綱領全面改定における不破哲三の四面相
２００４年、改定綱領と討論・代議員選出システム
不破綱領は国政選挙６連続惨敗脱出のバイブルになり得るか
(宮地作成・２００８年加筆改定版)
〔目次〕
はじめに－不破綱領を国政選挙６連続惨敗脱出のバイブル化する大運動
４、市場経済と社会主義とを接着させる「社会民主主義」者的「革命」家
(関連ファイル) 健一MENUに戻る
共産党日本共産党index 『しんぶん赤旗』 「新綱領」 「新規約」
不破哲三『綱領改定についての報告』(全文)
志位和夫『大会決議案についての報告』(全文)
『規約全面改定における放棄と堅持』２０００年第２２回大会
『「削除・隠蔽」による「堅持」作戦』２０００年第２２回大会
『不破哲三の体質』ファイル多数
中野徹三『古い教条とあたらしい現実との谷間で』日本共産党の改定綱領を検討
加藤哲郎『日本共産党が新綱領採択――現実政治への影響力は疑問（2004/1）』
Google検索『日本共産党 綱領』
はじめに－不破綱領を国政選挙６連続惨敗脱出のバイブル化する大運動
〔小目次〕
２、不破綱領の歴史的位置づけ－７番目の日本革命規定文書・綱領
１、不破綱領を国政選挙６連続惨敗脱出のバイブル化する大運動
２００８年、日本共産党は、衆参院の国政選挙において、６連続惨敗中である。このままでは、２００９年９月任期までに行われる次回総選挙において、国政選挙で７連続惨敗をする確率が高まっている。私の総選挙次回５回目シミュレーションでは、衆院選２６議席→２０議席→９議席→９議席→(７議席)である。日本共産党の歯止めのないじり貧的瓦解はさまざまなデータで証明されてきた。
『２００６年第２４回大会時点の党勢力の実態データ』あらゆる分野でのじり貧的瓦解
『チベット問題を批判できない、しない日本共産党』次回総選挙で９→７議席惨敗シミュレーション
志位・市田・不破らは、次回総選挙に向け、そこから脱出できる方策を、必死で手探りしている。その一つが、２００７年７月、５中総が決定し、大宣伝している「綱領を語り、日本の前途を語り合う大運動」と、その具体的形態としての「綱領を語る集い」である。
この運動と集いの実態と経緯を見ると、その性質は、国政選挙７連続惨敗をさせないために、不破綱領をバイブル化しようとする大運動と言える。ちなみに、バイブル化大運動は、国際的にレーニン『国家と革命』に次ぐ２番煎じ目となる柳の下のどじょう策謀でもある。
加藤哲郎教授は『東欧革命と社会主義』(花伝社、１９９０)で、マルクス、エンゲルス、レーニンを比較検討した、本格的で詳細な『国家と革命』批判を展開している。これは、不破哲三のレーニン批判(２０００年)の１０年前である。その一節だけ引用する。
レーニンは、一九一七年八～九月、ロシア革命の渦中で書いた。それは、「マルクス主義の国家学説と革命におけるプロレタリアートの諸任務」と副題され、一八四七年以降、七〇年間のマルクス主義国家学説をあとづけ、理論的に整理し、実践的に方向づけている。いわば、「思想・運動としての社会主義」の国家論的総括がおこなわれている。それは、ロシア革命の勝利後、指導者レーニンの名声に支えられて、スターリンの支配する時代に、マルクス主義国家論のバイブルとされた。
一九六〇年までに、ソ連国内で、四六の言語で一八八回、総計六五五万部が刊行されたほか、世界の多くの言語に翻訳され、普及していった（国民文庫版新訳『国家と革命』、一九六五年、一八〇～一八一頁）。しかし、『国家と革命』で唱えられていたこと、「プロレタリアートの独裁」が「半国家」であり社会主義のもとでは「非政治的国家」から「国家の死滅」に向かうという構想は、実現されなかった。現実に存在するロシア・ソヴェト国家は強大化する一方で、官僚制化、党と国家の癒着、参加と民主主義の形骸化、労働者・民衆への抑圧が、常態化していった。第二次世界大戦後、ソ連の外へと広がった、現存社会主義の他の国々でも、同様であった(Ｐ．１１１)。加藤哲郎は『一つの国家論入門』でも、『国家と革命』批判を行っている。
加藤哲郎『一つの国家論入門』『国家と革命』の理論的検討と批判
『スターリンは悪いが、レーニンは正しい説の検証－レーニン神話と真実１～６』
『レーニン「国家と革命」の誤り』ファイル多数
wikipedia『ウラジミール・レーニン』
２００４年１月、第２３回大会は、全面改定綱領を決定した。それ以降、志位和夫は、綱領の学習を訴えてきた。
２００４年８月、２中総は、参院選惨敗総括をし、「党を語る大運動」を決定した。
２００７年１月、３中総は、綱領の持つ生命力を強調し、「綱領の学習と討議」を訴えた。
不破哲三『綱領改定についての報告』(全文) 『３中総』 『４中総』
ところが、不破哲三の全面改定綱領によって、大躍進するはずだった２００５年総選挙と２００７年７月参院選で、共産党はいずれも惨敗し、国政選挙６連続惨敗結果となった。不破綱領策定の思惑は外れた。そこで、民主集中制の放棄などという基本戦略大転換をしないままで、７連続惨敗をしないような絶妙な決め手や戦術はないか。それが５中総以降の方針となった。
〔２００７年９月、５中総〕
志位・市田・不破らは、参院選全面惨敗を認めないままで、欺瞞的な総括をした。そして次回総選挙に向け、２つの方針を出した。(１)、総選挙小選挙区立候補者を３００→約１４０に激減させる。その一方、比例代表候補者は激増させる。その原因は、党中央と３１６地区が３００人を立候補させ、選挙活動をする選挙財政破綻と選挙体制の疲弊である。これら戦略転換を拒絶したままの数量的戦術転換だけで、次回総選挙の比例代表議席を９→１０数議席に躍進させる。
『じり貧的瓦解への道＝参院選総括・総選挙方針』欺瞞的な参院選惨敗総括と党員の反応
共産党『５中総』０７年９月 『比例代表候補者７３人』
(２)、「綱領を語り、日本の前途を語り合う大運動」を提起し、その具体的形態として「綱領を語る集い」を呼び掛けた。国政選挙における不破綱領の効力なさが、連続惨敗結果によって証明された事実に目をつぶっての方針である。
(３)、志位和夫は、５中総で、党費納入率が６３％に激減したと、共産党内部瓦解の危機感を込めて報告した。そこから、じり貧的瓦解度合と党員実数を推計する。第２４回大会は、２００６年１月で、公表在籍党員４０４２９９人だった。となると、党費納入党員は、４０４２９９人×６３％≒２５４７０８人となる。行方不明・長期未結集党員と、党機関による離党届受付拒絶による党費納入拒否党員との合計は、１４９５７１人になる。よって、２００８年現在、日本共産党の実数は、党費納入をしている約２５万人にじり貧的瓦解をしている。
危機感の表れという意味は、中央委員会が党費納入率を公表したのは日本共産党８６年史上初めてだからである。志位和夫は、ことあるごとに、入党者が増えた増えたと報告している。しかし、党費納入拒否などで減った党員数には沈黙・隠蔽している。
現実は、(１)共産党後援会員レベルで、日刊紙も購読しようとしない入党者が数千人増えても、(２)それを上回る規模で、志位・市田・不破共産党の犯罪的組織原則体質や不破綱領批判、国政選挙６連続惨敗の欺瞞的総括批判の党員が逆に増え続け、(３)それらが支部会議不参加や選挙運動・党勢拡大運動サボタージュ党員となり、さらに、(４)党機関による離党届受付拒絶による党費納入拒否党員に転化している。そこから、党費納入率は、差し引きで、減り続け、１９６１年宮本綱領以降で最低の６３％・２５万人に内部瓦解をしてきた。
〔２００７年１２月、幹部会〕
志位和夫は、(１)「大運動と集い」が、１２月で２５３６回・７６０００人が参加したと報告した。集い開催支部は１１．６％である。
一方、(２)前回総選挙２００５年９月比較で、日刊紙９．５％減紙、日曜版１０．２％減紙だとし、このままでは０５年総選挙より後退していると、党勢拡大を強調した。
ところが、２００６年１月、第２４回大会において、志位和夫は、どう報告したのか。彼は、前回総選挙２００５年９月比較で、日刊紙５．６％減紙、日曜版６．７％減紙だとし、このままでは０５年総選挙より後退していると、危機感を表明した。党大会からこの幹部会までは、２３カ月間＝約２年間ある。この「しんぶん赤旗」大量減紙傾向・テンポは、まさに歯止めが掛からなくなった。
