99年5月はこの7公演

 


ベターポーヅ「おやつの季節」

ザ・スズナリ 4/28〜5/2
5/1(土)マチネ観劇。座席 自由(3列目中央)

作・演出 西島明

 舞台は海岸近くの砂丘。そこは温泉が涌き出る事から、世界の富豪たちの保養地となっていた。その地を訪れた女優のアグネス(市川菜穂)と付き人のキエ(渡辺道子)、マネージャーのジュジュ(山崎和如)を中心にアカスリの姉妹(阿部光代・松浦和香子)や砂丘で砂粒より小さい豚を探す豚商人夫婦(猿飛佐助・加藤直美)らが絡み、不思議な世界が展開される。

 自分の生活している世界とはまったく違う、支離滅裂と言ってもいいような不思議な別世界。ところどころで大笑いするものの、いつものようにニタニタしっぱなしのベタポワールドであった。無意味にキスしまくるところとか、本筋とはあまり関係のないところが、むちゃツボにはまっておかしくてたまらない。で、相変わらず加藤直美が色っぽい。ベターポーヅの女優は美人ばかりだが、色気に関しては加藤直美の右に出る人はいない。まぁ好みの問題かもしれないが、私はあのHっぽさにクラクラ。余談になるが、ベターポーヅからの手紙“ベタポカード”の中で加藤直美が書いている“デパガ日記”も毎回楽しみである。

 『オトメチックルネッサンス』に続き永谷亜紀が振り付けをしているのだが、今回の踊りはイマイチであった。そのへんちくりんな動きが逆に芝居をつまらなくしていた。踊りだけが独立してしまって物語の流れが跡絶えてしまったのも要因だと思うが、もっと自然におかしさがにじみ出てくる踊りが欲しかった。前回の“八方美人の踊り”があまりにも面白かったから難しいとは思うが・・・まぁ水着で踊る姿が嬉しかったので満足なんだけど、ってオヤジ入ってます。


“ベターポーヅ”自分が観た公演ベスト
1.オトメチック ルネッサンス
2.カエルとムームー
3.おやつの季節
4.GREAT ZEBRA IN THE DARK'98
5.ボインについて、私が知っている二、三の事柄

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ロリータ男爵
「信長の素〜端午の節句スペシャル」

こまばアゴラ劇場 4/28〜5/3
5/1(土)ソワレ観劇。座席 自由(2列目中央:招待)

作・演出 田辺茂範

 みつばちの女王は子孫を残す為に悩んでいた。女性にとって魅力的な男性は、強く、知的で、ちょっぴりワル。しかし、最近ではその理想的な男性は皆無に等しい。そこで女王が選んだのが織田信長(大佐藤崇)。信長の子供を産むため、信長の遺伝子“信長の素”を求めて働きばち(斉藤マリ)は秀吉となり戦国の世にタイムスリップする。秀吉の使命は、信長が甘党かどうか調べ、甘党でない場合は信長を甘党、甘酸っぱ党にする事も含まれていた・・・。そんな話をロリータ風に味付けした戦国ミュージカル。

 パル多摩フェスで一日だけ行われた(見る事はできなかったが・・・)『信長の素〜桃の節句スペシャル』では、エキストラを30数人も使うもほとんど役にたっていない上、段取りもあやふや、ミュージカルシーンでも歌は歌っていないとかの話を聞き、無意味に壮大でへなちょこなミュージカルがまた見られるのかぁ、と期待で胸を膨らませ、ウキウキしながら劇場に足を運んだ。
 しかし、『桃の節句スペシャル』から『端午の節句スペシャル』まで間があきすぎ、練習し過ぎたのだろうか、あの確信犯的なへなちょこさが消え、うまくなっていた。しかしあくまでもロリ男なので、やはりだらしなくヘタッピ。しかし、ロリ男的には確実にうまくなっていたわけで、それが不満でもあった。などと書くと、私のいいかげんさが露呈してしまい、恥ずかしい限りでもある。ヘタな時は「もっと練習したら」と言っていたクセに、今回は「歌はもっとへなちょこがいい」なんて事を口にしている。まったくもって人間失格である。でも、そんな意見にも田辺氏は笑って「加減が難しいですよねぇ」と言ってくれたりする。うーんいい人だ。

