し、房典を追い掛け回していた。まぁ、いわゆるストーカー行為・・・。いろいろな女性がアタックしてくるが、房典の心はときめかない。合コン後、自宅に戻った房典は、母親の精巧なレプリカントを地下倉庫で見つける。それを見た時、合コンでは味わえなかった心のときめきを感じてしまう。自分が望んでいたのは実は、母親似の機械の嫁だった事に気が付く。そんな話にロボット絡みの陰謀なんかも加わって、ラストは宇宙を舞台に財閥同士のロボット戦争にまで発展していく・・・んだけど一部始終はスーパーアイドル・ドナーが歌う「嫁バイブレーション」の誕生秘話を司会者(田辺茂範)が聞く公開番組だったのさって話。
手動廻り舞台とか、人物が背景になってるところとか、かあちゃん(丹野晶子)形ロボットとか、よくわからない発想も含めて、細かなくだらなさ満載で非常に楽しめた。観劇後、田辺茂範に聞いたところ、全体的な流れとしては、みんなで集まって面白いものを出し合って、それを辻褄が合うように田辺茂範本人が話しをまとめたらしい。火花を散らし合う雰囲気が皆無の両劇団らしい芝居作りだこと・・・。そんな作り方だったからか、両劇団のいいところを生かしつつも全体的にはロリータ男爵色の強い舞台であったと思う。話が宇宙にまで及ぶ壮大なんだかへなちょこなんだか微妙なところは、さすがって感じ。俺改造で針房典(大沢ラーク)が、新・針房典(大佐藤崇)になってしまうのもなんかくだらなくて良い。それをたいして驚かないどころか、意外性をも追求しないって言うか無視、そんな所がたまらなく好きである。似たもの同士の合同公演で、へなちょこさの二乗効果を期待したが、1.5倍止まりってとこかなっ。でも、力の抜け具合とかは妙にパワーアップしてたと思う。不必要に凝りすぎた美術とかは、いつもながら味わい深く、へなちょこさを引き立てていた。
“ロリータ男爵”自分が観た公演ベスト
1.犬ストーン2000 2.恋は日直 3.信長の素〜端午の節句スペシャル 4.地底人救済 5.嫁ぶるえ 6.花魔王 7.三つ子の百まで〜その100分の1
作・演出 高山広高山広の作品を6人の俳優(犬飼若浩<ガバメント・オブ・ドッグス>、井上貴子<双数姉妹>、友久航<M.O.P.>、三谷智子、井上吐詩、住吉晃生)が演じる『おキモチ大図鑑』の別巻。短編16編を矢継ぎ早に見せる。とりあえず演目を列挙しておく。
【1】シックス・センス【2】キューシュー裁判【3】20年愛【4】出張楽器マッサージ嬢【5】読心時代【6】幸福の黄色い洗濯機【7】父子舟【8】ひとり暮ら死【9】マネキンたちの休日【10】美術館/午後の死角【11】夢のような演劇初体験記【12】ハチと兵隊さん【13】セールスマンの死【14】激白!オン・ザ・ロード【15】一人が一杯ベストパートナー【16】一人づつ一杯一杯な会社『おキモチ大図鑑』という事で、一人芝居の流れを汲んで、何人かの役者が交互に一人芝居を演じるのかと勝手に考えていたのだが、まるっきり違っていたので面食らった。どちらかと言うとショートコントに近い世界だったと思う。それぞれ、なかなか面白かったのだが、高山広の良さはあまり出ていなかったように思う。出演者が故林プロデュースの常連が多いという事もあってか、故林広志の公演と微妙に印象がダブってしまったのも個人的には残念であった。まぁ同じヒロシ繋がりって事でいいか、って全然良くない。
気になった作品を挙げると、『20年愛』は、ドアを叩き「私は誰でしょう?」と問い掛ける男(井上吐詩)とそれに脅える女(井上貴子)の話。その後、呼び鈴や留守電を使って絶妙な恋愛関係を築き上げて行く話だが、一歩間違えればストーカー。しかし、それは意図的な見せ方であり、その微妙な際どさにマンマと騙され、ちょっとジンと来る。『出張楽器マッサージ嬢』はちょっとHな話。マッサージ嬢を演じた三谷智子、お客を演じた犬飼若浩の思わせぶりなHさ加減がなかなか良い。『夢のような演劇初体験記』は青年団に代表される“静かな演劇”をパロディにした作品。静かな演劇を初めて観に行った男のまさしく“夢”うつつな観劇体験。“静かな演劇”経験者としては、身に染みるところもあり、とても笑えた。青年団の門を叩いた経験のある高山広の渾身の作品ではないだろうか。『激白!オン・ザ・ロード』は、それまでセリフがなかった友久航がやっと口を開くという演出上のおもしろさを味わう。そして『ベストパートナー』は井上貴子、三谷智子のカッコ良さを堪能する。