前回総選挙２００５年９月以降、２００６年１月第２４回大会までのわずか４カ月間で、日刊紙５．６％減紙、日曜版６．７％減紙した。その党大会から幹部会までの２３カ月間において、日刊紙５．６％－９．５％＝さらに３．９％減紙、日曜版６．７－１０．２＝さらに３．５％減紙となったことになる。
これは、赤旗読者が、時代錯誤綱領を掲げる志位・市田・不破共産党から大量離脱・「逃散」する連続傾向が広がっている事実を証明した。それと同時に、党費納入２５万党員においても、党内民主主義を抑圧する犯罪的組織原則・民主集中制に、自己保身目的だけからしがみ付く志位・市田・不破指導部への批判・抵抗が深部で増大した。内部からの党勢拡大運動拒否と重なり、不破綱領を読まない、読む気も起きないという下記９万人もひそかな党内批判勢力をなしている。
なぜなら、(１)支部・地区における批判発言は、専従から逆批判されるか、(２)党中央宛の単独垂直意見書は、単なる個人的な誤った見解として握りつぶされて終わりとなる。(３)さらには、離党届か離党口頭発言をしても、党機関が離党届受付拒絶をするので、その党員たちは、党費納入拒否党員への決断をするからである。志位報告は、読者連続大量離脱と共産党員内部崩壊＝日本共産党システムがじり貧的瓦解になってきたという現象を象徴的な数字として示しているデータとなった。
赤旗ＨＮ読者は、共産党からの大逃散が続いている。すべて党大会報告数値だが、２００７年１２月数値は、幹部会志位報告の％データに基づく推計である。１９８０年をピークとし、２８年間にわたって、一度も増えた党大会がなく、一貫して減り続けている。３５５万部－１４７万部≒２０８万人、５８．6％読者が、共産党から大量離脱した。この減紙データからは、今後とも、赤旗ＨＮ部数が、党大会時点で増える見通しは絶無と断定できる。
(表) 歯止めのきかない党勢力減退＝大量離脱
|
年 |
８０ |
８２ |
８５ |
８７ |
９０ |
９４ |
９７ |
００・９ |
04･１ |
06・1 |
07.12 |
|
大会 |
１５ |
１６ |
１７ |
１８ |
１９ |
２０ |
２１ |
２２ |
23 |
24 |
幹部会 |
|
ＨＮ |
３５５ |
３39 |
３17.7 |
３17.5 |
２８６ |
２５０ |
２３０ |
１９９ |
173 |
164 |
(147) |
|
内Ｈ |
５４ |
５０ |
４０ |
３５ |
(30) |
(28) |
(25) |
||||
|
内Ｎ |
２３２ |
２００ |
１９０ |
１６４ |
(143) |
(136) |
(122) |
||||
|
増減 |
－16 |
－21.3 |
－0.2 |
－31.5 |
－36 |
－20 |
－31 |
-26 |
-9 |
-17 |
〔２００８年３月、幹部会〕
志位和夫は、中央委員会総会を開かないままで、綱領と情勢が響き合うと幹部会で規定し、(１)「大運動」が９４８０回・参加２２万人、３３．２％支部開催になったと報告した。これは、党中央書記局が、３１６地区・４７都道府県委員会にたいし、選挙時レベルのような週報・月報の集約体制確立を指令し、数字追及・全党的点検体制を採っての結果数字である。
ただし、(２)党員の綱領読了率がまだ３９．９％と報告した。綱領決定の４年２カ月後になっても、６０．１％党員が綱領を読まない政党の実態をどう考えたらいいのか。
綱領読了党員は、公表在籍党員で見ると、４０４２９９人×３９．９％≒１６１３１５人しかいない。党費納入党員で見ても、不破綱領を読了していない、読む気もしない党員が、約２５万人－約１６万人≒９万人もいる。よって、不破綱領のバイブル化大運動とは、党外の有権者向けというよりも、次回総選挙に向けた、選挙財政破綻・立候補者リストラ政党による党内思想教育・引き締め大運動戦術ともなっている。
２、不破綱領の歴史的位置づけ－７番目の日本革命規定文書・綱領
不破綱領を、国政選挙６連続惨敗脱出のバイブルにする大運動を見る上で、その歴史的位置づけをしておく。というのも、不破綱領は、日本革命の規定文書・綱領の７番目というだけでなく、ソ中両党からの指令・干渉、それへの隷従がない初めての自立製綱領になるからである。
日本共産党は、(１)１９２２年結成時点から、国際共産党・コミンテルン日本支部であり、(２)コミンフォルム時期もソ中両党への隷従政党だった。それは、ソ連共産党との上下関係、および、その後のソ中両党との国際的関係が、Democratic Centralismという上意下達・鉄の軍事的規律下にあったからである。
自主独立政党になったのは、ソ中両党からの日本共産党攻撃・干渉を拒絶し、ソ中両党と決裂した１９６７年から６８年である。よって、下記〔第６段階〕の１９６１年宮本綱領内容までも、ソ中両党が出した綱領路線に関する秘密指令の影響を受けていた。これらの経緯を検証すると膨大になるので、このファイルでは、簡単な一言とリンクだけにする。
〔小目次〕
〔第１段階〕、１９２２年の日本共産党綱領
〔第２段階〕、１９２７年テーゼ、３２年テーゼというコミンテルン製日本革命指令綱領的文書
〔第３段階〕、１９５１年綱領＝コミンフォルム製・スターリン執筆証明の武装闘争への転換指令文書
〔第４段階〕、１９５５年六全協で、スースロフ秘密指令によるスターリン綱領の正しさ承認決議
〔第５段階〕、１９５８年宮本綱領案－第７回大会代議員４０％による不支持と採決延期
〔第６段階〕、１９６１年宮本綱領－ソ中両党隷従下における反帝反独占の２段階革命綱領
〔第７段階〕、２００４年不破綱領－資本主義の枠内での改革とは、民主主義革命のことという革命綱領
〔第１段階〕、１９２２年の日本共産党綱領
この内容と成立経緯は、加藤哲郎が研究している。
〔第２段階〕、１９２７年テーゼ、３２年テーゼというコミンテルン製日本革命指令綱領的文書
２７年テーゼと３２年テーゼは、内容、背景とも異なる。それらの内容とコミンテルン日本支部の実態・実践については、リンクにある。戦前共産党の崩壊原因として、(１)特高の弾圧という原因だけでなく、(２)共産党自体の方針・実践の誤りにより、かつ、(３)スパイ査問事件などにより、共産党は内部崩壊したとする研究がいろいろ出版されてきた。これらは逆説の戦前日本共産党史である。
『「非常時共産党」の真実──１９３１年のコミンテルン宛報告書』
中野徹三『いわゆる「自由主義史観」が提起するもの』「３２年テーゼ」批判も
『１９３０年代のコミンテルンと日本支部』志位報告の丸山批判
「反戦平和でたたかった戦前共産党」史の偽造歪曲
〔第３段階〕、１９５１年綱領＝コミンフォルム製・スターリン執筆証明の武装闘争への転換指令文書
スターリンは、彼の執筆が証明されている武装闘争・暴力革命の日本共産党綱領を、モスクワにおいて、５０年分裂時点の北京機関幹部・主流派幹部と中国共産党幹部を招集し、決定した。当時、国際派として排除されていた宮本顕治は、この綱領をスターリンによって押し付けられたとし、かつ、武装闘争＝朝鮮侵略戦争に「参戦」した統一回復日本共産党の実態を隠蔽するために、これを５１年綱領と呼ばないで、「５１年文書」という日本語にすり替えた。
(１)スターリン綱領と、(２)劉少奇テーゼ＝植民地型暴力革命路線に基づく実践が、朝鮮侵略戦争「参戦」となる日本共産党の武装闘争路線として遂行された。
『逆説の戦後日本共産党史－朝鮮侵略戦争と武装闘争路線』ファイル多数
〔第４段階〕、１９５５年六全協で、スースロフ秘密指令によるスターリン綱領の正しさ承認決議
１９５５年７月、モスクワで事前準備された六全協が開かれた。スースロフ・毛沢東らは、六全協の草案・人事案をすべて事前決定した。モスクワ会議指令に基づく六全協とは、朝鮮侵略戦争に「参戦」の武装闘争によって、党員９０％が離党し、ほぼ壊滅した日本共産党を再建するための国際的干渉会議だった。朝鮮侵略戦争は、ソ中朝３党・社会主義３カ国の事実上の敗戦だった。それにより、日本は、社会主義３カ国の鼻先に突きつけられた“浮沈空母”となり、社会主義国家の存続を掛けた最大の脅威に浮上した。その日本において、アメリカ帝国主義とたたかわせる勢力として、崩壊した日本共産党を再建する必要性が、フルシチョフ・毛沢東・金日成らにとって、緊急課題となった。
崩壊した日本共産党を再建するには、朝鮮侵略戦争への「参戦」という戦争行動の犯罪的誤りを、なんらかの日本語で認めなければならなかった。モスクワ会議のソ中両党と北京機関・軍事委員会メンバーは、戦争「参戦」犯罪の本質を隠蔽するために、「極左冒険主義の誤り」というイデオロギー面だけの日本語でごまかした。
