選挙１０連続惨敗と共産党自然死の方向性
選挙連続大敗北詭弁総括の理由＝トップ自己保身政党
大転換・解党・原則一部放棄宣言か、自然死かの選択
(宮地作成)
〔目次〕
１、総選挙・参院選・都議選１０連続惨敗結果が示すこと (表１)
３、選挙１０連続大敗北でも毎回の詭弁総括理由＝トップ自己保身政党 (表２～５)
４、じり貧的瓦解テンポアップ政党・犯罪的組織原則政党という規定の正否
５、大転換・解党・原則一部放棄宣言・分裂の可能性存否と、自然死かの方向性 (表６、７)
６、党員、支部長に残された選択肢－下部から個々党内離脱と支部解党宣言 (表８～１０)
７、共産党自然死の前後に来る展望－いくつかの可能性存否 (表１１、１２)
〔関連ファイル〕 健一MENUに戻る
『じり貧的瓦解４段階経過と第５段階への転落結果』１９８０年～２００９年総選挙結果
『共産党の参院選結果８回分データ分析』議席数・得票数・得票率全面惨敗の真相
１、総選挙・参院選・都議選１０連続惨敗結果が示すこと
東京都議選結果は、国政選挙に連動し、首都の有権者投票行動として、国政選挙並みの位置づけをする必要が生まれている。都議選を合わせた日本共産党の選挙１０連続惨敗データは何を示すのか。３つの選挙種類が異なるが、ここでは時系列データにした。種類ごとのデータは、それぞれの別ファイルにある。(表１)の増減は同種選挙の比較である。
(表１) 衆院選・参院選・都議選１０連続惨敗データ
|
年 |
種類 |
議席 |
得票数・万 |
得票率・％ |
備考 |
|||
|
増減 |
増減 |
増減 |
得票数増の真相 |
|||||
|
00年 |
衆院選 |
26→20 |
－6 |
663 |
－47 |
11.23 |
－1.32 |
|
|
01年 |
都議選 |
26→15 |
－11 |
74.8 |
－5.5 |
15.63 |
－5.7 |
|
|
01年 |
参院選 |
15→5 |
－10 |
432.9 |
－386.6 |
7.91 |
－6.69 |
|
|
03年 |
衆院選 |
20→9 |
－11 |
459 |
－204 |
7.76 |
－3.47 |
|
|
04年 |
参院選 |
5→4 |
－1 |
436.3 |
＋3.4 |
7.80 |
－0.11 |
実質数万票減 |
|
05年 |
都議選 |
15→13 |
－2 |
68.0 |
－6.7 |
15.57 |
－0.06 |
|
|
05年 |
衆院選 |
9→9 |
±0 |
492 |
＋33 |
7.25 |
－0.51 |
実質30.1万票減 |
|
07年 |
参院選 |
5→3 |
－2 |
440.8 |
＋4.5 |
7.48 |
－0.32 |
実質17.7万票減 |
|
09年 |
都議選 |
13→8 |
－5 |
70.7 |
＋2.7 |
12.56 |
－3.01 |
実質13.2万票減 |
|
09年 |
衆院選 |
9→9 |
±0 |
494.4 |
＋2.4 |
7.03 |
－0.22 |
実質15.5万票減 |
|
10年 |
参院選 |
4→(3？) |
(－1) |
|||||
|
13以前 |
衆院選 |
9→？ |
(－？) |
(定数削減？) |
||||
|
13年 |
参院選 |
3→(2？) |
(－1) |
(定数削減？) |
||||
得票数・投票率は比例代表。参院選半数改選議席→当選議席
このデータを見ると、２０００年以降、東京都議選だけでなく、衆院選、参院選においても、日本共産党は、衆院選２回の±０議席を除いて、議席と、得票率をすべて減らしている。総選挙・参院選・都議選の得票数増加５回は、投票率アップによるもので、実質的には、(表)備考欄のように５回とも得票数を減らしている。実質的得票数減少５回データを合わせれば、得票数も１０回連続惨敗をした。１０回目惨敗の０９年総選挙結果を詳しく検証する。
〔1、０９年総選挙比例代表〕、０９年総選挙において、０５年４９１万９１８７票→０９年４９４万３８８６票で、２万４６９９票増やした。一方、比例代表投票率は、６７．４６％→６９．２７％へと、１．８１％アップした。投票総数は、０５年６７８１１０６９票→０９年７０３７０２５５票へと、２５５万９１８６票増加した。
投票率１．８１％アップ、２５５万票増加に比例すれば、共産党はとれだけの得票数を増やしているべきかというテーマが浮上する。この計算はややこしいが、志位和夫が毎回使う詭弁・強弁の悪質さを証明する上では必要となる。党費納入２５万党員や読者たちは、彼の詭弁・ペテンに、いつもころりと騙され続けているので、この推計は重要となる。
２５５万９１８６票増加×共産党得票率７．０３％≒１７万９９１０票を増やしているはずである。この得票数差は、実質的な得票数減少を意味する。１７万９９１０票増えたはず－２万４６９９票増やした＝実質的に１５万５２１１票を減らした敗北だった。それは、得票率０５年７．２５％→０９年７．０３％＝０．２２％ダウンデータと一致している。得票率ダウンは、実質的な得票数１５．５万票減の惨敗結果を証明している。９６年と比べれば、１３年間で、７１０－４９４＝２１６万票・３０．４％減少という得票数連続大敗北過程にある。
〔２、０９年総選挙小選挙区〕、共産党は、小選挙区結果にたいし、沈黙・隠蔽している。いくら「比例を軸」方針としても、その無総括はおかしい。よほど都合の悪い＝党員・読者に知られたくない大惨敗結果になったのか。
まず、得票率１０％以下小選挙区のテーマがある。総選挙小選挙区の得票率１０％以上は、供託金３００万円が没収されない。１０％以上小選挙区数は、９６年１９０→００年１６２→０３年６５→０５年５２→０９年２８と激減してきた。得票率１０％以上に到達する小選挙区がいかに激減してきたのかというデータによって、それが、日本共産党のじり貧的瓦解テンポを示すバロメーターの一つになっている。
ＭＦ生作成表『総選挙小選挙区－共産党の成績』得票率１０％以上５２→２８に激減
小選挙区得票数結果もある。全体は立候補選挙区激減で比較できない。しかし、０５年立候補しなかった広島６区を除く１５１選挙区どうしなら比較できる。ＭＦ生さんがその詳細な表を作ってくれた。私のＨＰに載せた(表)によれば、１５１小選挙区間を比べると、得票数が２５万３８００票減り、０５年得票数より８％減少という大敗北結果になっていた。志位・市田・不破らが、この惨敗結果を隠し、沈黙した気持ちは哀れでもある。
これら選挙１０回分データは、日本共産党が３種類選挙において、１０連続惨敗したと規定できる。議席・得票数・得票率という選挙３基準の結果においても、私が規定する全面的なじり貧的瓦解段階に入っている。
２０１０年参院選の議席は、選挙結果データに基づく私のシミュレーションである。２０１０年参院選においても、議席が連続して減るとする予想をした。４→３議席への減少については、すでに、共同通信とアエラが同じ予想を出している。衆院選は、４年任期なので、２０１３年までに解散・総選挙があるが、比例代表定数１８０→１００削減問題がある。
『じり貧的瓦解４段階経過と第５段階への転落結果』１９８０年～２００９年総選挙結果
『共産党の参院選結果８回分データ分析』議席数・得票数・得票率全面惨敗の真相
２、日本共産党自然死という概念と方向性の具体化
〔小目次〕
４、ヨーロッパほぼ全域での共産党自然死結果、残存２党じり貧的瓦解突入
１、加藤哲郎「日本の社会主義はいったん自然死」という概念
加藤哲郎は、ＨＰファイル『日本の社会主義運動の現在』末尾において、次のように書いている。その一部だけ引用する。
今日では、ローカルなコミュニティでAssociationを構想し、そのネットワーク型共生のなかで多国籍企業や国家への抵抗を考える方が、はるかに社会主義的である。いいかえれば、政治的民主主義と市場経済を前提とした、「国家中心主義」に対する「社会中心主義」ないし「市民社会主義」としての社会主義である。
「現存した社会主義」の歴史的教訓の一つは、思想の自由・文化的多元主義が、社会主義にとって不可欠だということであった。それは、社会主義の定義そのものにも適用されねばならない。「何が社会主義であるか」をも、後世の歴史の審判に委ねる、思想的寛容が必要である。
その意味で、日本の社会主義はいったん自然死し、新たな名前で再生することが、課題となっている。
加藤哲郎『日本の社会主義運動の現在』末尾
彼の末尾は、日本の社会主義の自然死と言っている。しかし、その全文から見て、それが日本共産党を含む社会主義の自然死を指していることは明白である。
私は、この自然死という概念に同意し、今までも、別ファイルで使ってきた。今回０９年総選挙における日本共産党の選挙１０連続惨敗結果から、いよいよ、日本共産党自然死という概念をその方向性を合わせ具体化する必要があると感じた。それは、(１)日本共産党が自然死するレベル・規模の規定、(２)日本共産党が自然死に至る時期・期間の推定、(３)日本共産党自然死前後に来る政治展望である。それらを簡潔に書く。ただ、(３)は、このファイル最後〔目次７〕で考える。
２、日本共産党が自然死するレベル・規模の規定
自然死とは、(１)日本共産党のじり貧的瓦解進行→党内部崩壊テンポアップ、および、(２)有権者が日本共産党から赤旗購読・投票行動で大逃散していくテンポアップが複合する到達点である。志位・市田・不破らは、イタリア共産党のように、自ら社会民主主義政党への大転換、その宣言をしないままで、いつまでも居座り続ける。また、イギリス共産党のように、解党宣言をすることもない。自己保身の居座りが続こうとも、「レーニン神話」「日本共産党神話」信奉者で、「党中央はいつも正しい」とする共産党員・支部・読者の数は、じり貧的に減りつつも全滅することはない。それらのどの数値で、自然死だと規定することは難しい。
自然死のバロメーターは、国政選挙結果と国会議員数となる。国政に何の関与もできない、影響も与えられない国会内議席数に転落することである。具体的には、衆議院３議席以下政党、参議院も３議席以下政党に転落したレベル・規模になれば、地方議員が残存していようとも、国政関与・影響政党としての自然死となる。
さらには、公職選挙法に基づく政党規定がある。それは、衆参合計で５議席以上が法律上の政党と認定する。選挙・その他政党活動において、法律上の様々な支援を受ける資格を持つ。もし、日本共産党の衆参議席合計が４議席以下に激減すれば、公選法上の政党資格を失う。そうなれば、日本共産党は、法律上の政党でなくなり、単なる「政治団体」の一つとなる。その場合、(１)共産党候補者は、小選挙区と比例代表との重複立候補ができなくなる。さらに、(２)小選挙区候補者の政見放送は認められない。