全体的に見ると短編が走り抜ける公演だった為か、おもしろさと共に少々物足りなさも感じた。ラストのエンドロールでそれまで演じた作品をフラッシュバックで見せるという高山作品ならではの演出も嬉しかったが、高山の一人芝居でこそ生きるように思えた。暗転のタイミングの悪さもあるだろうが、人数が多い分ガシャガシャしたイメージが強く残ってしまった。
“NON GATE THEATRE”自分が観た公演ベスト
1.高山広のおキモチ大図鑑“じゃんわり” 2.高山広のおキモチ大図鑑“遠き休暇 WINTER VACATION” 3.高山広のおキモチ大図鑑・別巻“一人が一杯”
作・演出・出演 高山広チラシなどから受けたイメージで『一人が一杯』と同じ演目を、今度は高山広が一人芝居で見せるのかと思ったら違ってた。どちらかと言うとベストセレクトって感じの公演。
- Giftこころをこめて
『当時はポピュラー』で初めて高山広を観たのがこの作品。他の作品もあったのだが、この作品の印象が強くて覚えてない。それほどインパクトのあった作品である。それ以来の2度目の観劇である。もう一度観たいと思っていた作品だったので、感激もひとしおである。ストーカー男のまさしく“心”を込めた最後のプレゼントの話。一人芝居で見せるスプラッターホラーな世界はまさに芸術。
- 父ちゃんインポッシブル2
2と付くのだから1があったのだろうが、観てないのでわからない。今まで観た高山作品ではダントツのベストワン。代表作と言ってもいいんじゃないかと思うくらいに素晴らしかった。自分の中じゃ、もう勝手に代表作に決めちゃったけど。アクションあり、笑いあり、涙ありと全てが見事にマッチした作品。主人公は、単身赴任で毎年大晦日を家族と過ごせない父親。息子との絆もぎくしゃくしている。今年は5年ぶりに家族一緒に大晦日を過ごせるはずだったが、上司から突然の呼び出しがかかる。「今年中に挨拶してもらいたい人がいる」と。父親は絶対カウントダウンには間に合うように戻ると息子に約束をし、急遽九州へ。ハイジャック、ターミネーターばりの警官などが父ちゃんの行く手を立ち塞ぐ。果たして間に合うのか?そんな父ちゃんの奮闘努力する姿を描いた作品。
まるでSFX映画を観ているような世界が広がる。実際はなんの仕掛けもないのに、シーンがリアルに見えてくる。その演技力は素晴しいの一言。飛行機から飛び降りたり、猛スピードで自転車をこいだりと、超人的な場面を生身で見せる。それに『ミッション・インポッシブル』『ターミネーター』の映画を盛り込む。ホント最高傑作。
- セ・ラ・ヴィイ それが人生さ
元醤油の一斗缶が傘立てとして新たな人生を歩む姿を描いた哀愁漂う作品。ものを擬人化して見せる高山広の持ち味を生かした作品。
- キノウ・キョウ・アシタ
今日を生きる事に疲れた男の元に過去の自分が現われる。しかし男は生きる力を無くしていた。そんな時、過去の自分から「まってくれ」という呼び声がかかる。その声が気になり過去のページを一枚一枚辿っていく・・・
ちょっと長過ぎるとも感じたが、結末まで来た時のすがすがすさには驚いた。首吊り自殺をしようとした時に過去の思い出が走馬灯のように蘇る、という状況を高山広は一歩進めて、過去の自分が現在の自分と対じするという状況を作りだす。過去は過去で今現在もその時間を生きている。そんな過去の自分達が現在自殺をしようとする男の前に現われるって図式。そして、過去の自分に励まされる事により、忘れていたものを思い出し、自分の人生をまっとうした男の話である。言ってしまえば、ありきたりな話かもしれないが、それぞれのシーンを一人で演じきる事の凄さは、観た者にしか味わえない素晴らしさである。最後のシーンで過去を演じた高山広の姿が脳裏に浮かぶ。目の前に存在するものだけではなく、脳裏に焼き付いた残像までもが効果的に伝わってくるのである。そして、その過去の男達が、満面の笑顔で今の男の姿を眺めているというイメージが脳裏を駆け巡る。そんなシーンは演じてはいないのだが、見えてはいないその姿が目の前に浮かんでしまうのは不思議である。うまく表現出来ず歯がゆいのだが、実際観て「あぁ、言いたい事はこれかぁ」と驚きを体感してもらいたい。