しかし、モスクワ会議で、スースロフは、５１年綱領は正しかった、と六全協決議に入れろと命令した。ソ中両党の秘密人事指令によって、六全協で、非中央委員から、いきなり常任幹部会責任者に国際的任命をされた宮本顕治も、その国際的命令に隷従した。
『嘘つき顕治の真っ青な真実』五全協共産党で中央レベルの活動をした証拠
『朝鮮戦争と武装闘争責任論の盲点』朝鮮侵略戦争に「参戦」した統一回復日本共産党
〔第５段階〕、１９５８年宮本綱領案の第７回大会代議員４０％による不支持と採決延期
六全協トップは、野坂参三第一書記・ソ連ＮＫＶＤ工作員、志田重男元党中央軍事委員長、宮本顕治常任幹部会責任者ら３人だった。しかし、宮本顕治は、(１)志田重男の武装闘争時期における料亭「お竹さん」に関する軍事費数千万円流用疑惑をリーク・暴露させ、彼を失踪・解任→除名に追い込んだ。また、(２)野坂参三を「愛される共産党アイドル」として演説専任弁士に祭り上げた。
レーニン死後のスターリンによるライバル排除・粛清・銃殺手口と同じく、徳田死後の宮本顕治は、(３)ソ連ＮＫＶＤ工作員袴田里見を党内粛清者として利用し、瞬く間に、党内実権を握った。袴田が、ソ連ＮＫＶＤ工作員だったという真相については、不破哲三が『日本共産党にたいする干渉と内通の記録－ソ連共産党秘密文書から・下』(Ｐ．３６４)において、袴田ファイルに基づく証拠として、「袴田はソ連内通者だった」と具体的に証言している。
宮本顕治は、最高権力者としての人事権を駆使し、宮本秘書団私的分派を創り出すことに奔走した。六全協後、５１年スターリン綱領に代わる新綱領と新規約作成への党内要求が高まっていた。綱領内容をめぐる党内討論が盛り上がった。(１)宮本顕治による反帝反独占の２段階社会主義革命論以外に、(２)反独占の社会主義革命論や、(３)構造改革理論が出された。宮本顕治は、第７回大会に、宮本綱領を提出したが、他綱領意見も多く、代議員４０％がそれに反対した。党大会は、新規約だけ承認し、新綱領案の採決ができなかった。
小山弘健『６１年綱領採択めぐる宮本顕治の策謀』第７回大会から第８回大会
〔第６段階〕、１９６１年宮本綱領－ソ中両党隷従下における反帝反独占の２段階革命綱領
宮本顕治・宮本秘書団私的分派グループと、ソ連ＮＫＶＤ秘密工作員・幹部会員袴田里見らは、同一内容綱領を決定させるために、あらゆる党内犯罪手口を駆使し、(２)反独占社会主義革命論代議員や、(３)構造改革論代議員たち４０％全員を排除した。それは、党内クーデターの性質を持った。その手口は、(１)党内地位をえさにした説得に留まらず、(２)規律違反でっち上げによる査問・除名や、(３)意図的な党内任務変更・降格、(４)専従解任を伴った。反対・批判代議員の４０％は一人残らず、排除か党内地位のえさ説得によって、いなくなった。かくして、宮本顕治は、満場一致大会を強引に成功させた。以後、スターリン型満場一致大会が、今日まで続いている。不破哲三も、それら満場一致大会の手口を踏襲している。
日本共産党は、１９６７年～６８年まで、一貫したソ中両党隷従政党だった。六全協直後に志田・椎野を排除・除名した後の党中央体制の実権は、(１)野坂参三第一書記・ソ連ＮＫＶＤ秘密工作員、(２)宮本顕治常任幹部会責任者→書記長、(３)袴田里見常任幹部会員・ソ連ＮＫＶＤ秘密工作員→副委員長ら３人が握った。宮本顕治は、ソ中両党の秘密人事指令によって、六全協において、非中央委員から常任幹部会責任者に国際的任命をされたばかりだった。ソ中両党は、人事権行使・命令だけでなく、１９５８年宮本綱領案→６１年宮本綱領の路線にたいし、どんな命令を出したのか。
３人とも死去したので、６１年綱領路線に関するソ中両党の国際的秘密指令内容は、墓場まで持ち込まれてしまった。ただ、当時の国際情勢や綱領決定論争について、ソ連崩壊後で推測できることがある。ただし、以下を証明する証拠はもはや出てこない。
日本共産党再建者のソ中両党にとって、ソ中朝３党の鼻先に突き付けられ、不沈空母化され最大の脅威となった日本において、再建日本共産党の国際的任務と綱領路線方向は、アメリカ帝国主義を主敵とする綱領＝反帝を絶対に入れなければならなかった。ソ中両党は、宮本綱領案が、反帝というアメリカ帝国主義主敵テーゼを背後に回し、(２)反独占社会主義革命論や、(３)構造改革論になることを絶対に許さなかった。ソ中両党は、野坂・袴田らソ連ＮＫＶＤ工作員２人もフル稼働させ、(２)(３)代議員４０％を一人残らず全員排除をする党内クーデターを指令し、全面支援した。
これが、宮本綱領路線の隠蔽された国際的本質である。ただし、別ファイル３つは、ソ連崩壊前のデータなので、綱領路線にたいする国際的指令内容や背景は書かれていない。
宮本綱領とは、１９５８年宮本綱領案の４０％代議員不支持→１９６１年満場一致決定に至る党内クーデター３年間の偉大な成果だった。となると、宮本綱領の本質は、２７年テーゼ・３２年テーゼというコミンテルン製綱領的文書と異なるにしても、やはりソ中両党隷従綱領路線となる。よって、宮本綱領路線の内容、および、綱領路線論争に関する党史記述内容そのものが、ソ中両党による国際的任命者・ソ中両党隷従者・党内クーデター指揮者宮本顕治と、ソ連ＮＫＶＤ工作員２人による恐るべき党史偽造歪曲犯罪となるのではなかろうか。
〔第７段階〕、２００４年不破綱領－資本主義の枠内での改革とは、民主主義革命のことという革命綱領
不破綱領の内容、レベル、満場一致大会の手口については、以下５つのテーマで分析した。
中野徹三『古い教条とあたらしい現実との谷間で』日本共産党の改定綱領を検討
加藤哲郎『日本共産党が新綱領採択――現実政治への影響力は疑問（2004/1）』
１、不破哲三の引き裂かれた、矛盾する人格
〔小目次〕
２、他に２つの目的
３、改定綱領討論と代議員選出における党内民主主義抑圧システム
このファイルは、全面改定綱領内容に関する逐条的分析ではない。主な４つのテーマのみを検討する。というのも、４３年ぶりの改定綱領は、相矛盾する理論を一つの器に入れようとした、驚くべき非科学的な論理構成になっているからである。それだけでなく、その討論と党大会代議員選出システムが、これまた、６１年綱領採択における宮本顕治の満場一致大会策謀を引き継ぐ、反民主主義的なやり方でなされたからである。
このファイルは、改定綱領検討であるとともに、不破哲三の思想・理論と人格分析になっている。そこには、その内容と中心執筆者にたいする私の見解がある。たしかに、常任幹部会委員２１人が承認し、中央委員・准中央委員１６６人が３日間の討論を経た上で、全員一致の決定をした。それにもかかわらず、私は、改定綱領を、不破哲三の個人的政治論文レベルのものと判定する。
そのような判定をした根拠は、形式上の正規な決定手続きをしたとしても、改定綱領の思想・理論傾向は、不破哲三が、１９７７年の第２１回大会で、宮本顕治の引退強要と宮本私的分派・側近グループの解体措置に成功して以来、諸報告・講演・著書で打ち出してきた個人的見解を、集約的に表現した内容になっていることである。
もう一つの判定根拠がある。党内民主主義を抑圧・破壊する民主主義的中央集権制の下で、現在の日本共産党は、常任幹部会独裁システムになっている。その２１人のメンバーリストを見てもわかるように、不破哲三・上田耕一郎レベルの思想・理論幹部は払底している。志位和夫は、とても理論幹部と認定できるレベルにない。そこで、このファイルでは、改定綱領＝不破哲三の個人的政治論文とも見なし、不破哲三分析を合わせて行う。
新日本出版社『不破哲三の本－９０冊リスト』
第一、時代錯誤的な「民主主義革命」「社会主義革命」路線を踏襲
不破哲三は、国際的に稀少価値を持つ、残存するレーニン讃美者である。その面から、(１)改定綱領は、６１年綱領の「革命」路線を引きずっている。いきなり、「科学的社会主義」を全面放棄し、社会民主主義路線に大転換するとなると、党内に大混乱が起き、党分裂の危険、さらには、日本共産党消滅・解党のおそれも出る。不破・志位・市田らは、自己保身から、それをする勇気を持ち合わせていない。もっとも、(２)改定綱領の本質は、社会民主主義路線への転換である。しかし、(３)それではあまりにも剥き出しで、党内の反発を買うので、自分も信じていない「グローバリズム時代における日本一国だけによる社会主義革命幻想」を、空想的社会主義ユートピアとして、最後に添付して、描いたとする見方もできる。