参議院比例代表定数４８の削減の動きも出ている。来年２０１０年７月の参院選後に、その法案が具体化される可能性がある。衆参比例代表議席が、ともに削減されれば、選挙協力拒絶政党であり、比例代表でしか当選できない日本共産党の国会議席が４以下になる確率が高くなる。それは、日本国法律上の明白な自然死と言える。
現在の日本共産党とは、(１)戦前の非合法時代の暴力革命路線共産党→(２)戦後の武装闘争路線時期の半非合法共産党と異なり、→(３)衆議院４８０議席の過半数２４１議席を日本共産党が占め、共産党中心の民主連合政府を樹立しようという壮大な展望の不破綱領を掲げる議会主義路線・合法政党である。その社会主義日本という将来展望綱領を持つ政党が、衆議院・参議院とも３議席以下に転落すれば、自然死状態と規定できる。戦前暴力革命綱領→戦後武装闘争綱領時期なら、０～1、２議席もあった。それと違い、議会主義合法政党になって、選挙１０連続惨敗政党となり、さらには衆参とも３議席以下政党、または、合計４議席以下政党なれば、じり貧的瓦解→自然死政党と規定するしかない。
３、日本共産党が自然死に至る時期・期間の推定
衆参議員定数削減の方向は、全国における地方自治体議員定数大幅削減の現実動向と合わせれば、時代の流れである。かつ、有権者からの行政経費削減要求とも合致している。私も、全体の定数削減方向には賛成だが、比例代表定数だけを削減することに反対である。しかし、衆議院３００小選挙区や参議院４７都道府県選挙区の定数削減は、各政党・議員の党利党略が強烈で、その妥協点さぐりも難しい。となると、まず、比例代表定数削減の方向が強まるのは、避けられない。
共産党は、衆院選１０年間・４回で、２６→２０→９→９→9議席となり、１７議席を連続で減らした。志位和夫は、都議選大敗北→総選挙連続惨敗の恐怖から、民主党政権容認に大転換した。民主党政権が成立したので、その政権公約・マニフェスト通り、比例代表議席はほぼ間違いなく、現在１８０→１００議席・５５％に削減される。朝日新聞シミュレーションは、９議席時点→４議席に激減とした。それが、０９年９議席時点で、定数削減になれば、それだけで４～３議席の大敗北になる。となると、２０１３年までの任期４年間以内、または、２０１７年までに２回行われる次期解散・総選挙で、日本共産党は衆議院における自然死を迎える。
ちなみに、志位和夫立候補の南関東ブロックは、定数２２×５５％→定数１２に削減される可能性がある。０５年総選挙の志位当選順位は１２位→０９年総選挙順位も１２位当選だった。となると、４年間以内次期総選挙において、もし、削減された定数１２の内、彼が、１１位以下に転落すれば、日本共産党委員長は落選し、自然死テンポに拍車をかける。もちろん、立候補を南関東→近畿ブロックに代えるという、自己保身トップ命令によるなりふり構わない生き残り手口はある。
参院選も、７年間・３回で、当選１５→５→４→３議席となり、連続で１２議席を減らした。３年ごとの半数改選なので、現在は合計７議席である。次期２０１０年改選４→私の予想(３に減る)→合計６議席に減る。０９年総選挙直後、共同通信とアエラが、０９年総選挙結果に基づいて、ともに、共産党は参議院合計６議席に減るとの予想を導き出した。
共同通信『２０１０年参院選予測－民主、連立組まずとも参院過半数』共産党当選３予想
この減るテンポなら、２０１３年、２０１６年参院選での当選は２議席ずつに減る。民主党政権成立により、参議院比例代表定数４８→衆議院並みの５５％に削減となれば、２０１６年参院選で、日本共産党は参議院においても自然死をする。１０年後２０１９年参院選では、合計４議席以下政党→「政党と認められない政治団体」に転落する可能性もある。
日本共産党が国政関与・影響政党としての自然死に至る時期・期間は、衆議院で４年～８年間以内、参議院で１０年以内、または７年以内と推定できる。ただし、民主党政権提出の比例代表定数削減法案の数値は、他党の思惑・駆け引き・妥協で変動する。また、自民党は、０９年総選挙マニフェストにおいて、次の次の総選挙までに、国会議員定数３０％を削減すると公約した。それらによっては、日本共産党が自然死に至る時期・期間も変動する。
４、ヨーロッパほぼ全域での共産党自然死結果、残存２党じり貧的瓦解突入
ヨーロッパの左翼知識人、ジャーナリスト、有権者たちのほとんどが、レーニン創設のソ連共産党、コミンテルン型の資本主義国共産党は、党内民主主義を抑圧する反民主主義政党だ、だったという認識に到達してきた。その根本的な背景として、レーニンが１９１７年１０月にしたことは、「革命」でなく、臨時政府権力とソヴィエト権力という二重権力双方にたいする「単独武装蜂起・単独権力奪取クーデター」であり、レーニン・トロツキーこそが「党独裁・党治国家、赤色テロル型国家を創り、大量殺人犯罪を命令・遂行した張本人だった」とする認識の広範な共有がある。
とりわけ、ヨーロッパの彼らは、１９２０～２１年に関する歴史認識を、ソルジェニーツィン著書やニコラ・ヴェルト著書『共産主義黒書』、ダンコース著書多数などによって激変させた。クーデターから３年半後、ロシア革命勢力である農民・労働者・水兵が、レーニン・トロツキーらクーデター政権の根本的に誤った路線・食糧独裁令・赤色テロルにたいし、総反乱を起こした。レーニンのクーデター政権→党独裁・党治国家、赤色テロル型国家は、総反乱に直面し、政権崩壊危機に陥った。
党独裁・党治国家の最高権力者レーニンは、崩壊からの生き残りを賭けて、(１)農民へのネップによる譲歩、その一方で(２)反乱した農民・労働者・水兵にたいする数十万人もの大量殺人弾圧をした。さらに、(３)レーニン主流分派・トロツキー「労働の軍事化」分派に反対・批判する党内の労働者反対分派・民主主義的中央集権分派にたいし、第１０回大会最終日で、大会議題にもなかった分派禁止規定を突如提起し、その夏までに反対２分派のほぼ全員＝党員の1／4を除名した。除名された元党員は、１９３６年前後スターリンにより全員が銃殺された。
このレーニンによる分派禁止規定決定とその除名執行、スターリンによる全員銃殺をもたらした結果など、レーニンがしたことは、２０世紀世界政党史上、最大の党内犯罪・根本的な誤りだった、とする認識の広範な共有がヨーロッパの左翼知識人、ジャーナリスト、有権者たちにできた。
その結果、崩壊した東欧・ソ連１０カ国のレーニン型前衛党を合わせ、ヨーロッパほぼ全域で共産党は自然死した。「共産党」名を名乗って、残存するフランス共産党、ポルトガル共産党も、国政選挙結果・党勢力データは、間違いなくじり貧的瓦解過程に突入している。ただ、日本共産党と違うのは、２党とも、レーニン型前衛党５原則の内、３つ、または１つを、レーニンの誤りだったと放棄宣言を党大会においてしていることである。
『フランス共産党、ポルトガル共産党のデータ』原則一部をレーニンの誤りと、放棄宣言
ヨーロッパと比べ、東方の島国において、日本共産党とは、民主的政党だと思い込んでいる左翼知識人、ジャーナリスト、有権者の残存度がきわめて高い。その規模や信奉レベルは異様なほどである。彼らは、国政選挙の度ごとに、共産党議席が増えることを望んでいる。当然、日本共産党の自然死展望など考えもしない。その原因として、東欧・ソ連１０カ国崩壊の経過・背景にたいする情報共有度・研究レベルの隔絶が考えられる。彼らは、１９９１年後も、「レーニン神話」の呪縛から解き放たれていない。「レーニンは正しい、正しかった」と思い込んだままでいる。
これ以下、長くなるが、〔目次３～７〕にかけ、資本主義世界において、最後に唯一残存するするレーニン型前衛党＝日本共産党が自然死に至る条件・必然性について、多面的視点から検証する。
３、選挙１０連続大敗北でも毎回の詭弁総括理由＝トップ自己保身政党
明白な事実は、志位・市田・不破ら常幹トップが、これら選挙連続惨敗結果に直面しても、(１)一度も、彼ら常幹トップの路線・選挙政策・選挙方針についての誤りを認めたことがなく、自己批判したこともないことである。(２)それだけでなく、詭弁を使って、敗北でなく、前進、善戦健闘だったとした。(３)一方で、後退を全面否定もできないときは、外部要因か、中間機関や支部党員の活動レベルに責任転嫁をした。それらによって、有権者・共産党員を騙してきた。その詭弁総括内容を、最近の惨敗選挙３つの(表)で確認する。
〔小目次〕
１、２００７年参院選３連続惨敗の詭弁総括＝責任転嫁 (表２、３)
２、２００９年東京都議選３連続惨敗の詭弁総括 (表４)
３、２００９年総選挙４連続惨敗の詭弁・強弁総括 (表５)
１、２００７年参院選３連続惨敗の詭弁総括＝責任転嫁
２００７年７月３０日常任幹部会の自己評価は、次だけである。日本共産党は、比例代表選挙で三議席を獲得しました。これは、一議席減の結果ですが、得票数では、前回および前々回の得票を上回る四百四十万票（７・４８％）という地歩を維持することができました。選挙区選挙では、議席を獲得することはできませんでしたが、東京、大阪、京都などで得票を増やしました。
２００７年９月９日５中総の志位報告を見る。選挙の結果は、比例代表での獲得議席は三議席、選挙区では議席を失い、改選五議席から三議席に後退しました。議席を後退させたことは残念であります。同時に、比例代表で、前回、前々回の参議院選挙の到達点を基本的に維持する四百四十万票（得票率７・５％）を獲得したことは、貴重であります。
共産党『５中総・志位報告』全文０７年９月９日
参院選結果に関して触れたデータは、たったのこれだけしかない。これら２つの結果公表には統計のからくり・欺瞞・隠蔽がある。そもそも、選挙結果総括といえば、議席・得票数・得票率の増減を、比例代表・選挙区ともすべて明記するのが常識である。それら６項目とともに、供託金没収を合わせれば、８項目の結果データを具体的に明記するのが、当然の選挙総括になる。都合が悪いデータを隠蔽する欺瞞手口は(表)で検証する。
(表２) 参院選結果８項目と５中総項目との比較
|
０７年結果 |
真相データ |
共産党５中総 |
||
|
結果 |
増減 |
|||
|
選挙区 |
議席 |
0 |
－1 |
議席を失った |
|
得票数 |
516.4 |
－35.6 |
(沈黙による隠蔽) |
|
|
得票率 |
8.70 |
－1.14 |
(沈黙による隠蔽) |
|
|
供託金没収 |
31人9300万円 |
(沈黙による隠蔽) |
||
|
比例代表 |
議席 |
3 |
－1 |
1議席減の結果 |
|
得票数 |
440.8 |
+4.5 |
前回・前々回得票を上回る440万票 |
|
|
得票率 |
7.48 |
-0.32 |
(沈黙による隠蔽) |
|
|
供託金没収 |
11人6600万円 |
(沈黙による隠蔽) |
||
|
全体評価 |
議席・得票数・得票率とも全面惨敗 |
残念 (敗北・惨敗と認めず) |
||
