2007年5月はこの3公演

 


あひるなんちゃら「屋上のオフィス」

王子小劇場 5/4〜5/6
5/4(金・祝)ソワレ観劇。座席 自由(無料:8列目中央)

作・演出 関根俊介

 舞台はビジネス街にある、とあるビルの屋上。そこにはオフィスルーフと呼ばれる会社があった。そこでは小岩(黒岩三佳)と谷村(関根俊介)の二人の社員が、社長からの手紙を元に、黙々とでもなく、ガヤガヤとでもなく、働いていた。でも、たった1つだけその事務所には欠点があった。それは、屋根がないことだった(屋上なので)。だから、雨の日は仕事にならないので休業になったりする。小岩は、隣のビルの給湯室で、裸のおっさんを見つけたり、自動販売機のおつりの穴から裸のおっさんを見つけたりしながらも、仕事をこなしていた。ある日、下の階の森崎商店の社員・梅津(根津茂尚)が手紙を届けに来る。それからというもの何故か毎日にように屋上に来ては、居座るようになってしまった。そして誰も要求していないのに、勝手に屋根の必要性を訴えるプレゼンまでする始末。あげくの果てには会社を辞め、転職したいと言い出すのであった・・・。というようなオフィスをゆっくり描く、ダラダラ駄弁芝居、60分。

 あひるなんちゃらは2003年3月に結成されたユニット。私は、今回で2回目の観劇になるが、独特の空気を有する劇団である。現代口語調とかよく耳にするが、この劇団に関しては“あひるなんちゃら調”とでも勝手に書いてしまうが、独特のリズムを持っている。でも、あくまでもヌルくてユルい。そして、華麗なるボケとツッコミ。でもって、微妙にズレていく会話の先には結局なにもなかったりする。そんな芝居である。今回は『0(ゼロ)円 プライスレス お金で買えないあひるなんちゃらがいる』と題しての無料公演。なんたる無謀。でも500円とかにしないで無料に踏み切るのは潔いと思う。で、芝居の内容は上記の通りにヌルくてユルいけど、そのボケ倒すテンポとか、結局なにも生み出さない展開とか、癖になる面白さなのである。初めて観た時はどんな芝居なのかわからず(その空気がわからず)正直戸惑った。でも2回目の今回はそのヌルさ故の面白さを堪能できた。素晴らしい。

 でも、この可笑しさは一般的ではないと思うのだが、どうだろう。今回は、無料なので芝居を観たことがない人も来ていると思う。その人達が面白いと感じてリピートしてくれればいいのだけど・・・って関係者でもないのに心配したりして。


“あひるなんちゃら”自分が観た公演ベスト
1.屋上のオフィス
2.UFOcm

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害獣芝居「うた咲き、」

渋谷ギャラリー ル・デコ5F 5/1〜5/6
5/5(土・祝)ソワレ観劇。座席 自由(招待:前列中央)

作・演出 浅沼ゆりあ

 白を基調とした舞台。詩による世界の構築ということでか、床には散りばめられた本の頁ように白い紙が敷かれている。何かが書かれている(だろう)紙は、結ばれた状態になっている。その一枚一枚の紙の置き方、紙の端の折れ方にこだわりが見える。

 例によって開場から役者は舞台上にスタンバっていて、本(詩集)を読んでいる。開場から“静”の演技を強いられるのである。これってキツクないのか?といつも思う。まったくの想像なのでこっそり言うが、“演出の浅沼ゆりあはドSかもしれない・・・”という思いが頭をよぎる(本人が読んでいませんように・・・)。でも、それは、会場に入った時点から別世界であり、現実ではない世界に浸って欲しいという気持ちの現われだろう、と勝手に想像する。そこに、芝居に対する妥協のない姿勢を感じて止まない。ただ、動きのない演技ってツラそうで・・・。

 舞台は、「人は一番目に言いたいことは言えない。一番言いたいことは歌(詩?)になって表現される」みたいな(正確には記憶していません。ごめんなさい)ことを言って、4人の少女は、宮澤賢治、中原中也、島崎藤村などの詩を奏で始める。4人の言葉が時には重なり合いハーモニーとなる。そして、一つの世界を構築していく・・・。