第二、「社会民主主義」路線・政策の新規導入
いずれにしても、６１年綱領型情勢分析と路線は、４３年前の社会主義世界体制全盛期のもので、ソ連など１４カ国の社会主義国家とその革命路線を理想としたものなので、そのまま継承することはできない。東欧革命・ソ連崩壊後、地続きのヨーロッパにおいて、コミンテルン型共産党は、ポルトガル共産党を除いて、終焉を迎えた。ソ連・東欧を含むヨーロッパで、マルクス・レーニン主義、および、共産主義の妖怪は、ほぼ絶滅した。妖怪の生誕地からはるか離れた東方で、２１世紀に生き残るには、新しい衣替えが絶対必要条件になった。
しかも、宮本顕治の私的分派・側近グループ体制から、不破・志位・市田らの新体制に転換したことを証明するためには、綱領全面改定という不破哲三のアイデンティティ宣言が、どうしても必要となった。彼は、その内容として、(１)「資本主義の枠内での変革」という社会民主主義路線を、(２)レーニン型社会主義革命論との整合性を必死に探りつつ、２つの混合・折衷型綱領を生み出した。鎧の上に新しい衣、または、社会民主主義衣の下に旧態然とした革命鎧を隠した改定綱領とでもいえる。混合物である以上、その一方だけで判定することは危険である。しかし、２つの混在割合とその分離性・融合性を見分けることは、日本共産党きっての理論家と自他ともに認める不破哲三が、必死に創作した２１世紀型政治論文なので、至難の技である。
２、他に２つの目的とつまずき２つ
４３年ぶり綱領全面改定という衣替えは、他に２つの目的を持っている。
〔他の目的１〕、１９８０年の党勢力ピーク以降、２８年間、歯止めのない党勢力ＰＨＮ(党員・赤旗日刊紙・日曜版)の減退をなんとか食い止め、第２３回大会までに、反転増勢に持って行くことである。
〔他の目的２〕、党勢拡大運動を大展開した上で、総選挙で現２０議席を上回ることである。党勢減退だけでなく、２０００年総選挙、２００１年参院選、２００３年４月統一地方選と３回連続惨敗をしただけに、今度の総選挙でも４回連続の惨敗をすれば、不破・志位・市田体制の党内権威は失墜する。総選挙結果は、２０議席→９議席惨敗、選挙４連続惨敗になった。
『日本共産党の党勢力、その見方考え方』党勢力、選挙結果のデータ
ところが、不破哲三の目論見は、出だしから、２つの点でつまずいた。
〔第一のつまずき〕、筆坂問題と外部飲酒禁止令でのドタバタ劇の発生
共産党は、この問題によって、マスコミ・有権者から軽蔑と嘲笑の対象になった。この根源には、党内民主主義抑圧の犯罪的組織原則であるDemocratic Centralismによって発生した常任幹部会というトップからの幹部腐敗があり、筆坂・志位問題は、それが表面化したものである。党内民主主義を抑圧・破壊すれば、その政党は、指導部トップから幹部腐敗が発生するというのは、一党独裁のDemocratic
Centralism型の１４カ国レーニン型前衛党が証明した。
『筆坂秀世「日本共産党」出版をめぐる動向』筆坂証言があぶりだした３真相
『筆坂秀世「政治的暗殺事件」とその謎とき仮説』「脅迫ファックス」に即時屈服
『筆坂「政治的暗殺」から「外部飲酒禁止令」へ』党運営に関する『哲学の貧困』
なお、このファイルでは、民主主義的中央集権制という代わりに、Democratic Centralismを使う。というのも、レーニンが創作した、この組織原則は、ブランキらの陰謀的革命秘密結社の絶対的中央集権制であるCentralismを基軸とし、それに(１)選挙制・（２）報告制・（３）党内討論という３つの民主主義的要素Democraticを付加したものだった。しかし、その運用実態は、武装蜂起、長期の内戦などにおける軍事的集権制だったからである。
もう一面の運用実態は、選挙制・報告制・党内討論という付加Democracyの３つが形式化し、（１）事実上の任命制・（２）上意下達制・（３）党機関独裁に変質したからである。その本質は、官僚主義的Centralismだった。そして、日本共産党の民主集中制という略称は、「民主と集中の統一」という詭弁にすりかえて、用いられているからである。民主集中制の英訳は、当然、Democratic Centralismになる。ヨーロッパでは、ポルトガル共産党を除く、すべてのコミンテルン型共産党が、「Democratic Centralismは、(１)党の統一を守るのには役立ったが、(２)その一方、党内民主主義を抑圧・破壊する誤った組織原則だった」として、放棄している。今や、政党の組織原則は、Democratic Centralismを全面否定し、Democracyだけで十分だとなった。
『なぜ民主集中制の擁護か』民主集中制の３つの虚構と犯罪的役割
『ゆううつなる党派』任命制・上意下達制・党機関独裁に変質したDemocratic Centralism
〔第二のつまずき〕、解散・総選挙時期の読み誤りと、それにより１１月２２日予定党大会とが重なった問題
そもそも、国会議員や経験ある選対関係者なら、その時期は、衆参同日選挙か、それとも、２００３年秋になるというのが、ほぼ常識だった。しかも、与党公明党が衆参同日選挙は、選挙体制が分散するとして、その日程に強く反対していることも確定的な情報だった。そこからの解散時期推定は、２００３年秋となっていた。不破・志位・市田らが、党大会を１１月２２日に設定したことは、彼らが、公明党が反対していても、衆参同日選挙になるという時期判断をしたことを示している。たまたま、党大会と解散・総選挙時期とが重なってしまったのではなく、彼らの選挙情勢判断の大ミスが原因である。このような初歩的な判断の誤りを犯すレベルの常任幹部会の指導によって、共産党は、総選挙・参院選に取り組むことになった。総選挙惨敗総括の１０中総では、この情勢判断の誤りにたいして、黙殺した。
３、改定綱領討論と代議員選出における党内民主主義抑圧システム
討論は始まった。しかし、党大会は、総選挙時期に関する初歩的な判断ミスによって、２００４年１月に延期せざるをえなくなった。党大会代議員は、党大会の２カ月前頃からの３１６地区党会議、４７都道府県党会議で、約３００人に一人の割合比率で選出される。改定綱領発表とその後の経過を見ると、これらの討論過程、代議員選出が、２０００年の第２２回大会と同じような、党内民主主義抑圧システムで行われた。なぜなら、第２２回大会の規約全面改定と、第２３回大会の綱領全面改定とは、不可分一体である不破哲三のアイデンティティ宣言だからである。そこから、討論と代議員選出システムは、第２２回大会と同一のやり方で遂行されたからである。
『規約全面改定における放棄と堅持』 『「削除・隠蔽」による「堅持」作戦』
『なぜ民主集中制の擁護か』討論と代議員選出システム
『ゆううつなる党派』討論と代議員選出システム
かくして、綱領全面改定内容と、討論・代議員選出システムから、不破哲三の人格と顔つきが浮かび上がってくる。それは、(１)レーニン讃美の時代錯誤的な「革命」家であり、(２)柔軟路線で有権者に迎合する「社会民主主義」者であり、(３)市場経済と社会主義とを接着させる「社会民主主義」者的｢革命｣家で、かつまた、(４)討論・代議員選出での排除・抑圧をする「反民主主義」者でもあるという、２１世紀に残存する、典型的な「科学的社会主義」者が併せ持つ四面相である。以下、四面相を検証する。
〔小目次〕
１、放棄していない民主主義革命→社会主義革命(＝変革)路線
改定綱領の検討に入る前に、４３年前の６１年・革命綱領と比べて、(１)何を放棄したのか、(２)何を追加したのか、それとも、(３)表現上の変更だけなのかを確かめることが必要である。
６１年綱領の現状規定を放棄していない。「事実上の従属国」を正しいとし、それを情勢規定と言い換えているだけである。アメリカ帝国主義をアメリカとし、独占資本を大企業とし、２つの敵という日本語を削除したが、現状規定の本質はそのままである。
６１年綱領の二段階革命という基本路線を放棄していない。資本主義枠内の民主主義的変革という日本語を使っているが、同時に、それを民主主義革命と規定し、権力の移行を伴うとする。革命という用語の使用をできるだけ減らしているが、変革と革命とを、随所に同義語として使っている。しかも、「変革」は資本主義枠内での改革内容であり、それによって権力が移るから「革命」でもあるという詭弁を使っている。