志位報告は、比例代表得票数が４万５３６４票増加し、前回・前々回得票を上回る４４０万票になったからとし、敗北・惨敗真相を隠蔽している。この数値報告のやり方は、志位が得意とする党員騙しのペテンでないのか。その真相を検証する。私は愛知県選対部員としていつも県内の参院選結果分析をしていたので、常任幹部会や志位報告のペテンを暴くのは、難しい仕事ではない。ややこしい計算になるが細かく分析する。
得票数が、投票率・有権者数の増減と不可分な関係にあることを考慮することは、専門家の選挙結果分析の常道である。投票率は、５６．５４％→５８．６３％に上がり、＋２．０９％増えた。よって、党派別得票数合計は、５５９３万１７８５票→５８９１万３６８３票となり、＋２９８万１８９８票増加した。共産党の今回得票率は、７．４８％である。共産党がそれに比例して増加すべき得票数の計算式は次になる。増加得票数合計２９８万１８９８票×７．４８％≒＋２２万３０４６票となる。ところが、共産党は４万５３６４票しか増えなかった。
となると、議席惨敗だけでなく、共産党の得票数も実質的に激減している計算になる。得票数の面でも、４万５３６４票－２２万３０４６票＝－１７万７６８２票という惨敗結果だった。実質として、１７万票も減らした惨敗だったのに、志位・市田・不破らは、「上回った」と数値の表面的比較で、党費納入２５万党員を騙している。
得票数が「上回った」のに、なぜ１人減り、３人しか当選できなかったのか。その理由は、ドント式の比例代表当選者４８議席配分システムにおいて、前回比で実質１７万票も減らしたので、共産党４人目は、４８位以内に入らず、落選したことにある。志位和夫は、(１)１７万票実質激減と、(２)１人減ったこととの相関関係を覆い隠す詭弁を使っている。これは、志位・市田・不破らが、１人減理由について、党内にたいする説明責任を放棄しただけでなく、むしろ、「上回った」から敗北でないと目くらまし犯罪を掛けていると規定できる。
比例代表に関する志位報告は、(１)議席４→３への１議席・２５％減、(２)得票数は実質１７万票激減、(３)得票率は０．３２％減、(４)供託金１７人中１１人・６６００万円没収という選挙総括４指標とも全面惨敗だった真相を、上っ面の名目得票数増加数値と沈黙による隠蔽手口によって、党費納入２５万党員を欺いたペテン内容だった。
(表３) 参院選惨敗要因の真相と５中総の詭弁・隠蔽
|
惨敗要因の真相 |
5中総の詭弁・隠蔽 |
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党中央要因 |
(１)「オール与党」と「確かな野党」という画一的でうぬぼれた政党規定 (２)「靖国派を中軸とした内閣」－誰も口にしなかった不評なキャッチコピー (３)４６選挙区立候補による野党票分断、自公政権存続支援戦略という左翼反動犯罪 (４)比例代表立候補者－従来の２５人→５人に激減→当初公示日直前に泡沫・無名候補者１２人追加をした右往左往のうろたえ戦術 (５)平和共同候補実現運動への敵対と詭弁＝憲法改悪阻止議席獲得展望を欠いた片手落ち戦略の空想性・政党としての無責任性 (６)政権交代阻止戦略政党と閉鎖的な犯罪的組織原則政党の本質を露呈 |
(１)党中央路線・政治論戦・政策・戦術に誤りなく、すべて正しかった (２)綱領・歴史の紹介で党中央のイニシアチブに弱さがあった |
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外部要因 |
自公政権にたいする国民の空前の怒りにおける共産党への投票激増見込という絶好条件 |
(１)自公政権への怒りが民主党に投票する流れ、(２)二大政党づくりキャンペーンという「反共シフト」の厳しい条件 |
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下部要因 |
(１)選挙連続惨敗毎の責任逃れ総括・下部への責任転嫁総括にたいする憤りと、破綻した計画的党勢拡大路線継続への怒りに基づく選挙活動・党勢拡大サボタージュ党員、供託金募金納入拒否党員の激増 (２)そこから未結集党員増加→党費納入率６３％に激減＝幽霊党員３７％・１５万人に |
全支部と全党員の決起という点では、何らかの形で選挙戦をたたかった支部は九割、党員は五割から七割 (県、地区委員長からの共通した感想というからくり形式で下部批判をし、惨敗要因の責任転嫁をしている) 冷静にみれば、やはりやるべきことができていなかった。宣伝、対話・支持拡大の到達、党勢拡大の到達、党員・後援会員のたちあがり、結局、これらの到達が得票結果となって示された。なんといっても働きかけた総量が少なすぎた |
志位和夫は、残念という日本語しか知らないらしい。 (表２、３、４)の比較データを見ても、これは、選挙総括と言えるレベルをまるで欠いている。よくぞ、このような欺瞞・隠蔽報告、下部への責任転嫁報告ができるものだと、あまりにも結果責任回避の鉄面皮ぶりには、怒るどころか、感心させられる。
２、２００９年東京都議選３連続惨敗の詭弁総括
志位和夫は、総選挙３連続惨敗、参院選３連続惨敗時点の詭弁総括と同じく、都議選３連続惨敗にたいする７月１６日幹部会声明、一問一答においても、ほとんど変わらない詭弁を使い、有権者・党員騙しを行った。それを(表)で検証する。
(表４) 都議選大敗北総括の志位式詭弁
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都議選結果の真実 |
声明の志位式詭弁と性質 |
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１、議席 |
26→15→13→８.－5議席・議席喪失38.5％ |
議席を後退させたことは残念 |
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２、得票数 |
680200→707602票で、2万7402票増加 投票者数127万0006票増えたなら、それに比例して、共産党票はどれだけ増えているべきかというテーマ。09年得票率で考える。127万0006票増加×共産党得票率12.56％＝15万9512票増加するはず。実際に増えたのは、2万7402票。となると、2万7402票しかなかった－15万9512票増加するはず＝差引で、13万2110票をも減らした選挙結果。 |
日本共産党は55万票から71万票に前進 |
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３、得票率 |
15.57％→12.56％、3.01％ダウン |
沈黙・隠蔽 |
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４、全体 |
(１)議席－５、議席喪失38.5％大敗北、(２)実質得票数、差引で13万2110票減、(３)得票率3.01％ダウン。日本共産党は、09年東京都議選で、議席・得票数・得票率とも全面敗北・後退。 |
得票で、自公が後退し、日本共産党が前進したことは重要 |
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５、結果評価 |
政権交代阻止路線野党にたいする都民の強烈な拒否審判 |
自公政権への拒否審判 |
幹部会志位『総選挙にのぞむ日本共産党の立場と、一問一答』７月１６日
幹部会声明の特徴－沈黙・隠蔽と詭弁、大敗北事実・路線の誤りを認めず
(１)、選挙結果データでの隠蔽・沈黙、詭弁
３連続惨敗、－５議席・議席喪失３８．５％という数字データを隠蔽した。―５議席を後退、残念だけでごまかした。得票数で、実質１３万２１１０票減らしたのに、その数式を覆い隠した。得票数は前進したとの詭弁を使った。得票率３．０１％ダウンに沈黙・隠蔽した。結果評価として、有権者が(１)自民党への怒り・批判、拒否審判だけでなく、(２)それを上回る怒り・批判を政権交代阻止路線野党への強烈な拒否審判として下したという真実を意図的に認めないで、隠蔽した。
(２)、大敗北原因＝政権交代阻止路線野党という誤りを認めないままで、実質的な民主党政権容認へのなし崩し的転換
自民党批判・政権交代要求有権者は、野党でありながら、自民党・民主党への同質・同類規定で、政権交代阻止を唱え、自公政権存続支援路線を大宣伝してきた共産党にたいし、激しい怒りを抱いた。共産党の誤った路線にたいする怒り・批判の激しさは、想像以上に大きかった。それは、議席喪失率で、自民党よりも、共産党の方がはるかに高かった事実が証明している。
都議選大敗北結果で、常幹トップたちは、遅まきながら、有権者の想い・怒りにようやく、気付いた。そこで、同質・同類規定を誤りだったと認めないままで、かつ、その規定を変えたわけではないと明言しつつ、とりあえず裏側に隠した。そして、解散直前に、民主党政権容認路線に転換した。
(３)、大敗北事実と、路線の誤りも認めないので、政権選択選挙や政権交代という日本語使用拒否
しかし、転換の限界がさらにある。幹部会声明や志位一問一答は、政権選択選挙という次期総選挙の性質に沈黙している。また、自公政権への審判というだけで、政権交代を積極的に進めるとも言っていない。政権交代という日本語を一度も使っていない。民主党中心の政権が成立する可能性が大きい、と規定するだけである。野党として、まるで傍観者のような発言である。
幹部会志位『総選挙にのぞむ日本共産党の立場と、一問一答』７月１６日
０９年総選挙比例代表において、共産党は、(１)議席で２４→２０→９→９→９となった。議席を減らさなかった。比例代表投票率が６９．２７％へと、１．８１％アップした。しかし、(２)得票数は、４９２→４９４．４万票へと、２．４万票増やした。(３)得票率が７．２５％→７．０３％へと、０．２２％ダウンした。志位和夫は、議席・得票数・得票率の結果をどう評価したのか。
(表１)のように、議席を減らした各選挙では、「残念」とだけ言い、投票率アップを原因とする名目得票数増加を「前進」とする詭弁・強弁総括で、有権者・党員・読者を騙してきた。選挙１０連続惨敗結果にたいし、「敗北」「党中央の誤り」を認めたことは一度もない。
(表５) 総選挙総括の志位式詭弁・強弁
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総選挙結果の真実 |
志位・常幹の詭弁・強弁 |
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１、議席 |
24→20→9→9→９。３回連続９議席 |
比例代表で9議席を獲得、現有議席を確保 |
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２、得票数 |