今回は一人芝居として、最高峰まで登った高山広を再認識した公演であった。いやぁ〜ホント素晴しい。ブラボーです。
“NON GATE THEATRE”自分が観た公演ベスト
1.高山広のおキモチ大図鑑“一人で一杯” 2.高山広のおキモチ大図鑑“じゃんわり” 3.高山広のおキモチ大図鑑“遠き休暇 WINTER VACATION” 4.高山広のおキモチ大図鑑・別巻“一人が一杯”
作・演出 いろいろ申し訳ありません。まだ書けていません。
作・演出 西島明
振付:永谷亜紀酒場で住み込みのパートタイマーで働く事となった妻(加藤直美)と不眠症の夫(西島明)を中心に、同じ酒場で働く店長(山崎和如)、パート仲間の玉置(市川菜穂)、積木(松浦和香子)、仮面舞踏会で出会った足長おじさんを探している荻まどか(渡辺道子)、神話狂いのQちゃん(阿部光代)、怪しい神の使い(猿飛佐助)ら、ちょっとノイローゼぎみな人々が繰り広げるへんてこな世界。
「考えてもだめなら 本を読んでもだめなら 医者もだめなら踊ってしまえ(チラシより引用)」セリフにあまり興味がわかない西島明が、セリフでこれはこういうことだと決めつけずに、いろいろな角度から様々な解釈ができるようにとダンスによる表現に重点を置いた作品。って言ってもいつものベタポワールドには変わりなかった。今までの舞台もセリフで説明する事なく、動作や間で表現する事が多いので、それがダンスになろうが違和感はない。『オトメチックルネッサンス』に近い作品ではないだろうか。
話は変わるが、今までは気にしつつも流してしまっていたのだが、ベタポの舞台には食べ物がよく出てくる。それも本物。今回もいきなり鶏のエサであるパンのばら撒きである。そして、あかぎれに付ける生味噌。その上モロキュウにする為のキュウリなどなど。中盤には夫の妄想の世界で、パン男が切り分けたパンにジャムやバターを塗って客に振舞ったりする。自分も最前列にいたため阿部光代からパンをもらう。うれしい。でも、その後、不眠症の夫に「かわいそうな人にパンをあげる夢を見ていた」とネタにされる。それもよし。このようによく食べ物が登場する。ベタポと食べ物の関連性だけで論文が書けそうだが、自分のはその才はないので誰か書いてください。
作品内容から離れるが、ベタポの舞台を観るたびに役者が良くなっているのを感じる。好きなので一番にあげるが、加藤直美の独特な雰囲気はも〜〜最高である。今回の生活に必要のない奇行三昧な妻もぐっと来る愛らしさである。ちょっとエッチで、精神的に弱そうな役を演じさせたら右に出る者はいない。今回も惚れ惚れ見てしまいドキドキもの。舞台が近かったので余計に心臓バクバク。加藤直美以外にも「マグロは10年後にはいなくなる」と苦悩の表情を浮かべながら舞台を横切る市川菜穂もいい顔である。松浦和香子のかわいらしさは磨きがかかってきたし、阿部光代の美しさにも惚れ惚れ、とあげれば切りがない。男優もいい味を出していて、山崎和如の石鹸の匂いが漂ってきそうなすがすがしさと、野性味たっぷりの猿飛佐助。おっといけない渡辺道子の存在も欠かせない。本当にいいメンバーが揃っていると改めて実感。そんな完璧とも言えるメンバーなので、今回舞台に上がったENBUゼミ生が邪魔でしょうがなかった。ダンスのアンサンブルとして、集団の動きに厚みを出していたのは認めるが、演じさせた事により折角のベタポの空気を一瞬にして駄目にしてしまっていた。西島明の講師としての立場はわかるが、ベタポの空気をもう少し大切にして欲しかった。
“ベターポーヅ”自分が観た公演ベスト
1.オトメチック ルネッサンス 2.別冊オトメチック ルネッサンス 接吻は愛の速記術 3.カエルとムームー 4.ノイローゼ・ダンシング 5.特性のない男の編物 6.おやつの季節 7.GREAT ZEBRA IN THE DARK'98 8.ボインについて、私が知っている二、三の事柄