これは、不破哲三の得意技である日本語の意味すりかえ詭弁術である。６１年綱領における政府規定は、（１）民主連合政府→（２）反帝反独占の民族民主統一戦線政府→（３）権力の移行を伴った革命政府→(４)社会主義革命権力としていた。それにたいして、改定綱領では、(２)（３）を削除して、（１）の段階で、権力が移るから「資本主義枠内での変革＝民主主義革命」になるとレベルダウンさせた。よって、社会主義的変革とは、社会主義革命の言い換えにすぎない。
社会主義・共産主義を、資本主義後における理想の体制とする路線を放棄していない。そもそも、社会主義体制というイメージは、抽象的なマルクス主義理論ではない。それは、いっせい崩壊したソ連・東欧１０カ国の実態と、残存する中国・北朝鮮・ベトナム・キューバ４カ国の実態である。その実態を理想とするような有権者は、いまや一人もいない。
しかも、それら１４カ国は、すべて、反民主主義的・犯罪的な一党独裁制度だった(である)。他党派絶滅政策によるボリシェヴィキ一党独裁システムを確立したのは、レーニンであって、スターリンからではない。社会主義・共産主義という日本語は、マルクス・レーニン主義という言葉とともに、地に落ちている。それを全面改定綱領で、れいれいしく唱える政党にたいして、有権者は、その時代錯誤性を感じるだけである。
日本共産党議長という地位とともに、彼の思想・理論的特徴からその人物像を考える。彼は、宮本顕治の著作を上回る著書を多数出版している。なかでも、特色は、レーニン文献研究である。彼は、『レーニンと「資本論」』を、雑誌『経済』で長期の連載をし、その単行本を７冊まで出版した。
ソ連崩壊後に、「レーニン秘密資料」６０００点や膨大なアルヒーフ（公文書）が公表された。そこでは、レーニンのさまざまな誤りや大量殺人指令が暴露され、レーニンが反乱農民・労働者・兵士と聖職者・知識人を最低でも数十万人殺害・粛清したという事実が、具体的データで証明された。それらの新しいデータによって、ロシア国内だけでなく、全世界でも、レーニンの再評価が行われつつある。
再評価の基準は、(１)旧来からの『レーニン全集』にある「レーニンが書いたこと」からではなく、(２)「レーニン秘密資料」やアルヒーフ（公文書）によって暴露された「レーニンがしたこと」だった。とりわけ、浮上した注目点は、レーニンによる自国民＝ロシア革命勢力の大量殺人指令の存在である。そして、レーニンが「反革命」「武装反革命」とレッテルを貼り付けて、殺害した数十万人の反乱者たちは、レーニンの誤り、とくに「市場経済廃絶」路線にたいする正当な抵抗者ではなかったのかというテーマである。
『レーニンの権力奪取クーデター、誤りと大量殺人犯罪データ』ファイル多数
ソ連崩壊前には、レーニンの大量殺人指令と殺害数は、完璧なまでに隠蔽されていた。レーニン・スターリンは、それらのデータをなぜそこまで隠す必要があったのか。その指令のいくつかで、レーニン自身が、「極秘」「秘密を守れ」「殺人指令文書のコピーをするな」と書きこんでいる。これらは、レーニンの政治路線・政策上の誤りというのにとどまらず、レーニンの犯罪と規定できる性格を持っている。
不破哲三のレーニン研究の集大成である『レーニンと「資本論」』７冊の出版時期は、ソ連崩壊後である。しかし、彼は、そこに、レーニンの誤りも、レーニンの大量殺人犯罪データなどを一つも明記していない。ただ、『国家と革命』の一部について、改定綱領にある「国会での安定した過半数を通じての革命＝変革」路線とつじつまをあわせるために、レーニンの暴力革命論だけを批判・否定した。それも、『レーニン全集』にある「レーニンが書いたこと」を、その問題以外、全面的に正しいとする前提に立つ研究であって、ソ連崩壊後に判明した「レーニンがしたこと」にたいして、意図的に無視している。２１世紀時点では、時代錯誤的な研究レベルといえる。ただ、その程度の誤りを指摘するだけではまずいと思ったのか、彼は、改定綱領報告で、「レーニンにはいろいろ誤りがあった」と抽象的に認めた。
また、彼のレーニン研究スタイルにも特徴がある。それは、文脈、歴史的背景のとらえ方である。一つは、『レーニン全集』内容の文脈を完全に無視して、字づらだけを検討の手がかりにするやり方である。崩壊前のソ連には、そのスタイルのレーニン研究者が数万人いた。もう一つは、解釈・研究者のこのみにあう文脈だけを取り出し、大量殺人犯罪を無視し、その歴史的背景も主観的に解釈することによって、偉大なレーニンの正当化に利用するというやり方である。不破哲三の７巻本は、後者の研究スタイルの典型である。
不破哲三『１９１７年「国家と革命」』抜粋 『レーニンと「資本論」』
アエラ 『不破氏の今どきレーニン批判』(２０００．１.３１号)
学者党員を除いて、日本共産党指導者で、彼ほどのレベルで、かつ、情熱を込めて、レーニン文献研究をしている幹部はいない。それだけでなく、国際共産主義運動完全崩壊前において、世界のコミンテルン型共産党指導者の中でも、彼ほど『レーニン全集』内容を、索引的にも引用できる、博学的研究者はいない。もちろん、スターリン・ブレジネフ時代、そのレベルのレーニン文献引用者・博識者は、ソ連共産党幹部の中に、掃いて捨てるほどいた。資本主義ヨーロッパでは、ポルトガル共産党を除いて、レーニン型共産党はすべて終焉を迎え、共産主義の妖怪は、その生誕地でほぼ絶滅した。
その状況において、不破哲三は、資本主義国内でレーニン賛美をする最後の共産党指導者として、２１世紀になっても生き残った。彼の研究努力とレーニン擁護の功績にたいして、不破哲三という人物こそ、東方におけマスコミンテルン型共産党の偉大な博物館的モデルであると、絶大な評価と栄誉が与えられるべきである。もっとも、彼を表彰する国際共産主義運動も消滅しているので、彼のレーニン賛美講演を歓迎するのは、共産主義友党関係を回復させた中国共産党と朝鮮労働党という２つのレーニン型前衛党しかない。
『コミンテルン型共産主義運動の現状』ヨーロッパでの終焉とアジアでの生き残り
ソ連・東欧と地続きのヨーロッパでは、崩壊した東欧諸国を含め、(１)４０００万人殺人・粛清者スターリンだけでなく、(２)ロシア革命勢力数十万人殺人犯罪者レーニンをかばう者も、もはや一人もいない。不破哲三は、「レーニンにも誤りがいろいろあった」と言いつつも、実際のところ『レーニンと「資本論」』の革命研究の蓄積を、日本の現実に、創造的に適用しようと謀ったのが、今回の改定綱領なのである。『レーニン全集』内容の日本共産党綱領への持ち込みという視点から、改定綱領を検討する。レーニンが『なにをなすべきか』で、持ち込み・注入理論を唱えたように、不破哲三は、２１世紀式持ち込み・注入理論の再現を目指しているといえる。
革命とは、国家権力の移行である。議会制民主主義制度における政権交代とは異なる。ただ、レーニンは、それを国家の暴力装置の移行と一面的に矮小化する規定をした。暴力装置とは、軍隊・警察・裁判所・刑務所などの武装した抑圧機関のことである。彼の革命理論には、国家権力を、暴力装置だけでなく、政治的・文化的・道徳的ヘゲモニーの総体として把握する視点に欠けていた。そして、資本主義国家を、ブルジョア独裁と単純化する誤りを犯した。その一面的な誤った国家理論から、彼は、職業革命家のレーニン型前衛党員を中核として、少数派の武装蜂起クーデターによる権力奪取をするという革命スタイルを生み出した。
１９９１年ソ連崩壊後、レーニンが１９１７年１０月にしたことは、革命ではなく、単独武装蜂起・単独権力奪取クーデターだったという規定が、ヨーロッパの共産党・左翼・有権者、および、日本の研究者の常識になっている。よって、それ以降のレーニン政権とは、違法なクーデター政権のままだったことになる。
『レーニンがしたことは、革命でなく、単独権力奪取クーデター』ファイル多数
１９世紀末から２０世紀初頭の社会主義運動は、第一次世界大戦を契機に分裂した。(１)社会民主主義は、資本主義枠内での改革・改良を積み重ねて、社会主義を目指す路線だった。それは、暴力革命方式を批判するだけでなく、レーニンらによる「赤色テロル」を全否定した。それにたいし、(２)レーニンらボリシェヴィキの理論は、公然と暴力革命を掲げる路線だった。戦争を内乱に転化させる方針、武装蜂起、長期の内戦を通じての暴力による権力奪取と社会主義国家暴力装置によるプロレタリア独裁権力の維持・強化路線だった。