 モグタンにより過去にタイムスリップしたり、記憶喪失の娘サラ(中西恵子)がミンキー・モモのコスプレで登場したり、女王の尻からは延々と白いものが流れていたりする、ちょっとした小ネタがすばらしく心に残る。ラストの本能寺の変では、信長と光秀(松永雄太)が甘いもの対決とか言ってお菓子を食べまくるのもバカらしくて最高。それに加え、役者がお菓子を口にほおばりすぎて台詞がくぐもって聞こえない等もへなちょこさ爆発である。この劇団にはオリジナルの笑いの世界があって、その波長に同調してしまったが最後虜になってしまう、って感じ。それが私であったりする。
 しかし、悪いところも確かにあって、暗転が多くテンポがとぎれてしまったのは失敗だったかなと思う。


“ロリータ男爵”自分が観た公演ベスト
1.恋は日直
2.信長の素〜端午の節句スペシャル
3.地底人救済
4.三つ子の百まで〜その100分の1

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大人計画「母を逃がす」

本多劇場 5/2〜5/16
5/8(土)観劇。座席 M-22

作・演出 松尾スズキ

 葉蔵(宮藤官九郎)と万蔵(荒川上手)は、わけあって(人殺しなんだけど)シカノバル(だと思ったが記憶違いかもしれない)から、熊切雄介(阿部サダヲ)が治めるコミューンへと逃げ込んできた。舞台はこのクマギリ第三農楽天八番宿舎前。そこは、スネに傷を持つ人々が集まった吹きだまりの様な場所であった。この自給自足のコミューンという閉鎖された世界で自分の主義を貫くため、自らの幻想に巻き込まれた行く若き後継者・雄介。雄介は、コミューンの創設者である父の為に不幸な人生を送った(と思い込んでいるのは雄介だけだが)母・ハル子(山本密)をここから逃がさねばならない、という妄想を次第に強めていく。そんな雄介を中心に、不幸に追い込まれ右往左往する人々を描く。

 インタビュー記事によると、誰も何にも得をしないけど、エネルギーだけが空回りする“極限の徒労”を描いたとか。それをコミューンという閉じられた空間で描くあたり、松尾スズキらしい。コミューンの中で右往左往する人々の情けなさ・・・じめっとしたものが首にからみつき振りほどけないって感じの、ぬるい生き地獄を描かせたら、松尾スズキはやはり日本一である。

 それはそれとして、今回の話は、自分の生きている世界にも多かれ少なかれ当てはまるんじゃないか、とかも思ったりした。今の世の中、何かに属さないと生きていけない、というか大抵の人は属する事で安堵感を抱いているのではないか。極端な例だが、一匹狼だと言ってる奴でも、結婚し家族という集合体に属してみたりする。そして“属する”という安堵感と引き替えにエネルギーを浪費しまっくているのが現実ではないか。そんな事をずばり見せられたみたいで嫌な気分も倍増した。会社で楽しくもないのにニコニコして、上司の言われるがままに過ごす、ってのも会社という組織に属するが故の行動かな。
 物語は、一見平和そうに見える世界に外部の人間が介入する事によって崩壊し始めるのだが、その一人として登場するのが、保険会社の営業マン・一本(松尾スズキ)。多額の保険が掛けられた雄介が死なないようにと定期的に監視にやってきては、危険なものは排除する。その自己中心的とも見える行動も、保険会社というものに属しているからであり、ここでも“属する”ことが重く圧し掛かる。
 全体的に見ると、今回の作品はなんかモヤモヤしたものが最後までスッキリしない、とても大人計画らしい作品であったとも思う。そんなわけで(どんなわけだ)感想もまとまりがなくモヤモヤしたまま終了。


“大人計画”自分が観た公演ベスト
1.Heaven's Sign
2.冬の皮
3.ファンキー
4.ふくすけ(日本総合悲劇協会)
5.愛の罰(初演)
6.カウントダウン
7.ちょん切りたい
8.ずぶぬれの女(ウーマン・リブ)
9.なついたるねん!(松尾スズキプレゼンツ)
10.母を逃がす
11.ドライブイン・カリフォルニア(日本総合悲劇協会)
12.生きてるし死んでるし
13.ニッキー・イズ・セックスハンター(ウーマン・リブ)
14.インスタントジャパニーズ
15.紅い給食(大人計画・俺隊)
16.イツワ夫人(部分公演)
17.猿ヲ放ツ
18.愛の罰(再演)
19.SEX KINGDOM
20.ゲームの達人
21.熊沢パンキース(部分公演)

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ゴキブリコンビナート「粘膜ひくひくゲルディスコ」

フジタヴァンテ 5/21〜5/23
5/22(土)マチネ観劇。座席 自由(2列目:円形なのでどこが中央か不明)