０５年４９１万９１８７票→０９年４９４万３８８６票で、２万４６９９票増。一方、比例代表投票率は、６７．４６％→６９．２７％へと、１．８１％アップ。投票総数は、０５年６７８１１０６９票→０９年７０３７０２５５票へと、２５５万９１８６票増加。 投票率１．８１％アップ、２５５万票増加に比例すれば、共産党はとれだけの得票数を増やしているべきかというテーマが浮上。 ２５５万９１８６票増加×共産党得票率７．０３％≒１７万９９１０票を増やしているはず。この得票数差は、実質的な得票数減少を意味。１７万９９１０票増えたはず－２万４６９９票増やした＝実質的に１５万５２１１票を減らした敗北。それは、得票率０５年７．２５％→０９年７．０３％＝０．２２％ダウンデータと一致。得票率ダウンは、実質的な得票数１５．５万票減の惨敗結果を証明。 |
491万9千票から494万4千票へと前進 |
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３、得票率 |
7.25％→7.03％、0.22％ダウン |
前回総選挙の7.25％から7.03％に後退したものの |
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4、小選挙区 |
得票率10％以上小選挙区数は、96年190→00年162→03年65→05年52→09年28と激減。 得票数は、05年立候補しなかった広島６区を除く151選挙区どうしなら比較できる。151小選挙区間を比べると、得票数が25万3800票減り、05年得票数より8％減少という大敗北結果。 |
沈黙・隠蔽、一言も触れないで、知らぬ顔。志位・市田・不破らが、この惨敗結果を隠し、沈黙した気持ちは哀れ。 |
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5、供託金没収 |
没収額6億6600万円・没収候補者率89％ |
沈黙・隠蔽、どの国政選挙でも沈黙 |
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6、全体 |
(１)議席－３回連続９議席、(２)実質得票数、差引で15.5万票減、(３)得票率0.22％ダウン。日本共産党は、09年総選挙で、得票数・得票率とも全面敗北・後退。 |
自公政権を退場させた。現有議席を確保し、得票数で前進したことは、善戦・健闘といえる結果。「善戦・健闘」との総括・自己評価 |
ＭＦ生作成表『総選挙小選挙区－共産党の成績』得票率１０％以上５２→２８に激減
『日本共産党の総選挙結果５回分データ分析』供託金没収額・％
共産党常幹『総選挙の結果について』０９年９月１日－「得票数前進＝善戦・健闘」
共産党『総選挙、共産党９議席守る。比例代表４９４万票、前回上回る』総選挙データ
４、毎回の詭弁・責任転嫁総括理由＝トップ自己保身政党
一体、なぜ、常幹トップたちは、このような詭弁・責任転嫁総括をし続けるのか。２２０００支部の支部長や党費納入２５万党員はそれらに納得しているのか。その詭弁総括に批判・不満を持ちつつも、それでも、党費納入拒否をしたり、選挙活動をやめようとしないのか。
１０連続惨敗結果にたいする批判意見書は、党員個々人しか出すことができない。常幹トップは、それらをすべて握りつぶす。彼らは、支部内の数人連名で出されれば、分派活動として直ちに査問し、規律違反処分をする。レーニンが１９２１年に決定した分派禁止規定がある限り、党内下部からの批判活動によって、常幹トップが引きずり下ろされることは、１００％起こりえない。彼らの地位は永遠に安泰である。
もし、常幹トップたちが、自らの誤りと連続大敗北結果をそのまま認め、自己批判を公表したら、党内に何が起きるか。常幹トップにたいする党内批判は一気に高まる。不満が沸騰するが、その解決方法は、党員・支部から一切奪われている。党勢拡大・選挙活動のやる気を失う。常幹トップにたいする批判公表のはけ口がない。残された唯一の手段は、抵抗形態としての党内離脱だけである。党内離脱とは、離党が口頭・文書でも拒絶されているからには、(１)党費納入拒否をする、(２)選挙カンパ・供託金カンパを払わない、(３)赤旗購読・配達・集金をやめる、(４)支部会議に出ないなどである。
志位・市田・不破らにとって、最良の手口は、詭弁・責任転嫁総括を続けることによって、２２０００支部の支部長や党費納入２５万党員騙しを継続することである。常幹トップの路線・政策・方針の誤りによって、選挙１０連続惨敗が発生したと認めれば、支部・党員の怒りが党外に向かって爆発するか、大量の党内離脱が続発し、常幹トップの地位・名誉・党内特権が奪われる危険が高い。その自己保身目的のためには、手段を選ばず、党員を欺くことこそが上策である。
日本共産党とは、志位・市田・不破ら常幹トップの自己保身を本質とする政党に変質したと規定できる。これら３人を引退・交代させられたとしても、新たな常幹トップたちが、分派禁止規定を堅持することによって、トップ自己保身政党体質を継続する。レーニンによる党内民主主義を抑圧する党内犯罪としての民主主義的中央集権制(Democratic Centralism)・分派禁止規定の放棄を、まず要求しないままで、３人引退・交代を唱える掲示板意見は、レーニン型前衛党・日本共産党にたいする誤った幻想を振り撒くだけである。
(１)３人引退・交代要求ではなく、まず、(２)党内民主主義を抑圧する犯罪的組織原則の放棄要求を声高に掲げるか、それとも、(３)犯罪的組織原則政党の自然死過程を見守ることこそが、日本政治の民主化を進める方向ではなかろうか。
４、じり貧的瓦解テンポアップ政党・犯罪的組織原則政党という規定の正否
これらの規定については、別ファイルで多面的に検証した。ここでは、そのリンクだけで説明する。日本共産党が、なぜ、自然死に至る必然性を抱えているのかを見通す上で、これらの政党規定が重要である。レーニンのクーデター政権崩壊危機における分派禁止規定の犯罪的誤りについても、多数のリンクをする。日本共産党という犯罪的組織原則政党と、レーニンの分派禁止規定の誤りは、歴史的に同一ルーツで、完全に一体のものだからである。
〔小目次〕
３、レーニンのクーデター政権崩壊危機における分派禁止規定の犯罪的誤り
１、じり貧的瓦解テンポアップ政党という規定とその正否
これらじり貧的瓦解経過の真相・データを率直見ようとしない、そこから目を背ける左翼知識人やジャーナリストの残存度合いをどう考えたらいいのか。
『じり貧的瓦解４段階経過と第５段階への転落結果』１９８０年～２００９年総選挙結果
２、犯罪的組織原則政党という規定とその正否
犯罪的組織原則とは、レーニンが１９２１年に、(１)民主主義的中央集権制＝Democratic Centralismと、(２)分派禁止規定とを結合させたことによる党内民主主義を抑圧する政党内犯罪システムを指す。それは、現存した１４の社会主義国家において、レーニン・トロツキーが創設した党独裁・党治国家の基本原則にもなった。すへての資本主義国共産党においては、常幹トップ独裁堅持＝党内民主主義抑圧の最大の武器になってきた。この党内犯罪武器を手放そうとしない共産党は、資本主義国で、ポルトガル共産党と日本共産党の２党しか残存していない。
分派禁止規定は、トップ自己保身目的のみの党内犯罪武器
『なぜ民主集中制の擁護か』党内民主主義抑圧の党内犯罪事例
『ゆううつなる党派』民主主義的中央集権制の４システム
離党拒絶対応→党費納入拒否の０７年度在籍党員１４５８０６人
『不破哲三の宮本顕治批判』〔秘密報告〕日本共産党の逆旋回と４連続粛清事件
『宮本顕治がしたことの表裏・１２のテーマ』戦後の最高権力者期間３９年間の表裏
３、レーニンのクーデター政権崩壊危機における分派禁止規定の犯罪的誤り
１９２１年、レーニン・トロツキーらのクーデター政権→党独裁・党治国家は、(１)８０％・９０００万農民反乱・(２)ペトログラード労働者の全市的ストライキ・(３)クロンシュタット兵士反乱なと、国民の総反乱によって、崩壊危機に陥った。党独裁・党治国家の崩壊危機にたいするレーニンの対応は、(１)ネップでの農民への譲歩の一方で、(２)政治の逆改革を強行する２面作戦だった。分派禁止規定の誤りはその中でも、党内・国内・国際共産主義運動内でも、民主主義を消滅させるという犯罪的な影響をもたらした。
２１世紀の資本主義国において、レーニンの分派禁止規定という犯罪的組織原則の呪縛から解き放たれていないのは、東方の島国において、党費納入を続ける日本共産党員２５万人が残存するだけになっている。他に、ポルトガル共産党員もいるが。
１９２１年クーデター政権崩壊危機とレーニン選択の４作戦
分派根絶・一枚岩統一功績と党内民主主義抑圧犯罪の二面性
レーニンがしたこと＝少数分派転落・政権崩壊に怯えた党内クーデター
『レーニン「分派禁止規定」の見直し』１９２１年の危機、クロンシュタット反乱
リチャード・パイプス『１９２１年危機－党機構官僚化と分派禁止』
『ロシア革命史』より－危機に瀕したコミュニズム
ボリシェヴィキ不支持者・政党の排除・浄化データ
赤色テロの犠牲者数、新経済政策(ネップ)は何か
プロレタリアート独裁の完成、自由抑圧のシステム化
大藪龍介『党内分派禁止と反対政党の撲滅。民主主義の消滅』１９２１年
５、大転換・解党・原則一部放棄宣言の可能性存否と、自然死かの方向性
〔小目次〕
資本主義国におけるレーニン型前衛党の崩壊過程と度合 (表６)
〔トップ決断による崩壊パターン１〕、社会民主主義政党への大転換
〔トップ決断による崩壊パターン２〕、解党－政党としての存在そのものの消滅
〔トップ決断による崩壊パターン３〕、原則一部をレーニンの誤りとして、放棄宣言
〔トップ決断による崩壊パターン４〕、党全体の分裂
〔日本共産党トップ決断による崩壊パターン可能性＝絶無〕、瓦解→自然死の方向性 (表７)
資本主義国共産党は、ヨーロッパでほぼ全滅した。ただ、共産党を名乗るのは２つ残存している。フランス共産党とポルトガル共産党である。その２党とも、レーニン型前衛党の原則の３つ、または、１つがレーニンの犯罪的誤りだったとして、党大会において、その放棄宣言をしているので、もはや、レーニン型前衛党とは規定できない。その崩壊パターンはいろいろある。それらに共通する特徴は、共産党トップ決断による、上からの転換・解党・原則放棄行動だった。
もちろん、その背景には、(１)党内下部からのトップ批判行動の外部表面化と公然化、および、(２)有権者が共産党から、機関紙購読・選挙投票行動で大逃散した事実があった。１９８０年前後、東欧・ソ連１０カ国の内部崩壊動向・腐敗・人権抑圧犯罪などの生情報が、大陸地続きで大量に流入した。それらは、レーニン以来のコミンテルン型共産党にたいする信頼を全面的に崩壊させた。すべての共産党において、じり貧的瓦解テンポアップが激化した。１９８９年～１９９１年の東欧・ソ連１０カ国とその前衛党いっせい崩壊は、ヨーロッパの資本主義国共産党が残存することにたいし、最後の決定的な一撃を加えた。
