1994年頃、テレビ東京に「バレエ誕生」という番組がありました。
毎週土曜日の深夜午前2時から30分間の番組でした。
横浜市泉区にある「テアトルフォンテ」という劇場を借り切って撮影したものを中心に、日本のダンサーによるバレエの映像を毎週、2本位ずつ放送していました。
パ・ド・ドゥがほとんどでしたが、ソロの踊りや、公演のリハーサル等のドキュメントも混じっていました。
複数のカメラでダンサーを追い、アップして写すことも多くてダンサー動きや表情がよくわかり、とても楽しい番組でした。
ベテランのダンサーも出演しましたが、むしろ新人ダンサーの紹介という性格が強く、それがこの番組の新鮮な魅力でもありました。
「失敗したらどうしよう・・・」、「踊るのが精いっぱい」と、笑顔を忘れた新進ダンサーの余裕がない表情・・・、彼女達の緊張がひしひしと伝わってきます。
でも、それがかえって初々しい魅力をかもしだし、今後への期待を感じさせます。
汗びっしょりのなって、歯を食いしばって懸命に踊っている姿は、思わず「頑張って!!」と応援したくなるほど、とても初々しく爽やかでした。
夜中の2時という時間でしたが、私は楽しみで毎週のように見ていました。
当時スコティッシュバレエで踊っていた下村由理恵さんの若々しさ、デビューしたばかりのあどけなさの残る藤井直子さん、酒井はなさん・・・、
リトアニアに渡る前の初々しい浜中未紀さん、ペルミバレエ留学当時の可愛らしい真忠久美子さん・・・
など、今でも録画を手元に残して楽しんでおります。また、井上バレエ団の「くるみ割り人形」上演迄のドキュメントもあり、
高まるプレッシャーに、舞台を覗いたり、衣装を気にしたり、そわそわして落ち着かない藤井直子さんを、やさしく舞台へと
導くパトリックアルマンの微笑ましい姿なども収録されていて、いつ見ても心が和みます。いくつか、ご紹介します。
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白鳥の湖 | グラン・アダージョ | 岩田唯起子,高瀬浩幸 |
白鳥の湖 | グラン・アダージョ | 柳瀬真澄,志村昌宏 |
白鳥の湖 | 「黒鳥」のパ・ド・ドゥ | 森本由布子,関口武 |
眠りの森の美女 | パ・ド・ドゥ | 下村由理恵,篠原聖一 |
眠りの森の美女 | パ・ド・ドゥ | 佐々木三夏,呉竹伸之 |
眠りの森の美女 | ヴァリエーション | 真忠久美子 |
眠りの森の美女 | ヴァリエーション | 小林寿代 |
眠りの森の美女 | ヴァリエーション | 浜中未紀 |
眠りの森の美女 | ローズアダージョのヴァリエーション | 中平絢子 |
ロメオとジュリエット | バルコニーのパ・ド・ドゥ | 下村由理恵・篠原聖一 |
くるみ割り人形 | パ・ド・ドゥ | 藤井直子・森田健太郎 |
くるみ割り人形 | 「くるみ・・」上演までのドキュメント | ドキュメント |
ジゼル | パ・ド・ドゥ | 小山久美・長衛強 |
コッペリア | パ・ド・ドゥ | 藤田雅子・貞松正一郎 |
海賊 | パ・ド・ドゥ | 荒井祐子・平田貴義 |
海賊 | パ・ド・ドゥ | 高部尚子・樫野隆幸 |
海賊 | ヴァリエーション | 萩本美保 |
ドン・キホーテ | パ・ド・ドゥ | 渡辺美咲・山田秀明 |
ドン・キホーテ | キューピットの踊り | 青山季可 |
エスメラルダ | ディアナとアクシオンのパ・ド・ドゥ | 酒井はな・小嶋直也 |
ライモンダ | パ・ド・ドゥ | 井神さゆり・森田健太郎 |
パキータ | ヴァリエーション | 西川貴子 |
チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ | パ・ド・ドゥ | 伊藤範子・貞松正一郎 |
ラ・シルフィード | パ・ド・ドゥ | 斉藤由佳、ワジム・ソロマハ |
アルレキナーダ | パ・ド・ドゥ | 有光風花、樫野隆幸 |
パドカトル | パ・ド・カトル | 井神さゆり、藤井直子、田所いおり、中村明代 |
でもこの番組は、わずか一年あまりで、なくなってしまったのです。 確かに、毎回ステージを借り、ダンサーに出演料を払い、ビデオカメラなどの機器を運び込んで録画するのですから、手間も経費もかかるのでしょう。それに深夜2時という時間帯で、よほど注意していないと見落としてしまうし、あまり宣伝もなかったので視聴率も上がらなかったと思います。 また、それに加えて、主力スポンサーが倒産してしまったとかで、続けられなくなってしまったのでしょう。 ビデオを見るたびにこの番組を懐かしく思います。 |
バレエ誕生のタイトル画面 |
今では、女の子のお稽古ごとはバレエがピアノを抜いてトップになったそうですし、当時に比べると、バレエ愛好家はずっと増えていることでしょう。今なら、当時より、視聴率もずっと上がると思います。
テレビ東京さん、「バレエ誕生」を、是非復活して下さい。!!
また、もっと前になりますが、NHKでは、毎年正月に「新春バレエコンサート」と称して、日本のダンサーによるバレエの放送をおこなっていました。
「今年のホープ」とか「新春バレエコンサート」とか、年によって、サブタイトルは違いましたが、若手のバレリーナの競演だったり、バレエ団同士が得意の演目を競い合ったりで、毎年とても楽しみにしていました。
この中で、松山樹子さんがローズアダージョを踊られたのが今でも記憶に残っています。マーゴ・フォンティーンのローズアダージョのバランスにショックを受けたという彼女、徹底的に研究したそうです。アンオーまでしっかり腕をあげて
真剣な表情でバランスをとっていた姿が目に浮かびます。
でも、この番組もいつのまにか無くなってしまいました。
一方、同じ正月に、オペラ歌手の歌い初めとも言える「ニューイヤー・オペラコンサート」がありますが、こちらは今でもずっと続いています。私が学生の頃からやっていましたから、30年以上になると思います。
私はこの番組も好きで毎年見ることにしています。
最近のNHKはBS2で外国のソフトの放映はするものの、日本のバレエの放送が少なくなったように思います。
日本のバレエの公演の録画や、バレエの解説などの番組作りに消極的なような気がします。
かつては日本のバレエ団の公演を見に行くと、NHKテレビのカメラもこの公演をとらえていて、数週間後に放映されて、再度楽しめたということがよくありました。
CS放送の「クラシカジャパン」では、結構積極的にバレエ番組を放送してくれていますが、やはり、外国で収録されたビデオの放送で、日本のバレエ団のものを見たことがありません。
こんな中で、少し前ですがCS「シアターTV」が牧阿佐美バレエ団の「くるみ割り人形」、BS「BSフジ」がスターダンサーズバレエ団の「ドラゴンクエスト」を放送してくれたのは有り難いことです。
日本にも、外国とひけをとらない優れたのダンサーもいるし、バレエ団もあります。
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