 芝居とは言えない、かと言ってダンスでもない、かと言って単なる朗読劇でもない。摩訶不思議な舞台であった。チラシの文を引用すると“「人と、人と、言葉と」をテーマに最も美しく響き合う空間を目指した”とある。この件に関しては成功していたと思う(でも重なりあった時の言葉がちょっと頭に響き過ぎたけど・・・)。しかし、舞台にドラマツルギーを求めてしまう自分は、“4人の少女は一体何者か?”という疑問を抱いてしまう。命の儚さみたいな詩を聞くと、その背負っている背景を知りたくなってしまう。“少女の時期は儚いもの”ということを暗示しているという捕らえ方もできなくはないが、なんか釈然としない。例えば4人は死んでしまった少女で、そこは黄泉の国でもいい。又は、4人は“雨の精”みたいな存在で、雨音のごとく詩を奏でる。普段人間の耳には雨音にしか聞こえないが、耳を澄ませばそこで語られているものがある・・・みたいな。演出の意図とはまったく違うと思うが、そんな設定があってもいいのではないかと思ってしまう。
 “浅沼ゆりあの世界”は構築できていたと思う。しかし、それが観客にはバラバラに伝わっているのではないだろうか。どう受け取るかを観客に委ねるのもいいが、その世界観をもう少し目に見える形で伝えてもいいのではないか。いや、むしろ伝えて欲しかった。そんな後味で劇場を後にした・・・。


“害獣芝居”自分が観た公演ベスト
1.銀河鉄道
2.邪宗門
3.うた咲き、

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Hula-Hooperの部活動「鱈。」の(ふ)

渋谷7thFloor 5/7と5/16
5/7(月)観劇。

作・演出 菊川朝子

申し訳ありません。まだ書けていません。

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げんこつ団「失神」

タイニイアリス 5/17〜5/20
5/19(土)マチネ観劇。座席 自由(4列目下手:招待)

作・演出 吉田衣里
演出助手 植木早苗

 仕事が終わったところで自殺するOLの話/サラリーマンが過去のものとなりマニア化した社会(手には“オフィケ”の紙袋が…)の話/派遣の“プロのお父さん”が行った家庭にはプロのお母さん、プロの息子がいた…本物の家族って何って話/神が運営するカンパニーの話/おちゃらけ者の授業からみる社会に必要な人材教育とはの話/秘密の総理ちゃん/ミッキーマウス(実は世襲制だった…)の息子の苦悩の話・・・などなどを、映像を挟みつつ綴る短編集。
 今回は「“演劇”には他にもこんなものもございます。お好きなものはございましょうか?」と当日パンフに書かれてあるように途中で同時上演が挟まれる。
・ゴー・ダッシュ・ゴー「キミの宇宙のソラになれ」(B級以下なSF芝居)
・トルディアンザッハムーンアラルディ「Doll」(暗黒系のわからない芝居)
・スター☆ダスト「MAKE A DREAM」(B級以下なミュージカル)
と小劇団を小馬鹿にしたもの3作も上演。

 いろいろ詰め込んでの約2時間。良くも悪くも、いつものげんこつ団である。振り返ると、げんこつ団を観はじめてから早いもので、10年が経過してしまった・・・。その間、スタイルが全然変わっていないのは、自分達の表現方法に自信を持っている証しであろう。マジ凄いと思う。ただ、今回はちょと上演時間を長く感じてしまった(体感時間では2時間以上だった…)ので、上記の“同時上演”は余計だったと痛感する。正直つまらなかったし。こういう物を挟むという笑いのセンスは自分には理解できないところである。面白いと認識して挿入したのなら、明らかに“げんこつ団の劣化”ではないだろうか。上演時間が短いと感じて挿入したのなら、まったくの無意味、無駄骨である。いやそれどころか本編を台なしにする要因となっていたので、必要悪とでも言った方がいい。いやそれ以下か。オープニングの「仕事が終わったところで自殺するOLの話」とか、倫理に反したような展開にゾクゾクしたのに、残念でならない。ミッキーマウスの息子の話にしても、息子が常に鼻をいじっている(実はミッキーだけが鼻を動かせる)など、細かな点まで描いているのに、つまらなさで霞んでしまったような気がする。・・・あっ、でも、一つ強烈に印象に残ったのがあった。天皇陛下のキーホルダー・・・紐を引っ張ると「がんばってくださいね」と、声まででる・・・。いいのか、そんなことしてって思った。すげー面白かったので個人的にはマルなんだけど・・・。

 そんな無防備で無茶苦茶な(でも主義、主張はない)ダークな世界を描かせたら、最高なのに、今回はつまらない同時上演のおかげで、公演全体の印象までも“つまらない”と感じてしまう結果となってしまった。新しいものを取り入れる姿勢は買うが、もっと吟味して欲しかった。せっかくタイニイアリスという、どちらかと言うとアンダーグラウンド的な場所での公演なのだから、とことんダークな世界に浸りたかったという気持ちも強かった(個人的には)・・・。

 次回は“世界一の喜劇”の名に恥じぬ公演を期待したい。


“げんこつ団”自分が観た公演ベスト
1.げんこつ対げんこつ
2.ドミノバキューム
3.ガスダム
4.キリマンジャロタンゴ
5.バー
6.パンチ
7.ジャンボリー
8.ゴールデン
9.大拳骨祭
10.ルール
11.トランポリン
12.失神
13.蛇腹
14.
15.真空ドリル
16.外半球
17.ショク
18.印(いん)
19.バカ1990-1999

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