訳語変更・隠蔽スタイルで、レーニン型前衛党の諸原則の放棄宣言をしないで、実質的に全面堅持しているのは、国会議席を持つ共産党としては、世界で日本共産党だけが唯一残存している。それらの崩壊パターンを分析する。詳しくは、別ファイルでも、時系列的なデータで検証してある。
『コミンテルン型共産主義運動の現状』ヨーロッパでの終焉とアジアでの生き残り
(表６) 資本主義国のレーニン型前衛党崩壊過程と度合
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プロレタリア独裁理論 |
民主主義的中央集権制 |
前衛党概念 |
マルクス・レーニン主義 |
政党形態 |
|
|
イタリア |
´76放棄 |
´89放棄 |
放棄 |
放棄 |
´91左翼民主党 |
|
イギリス |
解党 |
解党 |
解党 |
解党 |
´91解党 |
|
スペイン |
´74年後放棄 |
´91放棄 |
放棄 |
放棄 |
´83に３分裂 |
|
フランス |
´76放棄 |
´94放棄 |
？ |
´94放棄 |
共産党名 |
|
ポルトガル |
‘74放棄 |
堅持 |
堅持 |
堅持 |
共産党名 |
|
日本 |
訳語変更→隠蔽堅持 |
略語で堅持 |
隠蔽・堅持 |
訳語変更堅持 |
共産党名 |
この(表５)において、レーニン型前衛党が大転換・解党・分裂・崩壊したヨーロッパ全域では、２０世紀末以降で、一般国民や左翼勢力のほとんどが、次のレベルの認識を持つに至ったと言えよう。それは、「１９１７年１０月、レーニンがしたことは、革命ではなく、一党独裁狙いの権力奪取クーデターだった」、「４０００万人粛清犯罪者のスターリンだけでなく、レーニン自身がクーデター政権を維持するために、ロシア革命勢力数十万人を赤色テロルで殺害した大量殺人犯罪者だった」とする「十月革命」認識内容がほぼ常識になった。そのような国民・左翼の劇的な認識転換・強烈な圧力を受けなければ、レーニン型前衛党がかくも脆く、いっせいに崩壊しなかったであろう。
〔トップ決断による崩壊パターン１〕、社会民主主義政党への大転換
イタリア
１９７６年、大会で「プロレタリア独裁」理論・実態を、レーニンの誤りだったとして、放棄した。
１９８６年、「分派」というレーニンの規定・レッテルを批判し、「党内におけるさまざまな潮流とその存在」を認め、奨励した。「そのたびごとに決定される多数派の立場とは異なる立場を公然たる形においても保持し、主張する権利」の規定を行った。
１９８９年、第１８回大会、民主主義的中央集権制を放棄し、分派禁止規定を削除した。「一枚岩主義とは、民主主義の本質的要素である異論、批判の包摂の論理が欠けており、逆に党内において異質物排除の論理もしくは、異論者、批判者を除外した同質的な状態を固定し、結晶化する体質を示すものである。その組織内での批判の自由は規約文面上だけのまったく形式的なものに変質する。どの大会でも満場一 致の採決などは、民主集中制・分派禁止規定型組織内での反対派の権利封殺の象徴的現れである」との党大会決定がされた。
１９９１年、第２１回大会、マルクス・レーニン主義との断絶的刷新を宣言し、左翼民主党に大転換した。同年１２月、少数派が共産主義再建党を結成した。
１９９６年、総選挙で中道左派連合政権が誕生した。左翼民主党２１％、共産主義再建党８．６％の得票率で、「オリーブの木」全体では、３１９議席を獲得した。
１９９７年、第２回党大会における党員数は６８万人で、このうち女性党員が２８．５％を占める。
その後、左翼民主党→民主党に転換した。
『イタリア左翼民主党の規約を読む』左翼民主党規約の全文添付
スウェーデン、フィンランド ソ連・東欧共産党の失敗は、共産主義運動自体の失敗であるとして、非共産党的左翼に転換した。
〔トップ決断による崩壊パターン２〕、解党－政党としての存在そのものの消滅
イギリス １９９１年の解党のときに、「民主左翼（Democratic Left）」への移行も決められたが、この組織も１９９９年に解散した。正確には、イングランドとウェールズの民主左翼が解散した。スコットランドは、「スコットランド民主左翼」が現存している。
イギリス共産党(CPGB)は１９９１年に解党したが、その前の１９８９年には、解党の動きに反対する勢力がイギリス共産党（CPB）を結成し、現存している。党員数約１０００人で、協同組合が発行している日刊の「モーニングスター」紙（約６０００部）は、事実上、「党機関紙」に近い。
反戦運動などでは、組織勢力とは不釣り合いなくらい影響力はもっている。イラク反戦運動をリードしてきている「戦争ストップ連合」（STWC）の議長のアンドルー・マーレイ氏は労組の専従役員だが、このCPBの党員である。
別の一部はイギリス労働党に参加し、そのブレーンとなっている。
オランダ 解党して、緑の党・エコロジストと合同し、「緑の左翼・グリーンレフトパーティ」になった。部分的に都市単位で、オランダ共産党を名乗っている所もある。
ベルギー 実質的な解党状態にある。１９８０年代半ばに国会議員なくなる。総選挙でも立候補せず、党機関紙も廃刊になった。
〔トップ決断による崩壊パターン３〕、原則一部をレーニンの誤りとして、放棄宣言
フランス
１９７６年、第２２回大会で｢プロレタリア独裁｣理論を放棄した。このレーニン理論が根本的な誤りというだけでなく、そもそも体制として、プロレタリア独裁など一度も存在しなかったと断定した。
１９８５年、第２５回大会頃より、党外マスコミでの批判的意見発表も規制しなくなった。
１９９４年、第２８回大会で、民主主義的中央集権制・分派禁止規定を放棄した。賛成１５３０人、反対５１２人、棄権４１４人という採決結果だった。この大会を機にマルシェ書記長は引退した。代わったユー全国書記は、「民主主義的中央集権制・分派禁止規定は、統一と画一性を混同し、誠実な共産主義者でも意見が異なれば、これを打倒し、隔離すべき敵であるかのように扱った」と自己批判した。
暴力革命路線のための鉄の規律、一枚岩主義＝いかなる異見も排除が必要とされた時期もあった。そのための民主主義的中央集権制・分派禁止規定が絶対視された。ヨーロッパの共産党が犯罪的組織原則だったと宣言したように、今や、分派禁止規定は、犯罪的組織原則政党＝反民主主義政党であることを象徴する時代錯誤の規律である。
ソ連崩壊の数年後、「ソ連の失敗は、マルクス主義の失敗だった」とし、マルクス主義の立場を取らないと宣言した。
１９９６年、第２9回大会で、「ミュタシオン」（変化）を提唱し、党改革を図る。
２０００年３月、第３０回大会で、一層の改革を進めるため、７つテキストを決定し、それへの党員の意見表明は３万人以上に上った。
２００３年４月、第３２回大会で、党史上初めて対案が提出され、４５％の支持を得た。党改革派が主流だが、反対は２派で、党改革への異議提出派である。
選挙では、２００２年６月、総選挙第１回得票率は、４．９１％だった。それは、１９８１年総選挙得票率１６．１３％の３分の1以下であり、１９９７年総選挙得票率９.８８％の半分に激減した。フランス下院議席は、３５議席から、２１議席に減った。これらの結果は、「ルペン問題」の影響があったとはいえ、フランス共産党史上最大の敗北だった。０７年６月、下院議席は２１→１８議席へとさらに減った。
２００７年春、大統領選挙でビュフェ議長は、７０万７２６８票、得票率１．９３％で党史上最低だった。それは、１９８１年大統領選挙得票率１６．１３％の８分の１以下への激減だった。
党員数は、１９７９年７６万８６４人、９６年２７万４０００人、９８年２１万人、９９年１８万３８７８人、２００１年１３万８７５６人、０３年１３万３２００人、０４年１２万５０００人へと、一貫した党員減退を続けている。０６年は１３万４０００人へと微増した。党費納入党員数＝党員証交付数でほぼ毎年公表するので、１９７９年と比べ、党員６２万６８６４人・８１．6％がフランス共産党から離党した。１８．４％党員しか残っていない。
日本共産党のように幽霊党員１５万人を含めた在籍党員数公表ではない。フランス共産党のような公表スタイルにすれば、日本共産党の党員数は、０７年５中総志位の党費納入率約６３％報告からの計算では、２５万人になる。１５万人・３７％は、党費納入拒否・行方不明と、党機関により離党申請の拒否・握り潰しをされた架空党員数である。志位・市田・不破らは、党大会ごとに、よくぞ、幽霊党員１５万人込みの水増し決算報告をするものだと、その厚かましさに感心し、かつ、その臆病な真相隠蔽ぶりに哀れさを抱く。
機関紙「ユマニテ」は、第二次大戦直後は４０万部あった。しかし、６０年代から８０年代まで、１５万部、１９９７年では、６万部、２００１年は４万５千部に減少している。０５年は５万１６３９部に増えたが、増収になっていない。週末版(日曜版)８万部がある。
財政危機・破綻も深刻になっている。ル・モンド記事などによると、２００１年ユマニテの累積赤字は５０００万フラン・約８億円になった。０４年赤字が２７０万ユーロ・約４億２６６０万円で、０５年が赤字３００万ユーロ・約４億７４００万円だった。２００１年５月１８日のユマニテ再建計画は、民間企業３社の出資を受けることを決定した。(１)出版社アシェット社、(２)放送局ＴＦ１、(３)ケス＝デパルニュ銀行の３社から、資本金の２０％を出してもらって、発行を存続する。それらは、左翼系の会社ではない。さらに、ユマニテ記者・社員１９０人中、５０人をリストラで解雇する。
これら、選挙、党員数、機関紙、財政危機・破綻のデータ全体は何を示しているのか。それは、レーニン型前衛党５原則の３つを放棄しても、共産党名＝うぬぼれた前衛党体質を維持し続ける限り、フランス共産党のじり貧的瓦解を食い止めることが、もはや出来ないことを証明している。
アルチュセール『共産党のなかでこれ以上続いてはならないこと』
福田玲三『民主集中制の放棄とフランス共産党』 『党史上初めて対案提出』２００３年
ポルトガル
１９７４年１２月、党大会で、ヨーロッパの共産党他党に先駆け、もっとも早く「プロレタリア独裁理論」を削除・放棄した。
１９８０年、総選挙で共産党４１議席。
１９８７年、総選挙で共産党議席３分の２に減らす。
１９９１年、総選挙で８．８％得票したが、十数年で半減している。議席も前回選挙からほぼ半減した。
１９９２年、第１４回大会では、１９８９年の党大会より党員が数万人減って、１６万人になった。ソ連崩壊を「世界の労働者と人民の巨大な損失」とし、マルクス・レーニン主義を堅持している。
２００５年、総選挙で、共産党・緑の党による「統一民主同盟」ブロックの１４議席。得票率前回８．７５％→７．５７％に下落。
２００６年、大統領選挙で共産党の得票率１９９１年１３％→８．６％に下落。
２００８年１月、共産党１９８０年４１議席→１２議席に激減。