レーニンは、議会で安定した過半数をとって、平和的に社会主義に移行するという形態を、ブルジョア議会主義と軽蔑し、あくまで武装蜂起を主張した。そして、憲法制定議会選挙で２4％の議席・得票率しかとれず、権力奪取ボリシェヴィキが少数政党だったことが暴露されるや、１９１７年１月１８日、憲法制定議会を、開会第１日目に暴力で解散させた。暴力で権力奪取をし、暴力で普通選挙によって選出された議会を解散したからには、その２4％少数派一党独裁権力は、秘密政治警察チェーカー・赤軍という国家暴力装置をフル稼働させ、７５％の自国民を弾圧し、その内、反乱した農民・労働者・兵士たちにたいして、「人民の敵」というウソのレッテルを貼り付け、数十万人を殺害するという犯罪をせざるをえなくなった。
レーニンの国家理論・革命理論が、権力奪取武装蜂起の前から、完全に誤っていた。それだけでなく、単独武装蜂起による権力奪取、２４％少数派による憲法制定議会の武力解散の誤りは、一党独裁権力維持のために、７6％自国民にたいする底無しの暴力使用・拡大に行きつかざるをえなくなった。
Ｒ・ダニエルズ『ロシア共産党党内闘争史』蜂起の問題、連立か独裁か
中野徹三『社会主義像の転回』憲法制定議会の武力解散
議会での安定した過半数を通じての社会主義革命(＝変革)は、世界で一度も起きていない。１４カ国における権力の移行形態は、武装蜂起、長期の内戦、東欧・北朝鮮におけるソ連軍の戦車などの暴力による権力奪取だった。そして、憲法制定議会選挙とそれを暴力で解散した事例を除いて、レーニンや１４カ国の一党独裁権力は、一度も、資本主義レベルの普通選挙をしなかった。
日本共産党は、１４カ国の社会主義が停滞し、崩壊するにつれて、その国家権力を規定する日本語を、いろいろ言い換えるという姑息な手口を使ってきた。(１)６１年綱領時点、社会主義国家・社会主義世界体制→(２)生成期社会主義→(３)社会主義をめざす国ぐに→(４)改定綱領、資本主義から離脱した国家などである。このすり替え日本語は、在籍党員４０万人をだますことができても、１億２６１万人有権者をあざむくことなどできない。それらの社会主義において、議会での多数派となっての平和移行で成立した革命権力は一つもない。１４カ国は、日本語でいう「現存した(する)社会主義の政治経済体制」だったのであり、それ以外の日本語言い換えは、詭弁である。
１４カ国のレーニン型前衛党が暴力による権力奪取をした時点においては、まだ他党派が存在し、またそれらを含む統一戦線ができていた。しかし、レーニンが創作した前衛党理論とは、(１)自己の党を、絶対的真理の認識者・体現者とし、(２)マルクス主義という世界観政党こそ社会主義を実現できる唯一の党であるという自己規定をする政党だった。(３)近代世界政党史上で、これほどうぬぼれた政党理念を掲げる党派は、ボリシェヴィキとコミンテルン型共産党だけだった。(４)このうぬぼれ思考は、党内にあっては、中央委員会による真理独占となり、最高権力者の個人独裁へと収斂して行く。
レーニンの犯罪は、うぬぼれた前衛党理論による他党派絶滅→一党独裁体制確立だけではない。マルクス主義世界観政党は真理を体現しているという自己規定をするからには、それに基づく路線・政策にたいし、反対・批判をし、反乱を起す自国民・ロシア革命勢力を、レーニンらは、すべて「人民の敵」と断定せざるをえない。
マルクスの「市場経済廃絶」理論は、根本的に誤った机上の空論だった。レーニンは、それも絶対的真理と信じ、その具体化としての「食糧独裁令」を１９１８年５月１３日から強行した。５月２５日からチェコ軍団との内戦が勃発するより前に、８０％・９０００万農民にたいする「食糧独裁令」による内戦を、レーニン・スヴェルドロフ・トロツキーの側から仕掛けたという歴史的証拠・会議発言が、ソ連崩壊後に判明した。その誤った路線・政策にたいし、農民・労働者・兵士たちロシア革命勢力の総反乱が１９１８年夏から１９２１年３月にかけ、ソ連全土で勃発した。ソ連崩壊後、これらの抵抗・反乱は、レーニンの誤った政策にたいする正当なものだったと評価が逆転している。レーニンは、チェーカー・赤軍に指令して、自国民・ロシア革命勢力数十万人を殺害する大量殺人犯罪を遂行したマルクス主義者だった。
レーニンによる「無実の自国民大量殺害犯罪」データの根拠に関する詳細
『｢赤色テロル｣型社会主義とレーニンが「殺した」自国民の推計』数十万人殺人の根拠
『「ストライキ」労働者の大量逮捕・殺害とレーニン「プロレタリア独裁」論の虚構』
内戦を最初に仕掛けたのは、白衛軍ではなく、レーニン・トロツキー側という証拠発掘
『「反乱」農民への「裁判なし射殺」「毒ガス使用」指令と｢労農同盟｣論の虚実』
『ザミャーチン「われら」と１９２０、２１年のレーニン』クロンシュタット水兵皆殺し犯罪
『「反ソヴェト」知識人の大量追放「作戦」とレーニンの党派性』
レーニン・ボリシェヴィキの一党独裁権力を筆頭として、１４カ国の革命権力は、マルクスの一面的犯罪的なプロレタリア独裁理論に基づき、数々の国家権力犯罪を引き起こし、数千万人の自国民・他国民を殺害・粛清した。
不破哲三は、ソ連崩壊後に判明したレーニンの犯罪を、意図的に無視し、｢レーニンが書いたこと｣の中で、暴力革命路線だけを批判した。その一部批判を除いて、今なお、７冊の本で、レーニン讃美を続けるという時代錯誤性はどこからくるのか。
ポルトガル共産党を除いて、ヨーロッパでは、レーニン型共産党は消滅した。フランス共産党は、１９７０年代に、(１)レーニンのプロレタリア独裁理論の放棄を宣言し、(２)彼が試金石としたDemocratic Centralismを党大会で放棄した。さらに、ソ連崩壊後、(３)マルクス主義は誤りだとして放棄宣言をした。それによって、フランス共産党は、その共産党名を残していても、もはやレーニン型共産党でなくなっている。ただ、ヨーロッパでも、公正・平等などの理念としての社会主義思想は残っている。しかし、それは、レーニン型社会主義・共産主義の政治・経済体制を理想とする理論と断絶している。
ソ連・東欧を含むヨーロッパで、なぜ社会主義・共産主義の妖怪がほぼ絶滅したか。それには、２つの原因が考えられる。
〔原因１〕、地政学的な原因
ソ連・東欧と他ヨーロッパとは、ヨーロッパ大陸として地続きで、相互の情報、内情が直接伝わる。とりわけ、ロシア革命時点での亡命者は２００万人あり、東欧からもハンガリー事件で２０万人・プラハの春で５０万人など数十万人が亡命した。鉄のカーテンがあるとはいえ、彼らを通じて、レーニンの数十万人殺人犯罪、スターリンの４０００万人粛清犯罪の実態がストレートに浸透する。この面では、東方の島国日本とまったく異なっている。
〔原因２〕、スターリン批判・ハンガリー事件の受け止めと研究レベル・姿勢
１９５３年のスターリン死去、５６年のフルシチョフによるスターリン批判、５６年１０月ハンガリー事件までは、ヨーロッパでも、日本共産党と同じく、スターリン崇拝傾向にあった。しかし、それら２事件の衝撃は、ヨーロッパ左翼世界を揺るがした。各国共産党は、党内外でスターリン批判とその実態・原因を徹底して探求した。そして、スターリンの大テロルが暴露されるにつれて、探求の方向は、スターリンの犯罪とレーニンとの連続性・非連続性の追及へと深化していった。１９７０・８０年代、ソ連・東欧の政治的経済的停滞と人権侵害実態が表面化するにつれて、レーニン路線の否定としてのユーロコミュニズムが勃興した。
１９７０年代、レーニンの大原則であるプロレタリア独裁理論を、１９７４年のポルトガル共産党を筆頭として明確に放棄し、１９８０、９０年代には、ポルトガル共産党以外のヨーロッパの全共産党が、Democratic Centralismを「党内民主主義を破壊した(する)誤った組織原則である」と公式に放棄宣言した。
１９９１年ソ連崩壊後、レーニンの数十万人殺人犯罪が暴露・発掘されるにつれて、ポルトガル共産党以外のヨーロッパ共産党すべてが、マルクス・レーニン主義と断絶し、その廃棄をした。その理論は、(１)１９、２０世紀資本主義の弊害を解決する路線として、労働者の権利向上、被抑圧民族の解放に役立った一面があるとしても、(２)基本的には国家・社会・前衛党内の民主主義を破壊し、「赤色テロル」を是認し、現実に大量殺人犯罪をする根本的に誤った一党独裁型革命路線だったという認識に到達したからである。