作・Dr.エクアドル
演出・竹田オメス吉祥寺

 よくわからない内容なので(内容がどうとか言う芝居でもなかったし)、チラシに書いてあったあらすじを無断転記させて頂きます。まぁ読んでもわけがわからなかも・・・。

【あらすじ】うららかな五月の日差しの中、僕の耳元で君はそっとささやいたね。「善人救われず、ましてや悪人をや。」この期に及んで君の願いは厭離穢土。不運に次ぐ不運の人生を生きてきて、邪欲と獣性の二元一次方程式の解法を未だに見つけられずにいるんだね。盲導犬ならぬ盲動人としての屈辱の人生にピリオドが打ちたいですか。誰にも優しくされない事に我慢がならないですか。そんな君に僕は歌うよ「呪い呪われて生きるのさ」。生まれてこなかった方がよかった者達のパラダイスはどこにある。誰の役にも立てないポンコツ人間達のパラダイスはどこにある。全てはビッグ・マザーの胎内に。今まで見た事もない、感じた事もないすてきなディスコ。それは粘液のディスコ。そして、例によって阿鼻叫喚ミュージカル。回れ、ミラーボール。踊れ、家畜達。歌え、ママさんコーラス。そのまま寝てろ、寝たきり老人。直腸ヒクヒク、食道ヒクヒク、関節ガクガク、心臓ドキドキ、松果体ズキズキ。だが、いつしか恐ろしい陰謀に巻き込まれる事に……。

 こんな内容で、ミュージカル。チラシには、体液たれ流しミュージカルと書いてあったが、その通りと言ってもいい。まぁ、簡単に要約すると、全盲の山田真矢くん(陸流人)の家に飼われている犬人間の秋田洋一郎(高山タイヂ山)は、離れ離れになってる双子の洋次郎(Dr.エクアドル)を探しにビッグマザーの胎内へ。そこは生まれてこない方がよかった人間のパラダイス、ゲルディスコだった・・・というもの。

 客入れから芝居が始まっていて、生バイオリンの悲しい調べの中、犬小屋のそばで悲しそうな遠吠えを上げてる犬人間が舞台にいる。股間を隠すのはコンビニでもらったようなビニール袋。そんな悲しさに満ちあふれた状況の中で幕があがる。
 正直言って、すごいドキドキして見入ってしまった。ただ、芝居として評価していいのだろうか、という疑問が心を悩ます。自分が付けたランク的には悪い方ではないと思うが、この芝居より下にある作品がダメだとは決して言い難い。久々に身体が拒否するくらいの衝撃を受けてしまった結果のランクである。汚い上に、狂暴。物は飛んでくる。開場時に「汚れますからどうぞ」と新聞紙を渡され、“椅子が汚れているわけでもないのに”と疑問のまま持っていたら、前の方の席の人はおもむろに新聞紙を開いて、体を覆っていた。その場面ではドックフードが舞台上だけでは物足りないのか、客席にまで飛んでくる、飛んでくる。ふーむ、飛んでくる物を防ぐ為の新聞紙であったのか、と感心する次第。で、舞台上ではドックフードばかりでなく、牛乳は撒き散らすし、山田家のお手伝い(ボボジョ貴族)はジャムを顔に塗たくっているし、犬人間の洋一郎なんかは、殴られて身体じゅうみみず腫れになっているし、舞台の上から頭から落ちて鈍い音たててる役者はいるしで、演じている役者の異常さも並みじゃない。終演後、私の後に座った人がゴキコン常連さんだったらしく、「今回はいつもほど凄くなかった」などと言ってたのを聞き、複雑な心境におちいり“いつもはどんなじゃー”と心の中で絶叫した。

 しかし、こんな芝居だが、何故か心にひっかかるものがあるのには困り果ててしまう。今だに「ゲ〜ルディスコ〜」の曲が耳に残る。こうしてゴキコン中毒になっていくのだろうか・・・。そんな中毒になってしまったのが、お天気お姉さんの乾貴美子。笑っていいともに出演し、ゴキコンの話に終始してしまったとか。平日なので見れなかったのが残念だが、一部で話題騒然になっていた。

 そう言えばゴキコンはチラシも凄く、以前挟み込みのチラシに今回の公演のチラシが入っていた時があったのだが、隣に座った人がチラシの束の中からおもむろに一枚引き抜き座席の下に捨てていた。そんなチラシではある。某劇団では、わざわざ挟み込みのチラシの束から、ゴキコンだけを引き抜いて客に渡したという話も聞く。こんなチラシを見て、おもしろそうだから見てみようと思う人が果たしているのだろうか、というチラシなのでそのくらいの虐待は当たり前か。でも、今後も汚いチラシのままなんだろうなぁ。