２１世紀、資本主義国の共産党で、日本共産党とポルトガル共産党の２党だけが、Democratic Centralismという党内民主主義を抑圧する犯罪的組織原則を堅持している。日本共産党は、１９８０年赤旗３５５万部をピークとし、２００７年１４７万部に激減し、２０８万人、５８．6％読者が、共産党から大量離脱・逃散した。日本共産党も、１９７９年総選挙４１議席→２００５年９議席→２００９年も９議席へと激減した。
党勢力・総選挙議席数激減推移と犯罪的組織原則堅持などで、２党にはかなりの類似性がある。それは、党内民主主義抑圧政党が歯止めのないじり貧的瓦解をすることを、もはや食い止められない共通傾向と規定できよう。
『日本共産党の党勢力、その見方考え方』じり貧的瓦解データ
〔トップ決断による崩壊パターン４〕、党全体の分裂
スペイン
１９８３年、親ソ派、カリリョ派、ユーロコミュニズムを党内民主主義の徹底化にまで深化させることを主張する新世代派に３分裂した｡
１９８９年、その後の再建活動の中で選挙ブロックとしての統一左翼を結成する。その年の総選挙で統一左翼は９．１３％を獲得した。
１９９３年、総選挙では９．５７％獲得した。
１９９１年、民主主義的中央集権制を放棄した。
２０００年３月、総選挙で、統一左翼は１９９６年の２１議席から８議席に後退、大敗した。
２００８年３月、総選挙で、統一左翼は１９９６年２１議席→２０００年８議席に、その後５議席になり、２００８年は下院３５０議席中３議席を減らし、２議席に後退、大敗した。上院２０８議席中、前回に続き議席０だった。
アイルランド ほとんど影響力をもっていない。党が分裂して、現在は国会の議席がゼロになっている。
ただ、現在の日本共産党が分裂する可能性は皆無であろう。というのも、宮本・不破・志位らは、自己保身目的により、専従４０００人の内、党中央批判・不満者を一人残らず党内外排除しつくしてきたからである。日本共産党が分裂するには、党中央・代々木レベルで、党内外に組織的・理論的影響力を持った幹部グループを必要とする。
彼らは、「党中央批判は、一般党員になら許されるが、専従には許されない」という宮本顕治秘密人事指令によって、完璧なまでに排斥された。不破・志位・市田は、宮本の党内犯罪を忠実に執行してきた。東方の島国においては、スペイン共産党のような３分裂が発生する人的条件は絶滅している。
〔日本共産党トップ決断による崩壊パターン可能性＝絶無〕、じり貧的瓦解→自然死の方向性
トップ決断による日本共産党崩壊の可能性があるかどうかを検証する。志位・市田・不破らは、２１世紀になっても、レーニン型前衛党４原則を、訳語変更・隠蔽方式で堅持している。ほとんどのマスコミがその欺瞞に騙され、それらへの批判をやらなくなっている。
(表７) 日本共産党の欺瞞的な４原則隠蔽・堅持方式
|
４つの原理 |
欺瞞的な隠蔽・堅持方式 |
他国共産党との比較 |
|
プロレタリア独裁理論 |
綱領において、訳語変更の連続による隠蔽・堅持。(１)プロレタリア独裁→(２)プロレタリアのディクタトゥーラ→(３)プロレタリアートの執権→(４)労働者階級の権力→(５)放棄宣言をしないままで、綱領から権力用語を抹殺し、隠蔽・堅持している |
ヨーロッパでは、１９７０年代、ポルトガル共産党を筆頭として、１００％の共産党が、これは犯罪的な大量殺人をもたらし、誤った理論と認定した。そして、明白に放棄宣言をした。資本主義世界で、放棄宣言をしていないのは、日本共産党だけである |
|
民主主義的中央集権制・分派禁止規定 |
規約において、訳語変更による隠蔽・堅持。(１)民主主義的中央集権制(Democratic Centralism)→(２)「民主集中制」という略語に変更→(３)「民主と集中の統一」と解釈変更で堅持→(４) 「民主と集中の統一」は、あらゆる政党が採用している普遍的な組織原則と強弁している |
ヨーロッパの共産党は、「Democratic Centralism」の「民主主義的・Democratic」は形式・形容詞にすぎず、「官僚主義的・絶対的な中央集権制・Centralism」に陥ると断定した。それは、「党の統一を守るのには役立ったが、一方で党内民主主義を抑圧した」組織原則だと認定した。この反民主主義的組織原則を堅持しているのは、残存する犯罪的な一党独裁国前衛党４党とポルトガル共産党・日本共産党だけである |
|
前衛党概念 |
規約において、(１)前衛党→(２)規約前文から綱領部分削除に伴い、その中の「前衛党」用語も事務的に削除→(３)不破哲三の前文削除説明で、「前衛党」概念を支持・擁護 |
イタリア共産党は、「前衛党」思想を、「政党思想の中で、もっともうぬぼれた、傲慢で、排他的な政党思想だった」と総括し、全面否定した。日本のマスコミは、左(２)を「前衛党」概念の放棄と錯覚し、誤った解説をした |
|
マルクス・レーニン主義 |
(１)マルクス・レーニン主義→(２)個人名は駄目として、「科学的社会主義」に名称変更し、堅持。不破哲三の『レーニンと資本論』全７巻を見れば、マルクス・レーニン主義そのものの堅持ぶりが分かる。ただ、彼は、さすがにレーニンの暴力革命理論だけを否定した |
「マルクス・レーニン主義」の命名者はスターリンである。ポルトガル共産党を除くヨーロッパの共産党すべてが、マルクス・レーニン主義と断絶した。フランス共産党も、ソ連崩壊数年後、「ソ連の失敗は、マルクス主義の失敗だった」とし、マルクス主義の立場を取らないと宣言した。 |
日本共産党は、４項目に関して、訳語・名称変更しただけで、ヨーロッパの共産党がしたような明白な放棄宣言を一つもしていない。その実態も、隠蔽・堅持方式を採っている。世界的にも、こういう欺瞞的スタイルを採る共産党は皆無であり、いかにも不可思議な政党ではある。
その点で、加藤哲郎一橋大学教授は、日本共産党を「現段階のコミンテルン研究の貴重な、生きた博物館的素材」と指摘した(『コミンテルンの世界像』青木書店、１９９１年、Ｐ.３)。その視点から観れば、日本共産党を２１世紀における「貴重な絶滅危惧種」として、このまま生態保存しておく必要があるのかもしれない。ただし、選挙政策面では、天皇制・君が代日の丸・自衛隊テーマなどで、無党派層への支持拡大を狙って、どんどん現実化している。それは、不破・志位・市田らが、(１)レーニン型前衛党の５基準・原理の隠蔽堅持路線と、(２)選挙政策の現実化路線という矛盾した２面作戦を採用していると規定できる。
２１世紀の資本主義世界で、いったい、なぜ、日本共産党という一党だけが、レーニン型前衛党の４原則を保持しつつ残存しえているのか。もっとも、残存する一党独裁型前衛党の中国・ベトナム・北朝鮮を合わせれば、アジアでは、４つの前衛党が崩壊しないでいる。
『規約全面改定における放棄と堅持』２０００年第２２回大会、欺瞞的な隠蔽・堅持の詳細
『「削除・隠蔽」による「堅持」作戦』欺瞞的な隠蔽・堅持方式の４段階の詳細
『不破哲三の宮本顕治批判』〔秘密報告〕日本共産党の逆旋回
『綱領全面改定における不破哲三の４面相』綱領改定案と討論・代議員選出
トップ決断による日本共産党崩壊の可能性は絶無である。なぜなら、崩壊・原則一部放棄宣言をした資本主義国共産党と違い、転換を推進させるようとする党中央幹部が、宮本・不破・志位らによって、すべて党内外排除され、そのような人材が払底してしまっているからである。それは、私が１９７０年に直接、愛知県委員長・幹部会員から聞いた宮本顕治の党幹部粛清方針である。宮本顕治は幹部会会議において、「党中央批判は党員には許されるが、専従には許されない」と明言し、全中間機関での粛清強化の秘密指令をした。
彼は、その幹部政策と批判幹部の党内外排除・粛清を、１９６１年第８回大会前から、袴田里見を使って、大々的に秘密裏に執行し続けていた。その党内犯罪結果として、党中央役員だけでなく、専従４０００人中にも、転換推進の方向性を秘めた幹部は一人も、誰もいなくなった、というのが日本共産党の現実である。
志位・市田・不破らが、レーニンの犯罪的な党内民主主義を抑圧する分派禁止規定を、自己保身の最大の武器として堅持するかぎり、そして、２２０００支部・党費納入２５万党員が、党中央批判公表→分派容疑→査問という、レーニンの呪縛から解き放たれないかぎり、他の資本主義国共産党のように、大転換・解党・レーニン原則一部放棄・分裂などが起きることは、もはやありえない。残る方向性は、じり貧的瓦解→自然死だけとなる。
６、党員、支部長・ＬＣに残された選択肢－下部から個々党内離脱と支部解党宣言
それなら、現在の誤った路線・方針、自己批判回避＝自己保身トップに批判を抱く党員・支部長・ＬＣに残された選択肢は何か。党中央批判の意見書はすべて握りつぶされ、何の効果もない。離党＝党外離脱は、口頭・文書でも拒絶される。
〔小目次〕
１、下部から個々党内離脱テンポアップ＝党費収入データが証明 (表８～９)
１、下部から個々党内離脱テンポアップ＝党費収入データが証明
これは、党費納入拒否形態によって、公表在籍党員の３７．０％・１４．５万人が実行している。残存する党費納入２５万党員からも、さらに、党内離脱者が増える可能性がある。２００１年以降７年間の党費納入額・率の下落テンポアップは異様である。
日本共産党ＨＰの政治資金データは、１９９５年以降の１２年間を載せている。１９９７年はなぜかない。官報公表データの内、収入分のみを(表)にした。ただ、共産党ＨＰは年間党費納入者数を意図的に削除していて、官報にしかない。その数値は、私が官報から直接調査し、別ファイルに載せた。共産党は、２００７年度政治資金データを、０８年９月１２日に公表した。
(表８) 日本共産党政治資金の収入分官報公表データ
|
年 |
党費収入 |
機関紙誌書籍 |
収入合計 |
収支差引 |
備考(宮地) |
|
1995 |
13.4 |
277.9 |
311.0 |
+4.6 |
|
|
96 |
１４３ |
270.4 |
304.0 |
－0.1 |
党費納入のピーク |
|
98 |
13.7 |
272.6 |
308.5 |
－0.3 |
|
|
99 |
13.6 |
256.0 |
302.3 |
+3.0 |
本部ビル建設前の建物資産53件19.8億円 |
|
2000 |
13.2 |
281.1 |
327.8 |
－11.9 |
赤旗の年度途中値上げ増収 |
|
01 |
12.6 |
291.7 |
342.8 |
－6.5 |
赤旗年度当初からの値上げ増収 |
|
02 |
12.6 |
282.1 |
334.2 |
－14.2 |
赤字決算数年は本部ビル建設の借入金・支出 |
|
03 |
12.1 |
260.0 |
307.1 |
－8.7 |
|
|
04 |
11.3 |
251.2 |
300.6 |
－23.7 |
|
|
05 |
10.9 |
240.7 |
284.1 |
－9.3 |
|
|
06 |
10.0 |
230.9 |
281.9 |
+10.6 |