『コミンテルン型共産主義運動の現状』ヨーロッパでの終焉とアジアでの生き残り
日本共産党の研究レベル・姿勢は、ヨーロッパと対照的だった。１９５６年スターリン批判・ハンガリー事件当時、日本共産党は、朝鮮侵略戦争に参戦した武装闘争によって、壊滅状況になり、５５年７月の六全協で再出発をしたところだった。その実態は、ソ中両党への完全隷従状態にあり、スターリン批判・ハンガリー事件を独自に研究・探求する体制になかった。逆に、宮本顕治は、その研究・出版を強引に押さえ込むという反動的役割の先頭に立った。
『宮本顕治のソ中両党隷従による反動的役割』ファイル多数
しかし、ユーロコミュニズムが勃興するにつれて、日本共産党の学者党員たちが、その紹介とスターリン批判研究にようやく踏み出した。Democratic Centralism批判も、表面化した。党中央でも、上田耕一郎がその流れで、いくつかの論文を発表した。宮本顕治は、ヨーロッパ共産党との会談内容、日本におけるその動向に強烈な危機感を抱いた。というのも、ユーロコミュニズムの方向と、学者党員たちの研究姿勢は、(１)スターリン批判からさらに一歩踏み込んで、(２)レーニン批判、マルクス・レーニン主義の廃棄に進む内容を孕んでいたからである。彼は、ユーロ・ジャポネコミュニズムとも言われた姿勢を一転し、日本共産党を逆旋回させる４連続粛清事件遂行のクーデターを敢行した。最初の粛清事件が、通称ネオマル粛清だった。この詳細は、別ファイルに書いた。
『不破哲三の宮本顕治批判』〔秘密報告〕日本共産党の逆旋回と４連続粛清事件
６、２１世紀における不破哲三型「革命」成功の現実的可能性
東欧革命・ソ連崩壊後の現在、｢民主主義革命＝変革｣｢社会主義革命＝変革｣という不破創作日本語は、抽象的なイメージではありえない。１億２６１万有権者は、それを、１４カ国とそのレーニン型前衛党が犯した具体的な犯罪実態と切り離して考えることはできない。不破哲三が、改定綱領やその報告・講演において、さかんに、旧ソ連批判を書き、レーニンにも誤りがあったと抽象的な文言をのべている。その程度では、この理論体系の犯罪性、１４カ国における犯罪事実、反民主主義システムの本質を覆い隠すことは不可能である。まさに、彼は、４３年経って、あらためて時代錯誤的な｢革命｣家の肖像を、日本政党史上に記すことになった。
もちろん、日本の現実には、さまざまな深刻な問題があり、出口が見えない。しかし、その突破方向として、(１)社会主義市場経済を唱える一党独裁国家中国や、(２)ドイモイを進める一党独裁国家ベトナムを理想の政治経済体制とする日本の有権者は一人もいない。有権者にとって、社会主義は、１４カ国に現存した社会主義政治経済体制以外に存在しない。マルクス・レーニン主義型社会主義は、なお残存する４カ国を含め、体制上だけでなく、理論面でも崩壊した。この現状に目をつぶって、科学的社会主義者を自称し、｢革命｣改定綱領を提案する不破哲三の本質は、空想的社会主義の２１世紀型リーダーといえる。彼の空想性＝「革命幻想」をいくつか検討する。
〔不破式「革命幻想」１〕、｢革命｣綱領を掲げる共産党を中心政党、または一員とする民主連合政府成立の可能性
改定綱領は、暴力革命による権力奪取クーデターを否定し、資本主義レベルの普通選挙によって、議会での安定した過半数を獲得し、民主主義革命をする民主連合政府樹立との構想を提案した。現在の共産党は、世論調査支持率２～４％、国政選挙得票率７～１０％前後である。改定綱領の民主主的変革を実行する政府においては、共産党を名乗る政党が、少なくとも３０％以上の得票率を安定して取ることが絶対必要条件である。その前に、社会主義革命綱領を掲げる政党にたいして、民主連合政府に向けた選挙協定をする他政党の存在が必要である。これは、現在日本の政党関係とその政界再編展望から見て、それを詳しく分析するまでもなく、不破哲三式｢革命幻想｣である。
なぜなら、発達した資本主義国において、｢革命｣綱領をかかげる共産党が、３０％以上の得票率を得たケースは一度もない。最大のイタリア共産党でも、最高は２０％強だった。イタリア共産党が、マルクス・レーニン主義の体制・理論にたいする断絶的刷新をしたことによって、初めて他政党は、共産党にたいする警戒心を解き、統一選挙協定組織としてのオリーブの木に参加した。
レーニンのボリシェヴィキでも、１９１７年１１月７日、ソヴィエト内の他社会主義政党であるエスエル、メンシェヴィキを出し抜いて、単独武装蜂起による権力奪取クーデターをした後で、その１８日後から投票が始まった憲法制定議会選挙の議席・得票率は、２４％だった。レーニンが、１９１８年５月から強行した｢食糧独裁令｣は、８０％・９０００万の土地革命農民の猛反発を受け、すべての他社会主義政党も反対した。６月のソヴィエト内選挙では、ボリシェヴィキが２０数県で敗北した。レーニンは、それらのソヴィエトを秘密政治警察チェーカーと赤軍で解散させた。それらの動向は、まだ白衛軍との内戦が始まっていない時期である。この時点において、レーニンが普通選挙をしていれば、ボリシェヴィキの得票率は、２４％どころか、一桁の数％に転落していたであろう。
共産党名と科学的社会主義というマルクス・レーニン主義理論を廃棄し、党内民主主義を破壊するDemocratic Centralismを放棄し、｢革命｣綱領を廃絶すれば、他政党との選挙協力や、民主連合政府は可能である。もっとも、不破哲三は、科学的社会主義者を自称する空想的社会主義者として、世論調査支持率２～４％・嫌いな政党の拒否率第１位２０％以上の地位に満足し、政権獲得など真剣に考えていないという別の見方もできる。
〔不破式「革命幻想」２〕、民主主義革命(＝権力の移行)と複数政党制・政権交代の可能性
仮に、綱領の民主連合政府が成立したとする。しかし、民主連合政府構想と革命路線については、理論的に成り立たないような、矛盾した内容となっている。「民主主義的変革」「複数政党制・政権交替」といいつつ、一方で、それを「民主主義革命」と規定し、「革命」の根拠として「権力が移る」とした。そもそも、資本主義枠内での変革は、経済システムの変革内容を除けば、政治体制において、資本主義レベルの議会制度における政権交替であり、その新政府が選挙で敗れれば、別の｢非革命｣政権になる。そこでの勝敗は、どちらも権力の移行ではありえない。この内容は、６１年綱領の「革命」理論と、最近の「革命イメージを隠蔽した」理論との“ごった煮”である。これほど欺瞞的な有権者だましの内容はない。この欺瞞理論は、共産党員をだますことができても、有権者をだますことはできない。
レーニンや１４カ国のレーニン型前衛党が犯した犯罪の一つは、資本主義レベルの議会制度をブルジョア独裁の道具と一面的に規定し、政権交替をブルジョア民主主義と軽蔑し、プロレタリア独裁という名目のボリシェヴィキ一党独裁、共産党一党独裁に固執し、一旦奪取した権力を離さず、政権交替を拒絶することだった。（１）「権力が移る」という民主主義｢革命｣規定と、（２）選挙敗北による｢非革命｣「反革命」政権への交替を認める綱領公約とは、絶対矛盾であり、不破哲三は、よくぞ、これほど無責任な空手形を発行できるものだと、彼の鉄面皮ぶりに感心する。もっとも、これほどの有権者だましのウソがつけるほどでないと、共産党指導者はつとまらない。
というのも、レーニン批判の他ファイルで分析したように、彼が讃美するレーニンは、労働者が２％・３００万人しかいない国家で、ボリシェヴィキ一党独裁体制をプロレタリア独裁国家とウソをつき、根本的に誤った｢市場経済廃絶｣路線にソ連全土で反乱した８０％・９０００万農民の内、数十万人を殺害した実態を隠して、労農同盟が成立しているとウソをついた。それと比べれば、不破哲三のウソは、まだ実害を与えていないレベルの空公約である。
ヨーロッパにおいて、コミンテルン型共産党がほぼ消滅した原因の一つには、ソ連崩壊後から、『レーニン全集』にある「レーニンが書いたこと」と、現実に「レーニンがしたこと」との違いがあまりにも大きいことが暴露されたことがある。彼の言行不一致性＝｢革命｣目的のためには「ウソも方便」という手段は正当化されるという彼の人間性に、ヨーロッパ諸国民・左翼が愛想をつかしたことがある。レーニン讃美者不破哲三も、レーニンの権威失墜から教訓を学んで、ウソや詭弁を使わない方がいいと思うが。