 人気投票結果では、スタッフ賞、女優賞、団体賞の3部門で受賞だとか。女優賞はジャムが強烈だったボボジョ貴族が受賞したが、私としてはゲルディスコの住人の赤ちゃん役の安藤ヒヤシンス子にあげたかった。顔は見えなかったが、あの「バブー」って声が妙にかわいくて、グロテスクな赤ちゃんの容姿とは対象的だったのが印象深い。踊りも良かったし。

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げんこつ団「ドミノバキューム」

タイニイ・アリス 5/20〜5/23
5/22(土)ソワレ観劇。座席 自由(4列目中央/招待)

作・演出 吉田衣里
演出助手 植木早苗

 今回も素晴しい!と絶賛したい。その悪意に満ちた独特の「笑い」は、まさに“げんこつワールド”。一度はまったら抜ける事のできない蟻地獄のような世界である。今回は、家族でテレビのニュースを見ているところから幕があくが、毎回登場するこの映像を使ったニュースが、またいい。今回は「・・・でした。」と報道するところを「・・・です。」と報道する事でのおかしさと恐怖の紙一重を味わう。過去形にせず、断定して報道することによって、これから家族の身に起こる悲劇をニュースで知る恐怖。笑えます。目の悪い人の為のニュース番組では、スタッフ全てが目隠しをしているという、倫理上危ないんじゃないかーというものも平気で登場させる。“イメクラ・マリちゃんのお部屋”では、部屋の中にはマリちゃんだけでなく、母親と父親もいたりする。しかし、そんな疑似家族にはまっていく悲しい青年を笑い飛ばす。他にも公園で医療的治療をする医者や、念写やテレパシーを送る東京念力と言うわけのわからない会社の話、口がきけない銀行強盗、などなど盛りだくさん。要所々々に挿入される“個人CM”のおかしさも絶品。そして、一番心にしみた総理と大臣の“政府”の話はちょっと切なくて泣けてくる。そんな感じでちりばめられた登場人物が徐々に絡み合いラストへと向かっていく。

 げんこつ団の笑いを擬音を使って表現すると「ニヤッ」という笑いが丁度良い。ゲラゲラ笑うのもいいが、こんな「ニヤッ」と笑うのが心地よく感じる今日この頃でもある。1999年6月からげんこつ団のメンバーは、吉田衣里、植木早苗の2人から、春原久子、古庄由果理、笠愛を加えた5人に正式に変更になったらしい。この勢いで、どこまでも突っ走ってもらいたいものだ。


“げんこつ団”自分が観た公演ベスト
1.げんこつ対げんこつ
2.ドミノバキューム
3.キリマンジャロタンゴ
4.トランポリン

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HIGHLEG JESUS「FUCK YOU VERY MUCH」

武蔵野芸能劇場 5/27〜6/1
5/29(土)マチネ観劇。座席自由(A-7)

作・演出 河原雅彦

 とりあえず演目を列挙。

1.タブー、超越〜全ては土に還える
2.FILME〜Sabbath jesus Sabbath
3.ミュージック・フェラー
4.ドロンパ、日本領土上陸。
5.ゆきこ伝説<前編>
6.小林愛の愛してNIGHT
7.政岡泰志のやけにツイてる一日
8.キシジュンの作文コーナー
9.ゆきこ伝説<後編>〜ENDING

 武蔵野芸能劇場という公共のホールで公演を打つこと自体、自分のクビを締めている感じで素晴しいのだが、聞くところによると、劇場の人に本番でどういうことをやるかバレないように、ゲネプロ用に作った普通の芝居をわざわざ練習していたとか。そんな無粋な裏切り行為も素晴しい。そんな無謀な公演なので、初日とそれ以降では、かなりネタが変わってる危険性があるのではないかという噂が立ったが、劇場が遠い為、私は断念してしまった。しかし、その日は強風でビニールの紐が電線にからまったとかで中央線は2時間も止まっていたらしい。行った人からそれを聞き、行かなくてよかったーと思い、肝心のネタについては聞き逃してしまった。しかし、本物のうんこはそのまま続行していたので劇場からの圧力はかからなかったのかもしれない。けど、二度とこの劇場を貸してはくれないだろうとも思う。

 そう、今回はオープニングで“うんこ”なのである。芸能劇場と名前がある劇場の客席にうんこを祭る傍若無人ぶり。ニセモノのように供えられたブツは本物。会場のトイレにもご丁寧に流さずに本物のうんこ。さすがに私はトイレまでは見に行かなかったけど・・・。ちんこではあきたらず、うんこ、うんこ、うんこ。いやー小学生並の行為には愛情たっぷり「ばか」と言いたいが、それを指に付けて場内を恐怖のどん底に叩き込む最初のネタは凄すぎ。こんな恐怖感は他では味わえません。って言うかやりません。題名の“FUCK YOU ”を訳せば“クソ食らえ”。うーんなかなかいいオープニングではないかい。