党費・機関紙収入最低。建物資産109.2億円 |
|
07 |
9.5 |
221.5 |
264.8 |
+0.7 |
08年9月12日公表 |
|
08 |
09年9月公表の予定 |
単位は億円、百万円以下は切り捨て。収支差引のマイナスは年度赤字決算
共産党『日本共産党の財政－政治資金収支報告』９５年～０６年
共産党『日本共産党の２００７年政治資金収支報告』０７年分－０８年９月１２日公表
総務省『日本共産党の平成１９年度政治資金報告書』定期公表→共産党→１の２頁
総務省への共産党平成１８年度・２００６年度報告書における党費年間総額と党員数年間延べ総数の正確な数値を書いておく。(１)党費年間総額１０億６２３万８４２６円、(２)党費納入党員数数年間延３１４万２８０８人である。
総務省への共産党平成１９年度・２００７年度分報告は、２００８年９月１２日にあった。(１)党費年間総額９億５１３８万８４２６８４８５円、(２)党費納入党員数数年間延３１０万１９１９人である。
この(表７)は、資本主義世界で最後に残存するレーニン型前衛党において、(１)党員の党内離脱＝党費納入拒否実態と、(２)赤旗読者の共産党からの大逃散＝赤旗購読拒否実態を、官報公表の財政１３年間データによって証明している。
党費収入の激減が示すもの＝日本共産党員の党内離脱データ
〔党内離脱データ１〕、１３年間の収入ピークは１９９６年の１４３億円である。最低は２００７年の9．５億円になった。１３年間で、－３．９億円・２９．１％減った。この激減比率はきわめて高い。具体的な党員数は、別ファイルで計算した。
〔党内離脱データ２〕、共産党ＨＰが意図的に削除・隠蔽している党費納入党員数の比較をしてみる。１９９８年度官報の党費納入党員数は２６万５２６９人である。２００７年９月５中総で志位和夫は、党費納入率激減％を報告し、それにより、党費納入率６３％＝党費納入党員数が２５万４７０８人に減ったと証言した。比較年度がややずれるが、０７年２５万４７０８人－９８年２６万５２６９人＝１３年間で－１０５５６人・－4％となり、それらが離党を拒絶され、党員在籍のままで党費納入拒否をする党内離脱・幽霊党員となっていることになる。
〔２つのデータからの疑惑〕、ただ、これら２つのデータの％がかけ離れている。〔データ１〕は、共産党ＨＰなので、正確と思われる。というのも、政治資金規正法による総務省への正式報告なので、金額面をごまかせば、罰則に該当するからである。しかし、２９．１％も党費収入が減っているのに、党費納入党員数が４％減という数値は釣り合わない。となると、真相は、党費納入党員数も２９．１％減っているのではないか、官報での党員数だけはごまかしているのではないかという疑惑が発生する。私の共産党専従１３年間体験からも、個人別党費額が１３年間で－２９．１％も下がることはありえないからである。
党費収入減と党費納入党員数減とは、基本的に比例すると考えられる。となると、９８年党費納入党員数２６５２６９人×７０．９％≒２００７年度党費納入党員数１８８０７５人となる。(１) 以前は２８万人と推計していた。→(２)５中総における党費納入率激減６３．０％志位報告によって２５万人と訂正した。→(３)それが約１９万人になっているのかもしれない。
(４)、総務省にたいする政治資金報告において、日本共産党が党費年間総額で虚偽報告をし、ウソが発覚すれば、法律違反として罰則政党と認定される。しかし、(５)、党費納入党員数数年間延に関する虚偽報告については、実数約１９万人を、２５万人とのウソを報告しても、政治資金と異なるので、罰則規定に該当しない。ただ、この真相は、ソ連共産党のように、日本共産党が崩壊し、ウソが証明されないと、赤い闇のままに隠される。
２、支部長・ＬＣ全員決定による支部解党宣言と地区への通告
党員・支部にとってのもう一つの選択肢は、支部解党決定である。日本共産党の基礎組織としての細胞を自死させる行動である。常幹トップが誤りを続け、選挙１０連続惨敗をしても、なんの自己批判もしないという自己保身トップ政党にたいし、抵抗形態としての細胞自死によって、見切りをつけることである。
０９年３月幹部会報告は次のデータを示した。党員拡大支部３７．６％、読者拡大支部３０％台、０５年総選挙時部数を突破、または、あとわずか３地区委員会とした。その数値は何を意味するのか。支部数は、１９９５年２８０００支部から、２００９年２２０００支部へと減少し、基礎組織６０００支部が壊滅し、または、細胞自死をした。
『幹部会』０９年３月５日
(表９) 支部組織の歯止めのない崩壊現象
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年・党大会 |
支部数と実態 |
|
１９95年、中央委報告 |
28000支部 |
|
2000年、第22回大会 |
26000支部 |
|
2003年、中央委報告 |
25000支部 |
|
2005年、4中総報告と５中総報告＝第24回大会決議案 |
24000支部 1995年から10年間で、4000支部が崩壊 (１)、「政策と計画」を持った支部－22大会90％→23大会52％ (２)、週1回支部会議の支部 22大会25％→23大会19％ (３)、総選挙で支部会議を開いた支部82％、一度も開かなかった支部18％ 24000×18％≒4320支部は、事実上すでに崩壊している 24000－4320＝19680支部が残存しているのが、共産党基礎組織の実態 (４)、10年間の支部崩壊度 19680÷28000≒70・3％。29.7％の8320支部が崩壊 |
|
2006年1月、第２４回大会中央委員会報告 |
「政策と計画」を持った支部－22大会90％→23大会52％ →24回大会50％に後退。「計画」とは党勢拡大数値目標のこと。半分の12000支部が、(１)「計画」を立てられないレベルに崩壊的ダウンしたのか、それとも、(２)「計画的党勢拡大」という宮本・不破・志位路線を拒絶し、意識的に「計画の具体化・数値化」をサボタージュする構えに突入したのか。 |
|
2009年３月５日 |
22000支部。党員拡大成果支部37.6％、読者拡大成果支部30％台 |
|
青年支部の分離・創設と崩壊？ |
1972年民青20万人→現在2万人・同盟費納入0.8万人→民青崩壊対策として青年支部分離・創設方針→04年青年支部1000→05年5中総400支部に激減→以後4年間、支部数に沈黙・隠蔽＝青年支部全滅・方針撤回か？－二重組織という机上の空論の誤り |
私の民青地区委員長１年半→共産党地区常任委員(現在で５つの地区委員長)→愛知県選対部員という共産党専従１３年半の個人的体験からも、この実態を証言できる。もっとも、私自身、共産党常任委員当時は、極度な一面的赤旗拡大の誤った指導により、多くの細胞を崩壊させてきた実体験と責任がある。その後、多くの現役党員との接触やメールからも、この実態を確認している。
２００９年幹部会における支部実態を、１９９５年２８０００支部数を基準として３分類すると何が見えるか。幹部会報告の１６カ月間における党員不拡大支部は、６２．４％・１３７２８支部である。読者拡大支部３０％台とは、３０％を少し上回っただけと思われる。そこから、読者不拡大支部は、７０％を少し下回っただけと思われるので、約７０％・１５４００支部とする。
(表１０) １９９５年２８０００支部数比での支部組織の３分類
|
性質 |
支部数 |
比率％ |
原因や実態 |
|
破壊・崩壊 細胞自死 |
6000 |
21.4％ |
党中央が党勢拡大と選挙だけの偏った党活動指令で支部破壊、崩壊。6000支部が持っていた読者・共産党支持者も消滅。または、細胞自死としての支部解党決定 |
|
党員不拡大 読者不拡大 |
13728 15400 |
49.0％ 55.0％ |
宮本顕治以来の「計画的党勢拡大路線」、志位和夫の「50万党員拡大5カ年計画」にたいする拒否反応。拡大計画だけを立てても、それへのサボタージュ支部の激増データ。これは、その支部ＬＣ全員が党勢拡大サボタージュ党員になっていることを証明するデータ |
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党員拡大成果 読者拡大成果 |
8272 6600 |
29.6％ 23.6％ |
左記の％支部しか、党勢拡大に取り組んでいない。一面的な党勢拡大の成績追求・数字点検という路線の破綻を証明するデータ |
地区委員会にしても、３１６地区－０５年総選挙時部数突破・あとわずか３地区＝３１３地区・９９．０％が、大幅減紙で総選挙に突入した。その減紙数は、０９年３月５日時点で、１２０３９６部減紙のままとなった。
７、共産党自然死の前後に来る展望－いくつかの可能性存否
これら(表１～１０)は、日本共産党が、じり貧的瓦解テンポアップ政党であることを数値的に証明するデータとなっている。同時に、自然死の方向性が明白になってきた事例ともなっている。そこで、自然死前後に来るいくつかの可能性を検討して見る。自然死とは、(１)日本共産党の衆議院・参議院という国会議席が、いずれも３議席以下に激減した泡沫政党状態に転落するが、(２)地方議員や共産党員はまだ、残存しているレベルを指す。
〔小目次〕
〔可能性１〕、志位・市田・不破らが、社会民主主義政党への大転換か、解党を決行
〔可能性２〕、常幹トップが、民主集中制・分派禁止規定をレーニンの誤りとして放棄宣言
〔可能性３〕、民主党・他政党との選挙協力への大転換と申入れ、閣内協力へのすり寄り
〔可能性４〕、赤旗激減・党費納入拒否者激増→党中央・中間機関体制自然消滅 (表１１)
〔可能性５〕、ネットワーク型全国組織、緑の環境政党による泡沫化→国会議席消滅 (表１２)
〔可能性１〕、志位・市田・不破らが、社会民主主義政党への大転換か、解党を決行
資本主義ヨーロッパでは、フランス共産党、ポルトガル共産党という２党を除くすべての共産党トップが、これらの大転換か解党を決断し、決行した。東欧・ソ連１０カ国のレーニン型前衛党も、完全消滅し、共産党員もはや残存していない。それらは、すべて、国民・有権者の強烈な共産党批判、共産党からの大逃散行動に直面したレーニン型前衛党トップの決断によるものだった。
それなら、東方の島国において、資本主義国で唯一残存するレーニン型前衛党の日本共産党トップが、同じような決断をする可能性はあるか。マルクス・レーニン賛美を多数の著書で続け、中国共産党という党独裁・党治国家を持ち上げる不破哲三が、常幹・社会科学研究所所長の地位で、赤い院政を敷き→生きている限り、この可能性は絶無である。上田耕一郎は８１歳で死去したが、不破哲三７８歳がいなくなっても、志位・市田らや他常幹らが、大転換・解党を決行する可能性もない。
なぜなら、これらの決断には、従来路線の全面否定総括と自己批判を必要とするからである。さらには、資本主義国共産党において、日本共産党トップほど、(１)自己保身性が異様に高く、(２)誤りや選挙惨敗事実を認めず、(３)自己批判を拒否し続ける幹部はいないからである。
〔可能性２〕、常幹トップが、民主集中制・分派禁止規定をレーニンの誤りとして放棄宣言
イタリア共産党・フランス共産党は、レーニンが１９２１年に決定・実行した民主主義的中央集権制・分派禁止規定は、党の統一には役立ったが、党内民主主義を抑圧し、破壊する誤った犯罪的組織原則だったと認定し、党大会において放棄宣言をした。以降、党員による党中央・幹部批判は、党内外で自由になった。レーニンの犯罪的な分派規律違反の呪縛から、全党員が解き放たれた。その結果、共産党トップによる過去・現在の党内犯罪追及は、党内外で熾烈になり、放棄宣言を決断したトップたちは、党内地位・名誉・特権を剥奪された。
東方の島国は、資本主義世界において、異様なほどに「レーニン神話」「日本共産党神話」を残存させている。(１)その歴史的・地政学的な原因、(２)宮本顕治による日本共産党史偽造歪曲犯罪、(３)１９８０年代の日本共産党逆旋回クーデター＝４連続粛清事件については、別ファイルで検証した。
『「十月クーデター」説に関するヨーロッパと日本の認識格差とその原因・経過』
もし、常幹トップたちが、この放棄宣言をしようものなら、イタリア共産党・フランス共産党と同じ事態が発生する。ただ、宮本・不破・志位らによる党内犯罪の事例・レベルは、２党よりもはるかに多く、ひどい。それら常幹トップ党内犯罪にたいする批判の自由を党内外で解き放てば、分派禁止規定という最大の自己保身武器を喪失した彼らは直ちに、査問→党内地位・名誉・特権の剥奪→規律違反処分になる。
よって、志位・市田・不破らや他常幹が、放棄宣言をする可能性は、絶無である。掲示板などで、志位・市田・不破らの引退を要求する意見が時々ある。彼らが引退し、他幹部に交代しても、民主集中制・分派禁止規定を放棄しない限り、日本共産党の犯罪的組織原則堅持の幹部体質は不変である。特定トップへの引退・交代要求は、日本共産党の組織体質にたいする甘い幻想にすぎない。
〔可能性３〕、民主党・他政党との選挙協力への大転換と申入れ、閣内協力へのすり寄り
じり貧的瓦解→自然死の恐怖から、衆参議席が３議席以下に転落する前に、志位・市田・不破らが、姑息な変身＝生き残り策を模索する可能性は否定できない。それは、(１)一貫して拒絶してきた民主党・他政党との選挙協力への大転換をし、(２)民主党政権での閣内協力へのすり寄りを謀ることである。
ただし、この共産党陰謀が成立する可能性は、まるでない。日本共産党とは、資本主義世界で唯一残存するレーニン型前衛党５原則の全面堅持政党である。ポルトガル共産党は、プロレタリアート独裁理論が、レーニンの犯罪的誤りと認定し、１９７４年、ヨーロッパで一番早く、放棄宣言をした。フランス共産党は、プロレタリアート独裁理論、民主主義的中央集権制と分派禁止規定、マルクス主義理論を誤った原則だったとして、レーニン３原則もの放棄宣言をしてきた。
日本共産党だけが、欺瞞的な訳語変更・隠蔽などて、放棄宣言を一切していない。マスコミや左翼知識人らは、志位・市田・不破らによる隠蔽堅持方式にすっかり騙されている。
日本の民主党・他政党は、日本共産党の本質・実態＝うぬぼれた前衛党体質を、さまざまな体験を通じて、熟知している。志位・市田・不破らが、なんとか自然死を免れようととし、レーニン型前衛党原則の放棄宣言をしないままで、隠蔽堅持したままで、選挙協力や閣内協力を申入れても、拒絶されるだけであろう。
かつて、１９７０年代、イタリア共産党のベルリングェルが、選挙・党勢のじり貧的瓦解に怯え、レーニンの犯罪的諸原則を全面堅持したままで、他党派すべてに「歴史的和解」を呼び掛けたことがあった。しかし、共産党の犯罪体質・経緯を熟知していた他党派は、そのすり寄りにたいし、一顧も与えず拒絶した。
菅直人が、民主党代表だったとき、イタリアのオリーブの木運動に惹かれ、日本共産党との選挙協力を構想したときがあった。彼は、イタリア共産党が、マルクス・レーニン主義と断絶的刷新をし、左翼民主党に大転換していることの認識が欠けていた。それにたいし、日本共産党は、現在と同じく、党内民主主義を抑圧する完璧な犯罪的組織原則政党だった。彼の提案は、自民党や保守勢力から猛攻撃を受けた。彼は、一日だけで、その構想を撤回した。日本共産党が、マルクス・レーニン主義と断絶宣言をし、社会民主主義政党への大転換をしない限り、志位・市田・不破側がいくら策謀しようとも、この策謀の実現可能性はありえない。
〔可能性４〕、赤旗激減・党費納入拒否者激増による党中央・中間機関体制の自然消滅
赤旗ＨＮ読者は、共産党からの大逃散が続いている。すべて党大会報告数値だが、２００８年７月数値は、６中総・志位報告の％データに基づく推計である。それは、１９８０年をピークとし、２８年間にわたって、一度も増えた党大会がなく、一貫して減り続けている。３５５万部－１５１万部≒２０４万人、５７．４％読者が、共産党から大量離脱した。この減紙データからは、今後とも、赤旗ＨＮ部数が、党大会時点で増える見通しは絶無と断定できる。
(表１１) 歯止めのきかない党勢力減退＝読者大量離脱
|
年 |
８０ |
８２ |
８５ |
８７ |
９０ |
９４ |
９７ |
００・９ |
04･１ |
06・1 |
08.7 |
|
大会 |
１５ |
１６ |
１７ |
１８ |
１９ |
２０ |
２１ |
２２ |
23 |
24 |
６中総 |
|
ＨＮ |
３５５ |
３39 |
３17.7 |
３17.5 |
２８６ |
２５０ |
２３０ |
１９９ |
173 |
164 |
(151) |
|
増減 |
－16 |
－21.3 |
－0.2 |
－31.5 |
－36 |
－20 |
－31 |
-26 |
-9 |
-13.3 |
赤旗ＨＮ読者激減テンポを確認する。減紙％は、その期間当初部数との比較である。
(１)、ピーク１９８０年～９０年の１０年間－６９万部・１９．４％減紙
(２)、東欧・ソ連１０カ国崩壊の９０年～２０００年の１０年間－８７万部・３０．４％減紙
(３)、第２２回大会２０００年～０８年６中総の８年間－４８万部・２４．１％減紙
(４)、今後、２００９年～２０１９年までの１０年間－増える見通しは絶無である。もし、(２)(３)の平均値約２５％が減るとすればどうなるか。衆参議席３以下の自然死の見通しは、衆参比例代表議席定数削減があれば、２０１９年までとなる。
０８年６中総１５１万部×２５％≒３８万部減紙する。残存する赤旗読者は、１１３万人に激減する。それは、１９８０年ピーク時点３５５万部－１１３万部＝２４２万人・６８．１％の読者が、党内民主主義を抑圧する分派禁止規定の犯罪的組織原則政党から大逃散したこと、今後ともすることを意味する。
日本共産党の党本部専従８００人・４７都道府県委員会・３１６地区委員会システムは、共産党収入中、税金免除の赤旗収入約９０％が支えてきた。その赤旗激減テンポは、党中央・中間機関体制＝専従４０００人システムを、財政的破綻→自然消滅に追い込む。(１)衆参議席における自然死と、(２)赤旗読者激減による機関・専従体制の財政破綻＝自然死は、同時並行的に進行する。
党費納入拒否者も、当然ながら、赤旗読者大逃散テンポに比例しているはずである。１９９０年第１９回大会前後、共産党員は、東欧・ソ連１０カ国とレーニン型前衛党いっせい崩壊で、１２万人もが大量離党した。宮本・不破・志位らは、日本共産党のドミノ的崩壊の恐怖から、それ以降、離党を口頭・文書であろうとも拒絶せよとの組織犯罪路線に転化した。それからの１９年間、離党が拒絶され続けるので、党費納入拒否という党内離脱党員が累積してきた。その累計が党費納入拒否者３７．０％・１４．５万人である。
東欧・ソ連１０カ国とレーニン型前衛党崩壊前の１９８７年赤旗読者は、３１７．５万人だった。０８年は１５１万人・４７．５％に激減した。今後、２０１９年までの１０年間で、その２５％が減り、１１３万人に激減する。同じ比率で党費納入者が減れば、党費納入２５万党員×２５％＝６２５００人が新たに党内離脱党員・党費納入拒否者となる。
それ以上の規模で、志位・市田・不破ら常幹トップにたいする批判・不満が党内で蓄積し、党勢拡大・選挙活動サボタージュ党員・支部が激増する。それらと合わせ、赤旗読者大逃散、共産党員の大量党内離脱により、現在の党中央・中間機関体制は、自然消滅に追い込まれる。
〔可能性５〕、ネットワーク型全国組織、緑の環境政党による泡沫化→国会議席消滅
イタリア共産党は、マルクス・レーニン主義の理論・体制は根本的な誤りだったとし、断絶的刷新を宣言し、左翼民主党→民主党に連続転換した。それにたいする抵抗もあって、分裂したグループや共産主義旧左翼は、様々な党派を創った。しかし、それらの共産主義政党は、２００８年４月総選挙において、国会議席が全滅した。
日本共産党について、今後１０年間の見通しをシミュレーションすれば、どうなるか。２０１９年までの１０年間で、総選挙は、４年任期で少なくとも２回ある。解散による３回の可能性もある。参院選も、次期２０１０年を入れて、４回行われる。国政選挙７連続惨敗中の共産党が、さらにそれら６回で連続惨敗をし、国政選挙１３連続惨敗をすれば、日本共産党は、２００８年総選挙におけるイタリアの共産主義諸政党の議席が全滅したように、国会衆参各３議席以下、または、合計４議席以下という自然死となる。
下記(表１２)は、在ローマ・ジャーナリスト茜ケ久保徹郎の評論『イタリア中道左派政権の復活と左翼の惨敗』(労働運動研究所・復刊２０号、２００８年８月、Ｐ．５２)に載った(表)の一部を引用した。イタリアというヨーロッパ資本主義諸国史上最大の共産党勢力を保持した国家において、共産主義諸政党は、２００８年４月総選挙結果として、国会議席が消滅した。
(表１２) イタリア共産主義諸政党の自然死＝国会議席で消滅
|
イタリア共産主義左翼政党 |
上院 |
下院 |
||
|
議席数 |
得票率 |
議席数 |
得票率 |
|
|
2006年、共産主義再建党、イタリア共産主義者党、その他 |
28 |
11.6％ |
113 |
10.2％ |
|
2008年４月、左翼「虹」連合 |
0 |
3.2％ |
0 |
3.1％ |
ただし、東方の島国においては、ヨーロッパのような「緑の環境政党」は勢力を持っていない。国政に影響・関与するようなネットワーク型全国組織の形成は未知である。それがなくとも、日本共産党自然死の方向性は避けられない。
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〔関連ファイル〕
『じり貧的瓦解４段階経過と第５段階への転落結果』１９８０年～２００９年総選挙結果
『共産党の参院選結果８回分データ分析』議席数・得票数・得票率全面惨敗の真相