 おげれつなネーミングの歌手がおげれつな歌を唄う『ミュージック・フェラー』では、全裸で一世風靡セピアならぬ一世風靡ヴァギナが♪男というものは 脱ぐからこそに美しい♪と、歌い踊る『全裸、道の上より』に大笑いし、『小林愛の愛してNIGHT』での、イケテナイ方の小林愛(TEAM発砲・B・ZIN)の映像出演として登場した千葉雅子(猫のホテル)ってのもおかしさ倍増。大作青春ドラマ『ゆきこ伝説』もなかなか良かったが、一番おもしろかったのが『政岡泰志のやけにツイてる一日』。政岡泰志ならではのネタの数々に大笑いしてしまった。
 HIGHLEG JESUS=全裸っていうイメージが自分の中で固定してしまっていて、その全裸にも“慣れ”が生じて、それだけでは楽しめないという気持ちが徐々に高まっていたが、そんな気持ちをぶち壊すが如く、幕の内弁当的なんでもありの今回の公演には大満足であった。今年の本公演はこれ一本とは寂しい限りである。


“HIGHLEG JESUS”自分が観た公演ベスト
1.男がいて、そして女がいて…
2.隷族08
3.FUCK YOU VERY MUCH
4.モンスターロックフェスティバルin亀有
5.桃色慢遊
6.お茶の魔
7.若くして死ぬしかない

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唐組「眠り草」

雑司ヶ谷・鬼子母神 5/21〜5/30
5/29(土)ソワレ観劇。座席 自由(4列目中央)

作・演出 唐十郎

 98年2月、東京国立市のホテルで、自動車用品会社社長ら3人が一本のロープを分け合って首吊り心中をした事件を題材に唐十郎が書き下ろした新作。
 自殺直前、3人は酒を酌み交し、牛丼で最後の晩餐をとった。舞台はその牛丼を出前した菊屋牛丼屋前。この牛丼屋にも、不況による合理化の波が押し寄せていた。ある日、廃車場からやってきたという謎の女・丘(飯塚澄子)が店に現われる。彼女は事件直前に、叔父が今は亡きアルゴン社の社長・加藤のために振り出した1枚の手形の行方を追っていた。菊屋で丘は、出前の牛丼にこだわり続ける男・眼さん(唐十郎)に出会う。彼こそ、事件があったその日に空の牛丼の器を下げに行った人物であった。そして、その丼の中には、彼女の探す手形の秘密が隠されていた。

 物語の核心である約束手形の事が皆目解らない自分には、物語の半分も理解できなかったかもしれない。手形の裏書きとか言われてもチンプンカンプンなのである。勉強しておくんだったと後悔しきり。それでも楽しんでしまう唐組の芝居には、不思議な魅力がある。
 ただ、今回は飯塚澄子にあまり魅力を感じなかったのが残念でならない。ラストで劇場の壁が取り払われ、丘を演じる飯塚澄子がどこまでもどこまでも去っていく姿は悲しくて良かったのだが、魅力を感じたのはそこだけなのである。自分が感じる飯塚の魅力は、明るさというか前向きに生きる姿勢みたいな中に潜む女の色香であったりもする。『秘密の花園』でみせた、性悪な感じの中にみせるかわいらしさにも惚れ惚れしてしまうし、内に秘めた(と言っても燃え滾る感情が伝わってくる)女心にも惚れてしまうのだが・・・。いずれにしても攻撃的な感情に色香を感じ、惚れてしまっている。それが今回の丘には感じられず、惚れることができなかった。唐組の芝居では、劇中の飯塚澄子に惚れる事も楽しみの一つなので、それがなかった今回は満足度は低い。
 何回か唐組の芝居を観てみると、芝居にあるパターンがある事に気が付くのだが、このパターンを“おもしろさ”として受け入れてしまう様になったのは、不思議でならない。それも又、魅力のうちなのだろうか。普通ならそのパターン化された芝居の流れに不満を感じるところなのに、唐組では逆に芝居に没頭できたりする。本当に不思議だ。唐十郎の登場シーンも毎回の楽しみの一つであるが、今回はエステサロンの看板から登場。大いに笑わされた。


“唐組”自分が観た公演ベスト
1.ジャガーの眼
2.改訂の巻 秘密の花園
3.汚れつちまつた悲しみに・・・
4.眠り草
 

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