〔不破式「革命幻想」３〕、高度に発達した資本主義国日本における社会主義的変革(＝革命)の可能性
ヨーロッパでは、共産主義の妖怪はほぼ絶滅した。発達した資本主義国家で、社会主義革命を綱領に持つ政党はなくなった。一部極左的政治グループはまだある。となると、その実現スタイルは、日本の一国社会主義革命か、それとも、アジア・アフリカの発展途上国を糾合した世界同時革命になる。
レーニン・トロツキーは、発達した資本主義国ドイツでのプロレタリア革命の勃発と成功を絶対的前提条件として、ボリシェヴィキ単独の武装蜂起による権力奪取クーデターを企んだ。しかし、(１)ドイツ革命、(２)ハンガリー革命は失敗し、(３)赤軍のポーランド侵略による革命輸出戦争も敗北した。その時点のレーニンの国際情勢判断・ドイツ情勢分析内容は、完全に誤っており、ヨーロッパ革命の導火線にするという世界革命幻想に基づいて、ボリシェヴィキだけの権力奪取クーデターをしたのだった。
２１世紀における世界同時革命は、空想である。それなら、日本の一国社会主義革命が可能なのかとなると、それも、このグローバリズムの世界において、革命幻想にすぎない。不破哲三の個人的な未来社会ユートピア小説なら兎も角、改定綱領は科学的社会主義を自称する政党のれっきとした文書である。もっとも、私は、レーニンの『国家と革命』を、革命ユートピア小説のジャンルに位置づけているが。
『「国家と革命」の位置づけ』革命ユートピア小説と革命逆ユートピア小説の系譜
〔不破式「革命幻想」４〕、国家の死滅という可能性と、そこでの共産党的規律社会という理想
不破哲三は、改定綱領の報告、その他で、共産主義社会の展望として、国家の死滅を説いている。これは、レーニンの『国家と革命』の理論内容と同じである。そもそも、現在の民族国家、または、ＥＵ、それを世界的にした世界国家システムが死滅することなどありえない。それだけでなく、彼は、国家死滅後の社会の一例として、共産党的規律の社会になるという展望を示している。それは、まさにDemocratic Centralismが社会・各団体の規範になるシステムである。不破哲三の未来社会展望は、まさに、オーウェル的世界になる。彼は、よくぞそんな逆ユートピアを理想にすることができるものだと、そのレーニン讃美の空想性に唖然とする。
『オーウェルにおける革命権力と共産党』逆ユートピア世界の展望
３、柔軟路線で有権者に迎合する「社会民主主義」者
〔小目次〕
３、過去の批判的総括抜きで、ウソの社会民主主義的空手形公約を乱発
不破哲三は、(１)６１年綱領の革命路線をひきずる一方で、(２)その路線をなしくずし的に放棄、または隠蔽した社会民主主義路線を導入している。その２つの側面には、なんの整合性もなく、柔軟路線で有権者に迎合するために、２つの路線を混在・折衷させた改定綱領になっている。よって、どちらかの一側面だけで、改定綱領の性格を断定することは、誤った結論に陥る。
改定綱領の具体的検討に入る前に、不破哲三の思想・理論的出自と社会民主主義者としての思想を保持・隠蔽してきたことを見てみる。
不破哲三こと上田建二郎の思想・理論的出自は、兄上田耕一郎と並んで、構造改革論者だった。それは、石堂清倫ら５人による討論・研究会のメモに基づいて、代筆的に執筆した『戦後革命論争史』(大月書店、１９５６、５７年)で証明できる。さらに、１９７０年代、ユーロコミュニズムが台頭してきたとき、上田耕一郎は、それにもっとも接近した見解を発表していた。宮本顕治は、兄弟を党中央の理論幹部として大抜擢した。しかし、彼は、スターリンに匹敵するほどの猜疑心の異常さで有名である。彼は、最高権力者の自分を、現在・未来にわたって、思想・組織面で裏切る可能性のある幹部を見分ける点では天才的な嗅覚の持ち主だった。彼は、自分が老齢化するにつれ、また、ユーロコミュニズムの影響が日本共産党内に浸透するにつれて、兄弟が再び構造改革論に寝返るのではないかと疑いをかけた。
そこで、まず、２人の著書の絶版命令を出した。それだけでは安心できない。さらに、著書出版後２６年も経った１９８２年、議長宮本顕治は、委員長不破哲三と副委員長上田耕一郎を、宮本秘書団を中核とする宮本私的分派・側近グループに指令して査問にかけ、２６年前の『戦後革命論争史』には、「自由主義・分散主義・分派主義があった」との自己批判をさせた。さらには、その内容を１１カ所も書かせた２人の自己批判書を『前衛』に発表させた。党中央のＮｏ．２、３を、２６年前の思想・理論問題で査問し、自己批判書まで公表するという異様な査問事件は、日本共産党史の大きな謎の一つだった。私の推理は、別ファイルで書いた。
石堂清倫『「戦後革命論争史」の出版経緯について』上田・不破兄弟との関係
『不破哲三の宮本顕治批判』(秘密報告)上田・不破査問事件の真相
『上田耕一郎副委員長の多重人格性』上田・不破査問事件の真相
彼ら兄弟は、(１)レーニン型革命信奉者であるとともに、(２)構造改革論の社会民主主義者として多重性を持ち続け、宮本顕治と宮本秘書団私的分派にたいして面従腹背の姿勢を取った。スターリンの個人独裁時期には、フルシチョフを初めすべての側近グループだけでなく、ゴーリキー、ショスタコーヴィッチ、マヤコフスキー、エイゼンシュタインなど多くの芸術家も、彼に対して面従腹背＝二枚舌の姿勢をとったということは、ソ連崩壊後に証明された事実である(亀山郁夫『磔のロシア』岩波書店、２００２年)。フルシチョフは、スターリン死去から３年後の１９５６年、スターリン別荘に入り浸る二枚舌の姿勢をかなぐり捨てて、スターリン批判を行い、世界をあっと驚かせた。
フルシチョフの幸運と同じく、兄弟にとっても、ついにその多重性を公然と主張できるチャンスが訪れた。(１)宮本顕治の老齢化と、(２)それによる引退要求が党内外から強烈に現れただけでなく、(３)綱領全面改定の６年前の１９９７年、彼が脳梗塞で倒れ、政治活動面で再起不能に陥った。この絶好のチャンスをものにできないようでは、レーニン型前衛党の最高権力者にはなりえない。
宮本脳梗塞とその症状に関する噂は、以前から、党本部内で、かなりささやかれていた。しかし、党外には、なかなか漏れ出なかった。なぜなら、最高権力者のマイナス面情報を完璧に隠匿するのが、世界の共産党が持つ伝統的体質だからである。そして、その極秘情報を党外に持ち出した党本部専従は、即座に、調査（＝査問）をされるからである。その情報の公表・暴露権限を持つのは、フルシチョフと同じく、次の最高権力者不破哲三だけである。不破哲三は、２００３年６月２８日の朝日新聞インタビューにおいて、正式に公表した。「朝日―改定綱領について宮本顕治元議長と話したか。不破―宮本さんの引退後はそういうことはしていない。体の状況もある。６年前に脳梗塞(こうそく)で倒れて、もう９０代半ばでしょ。」
不破哲三は、宮本脳梗塞の直後から、直ちに行動を開始し、(１)政治路線・政策における社会民主主義路線の小出し提起と、（２）宮本への引退強要、(３)宮本秘書団私的分派の解体措置を、複数による秘密グループを結成して、断行した。（２）の内容は、(秘密報告)の末尾で分析した。(１)の内容は、１９９７年第２１回大会、２０００年第２２回大会、および、その間における選挙政策などで小出しに出され、今回の第２３回大会の改定綱領内容が、社会民主主義者不破哲三の総仕上げ的な路線となった。
不破哲三の「社会民主主義」者的路線の小出し提起内容、および、改定綱領にたいして、共産党内の一部から、右傾化、６１年綱領路線の放棄とする批判がある。しかし、彼の人格にたいする見方を変えてみる。彼はもともと思想の二重性を持った人間で、宮本顕治が脳梗塞で倒れるまで、面従腹背の姿勢をとり、その後、その引き裂かれた、矛盾する人格を、恥かしげもなく、公然と４０万党員と国民の前にさらけだした、勇敢な共産主義者兼社会民主主義者という二重思想人間と考えたらどうであろうか。このような人格は、ヨーロッパ共産党幹部にあまり見掛けないが、鄧小平を初めとする中国共産党指導者、ベトナム共産党指導者には、共産党一党独裁型資本主義経済国家を推進する詭弁理論家としていくらでもいる。
宮本顕治が、(１)上田耕一郎・建二郎兄弟を理論幹部として大抜擢する一方で、(２)社会民主主義者的資質を隠す２人の二枚舌に猜疑心を持ち続けたことが、No.２、３に対する謎の査問・自己批判書公表事件の本質である。宮本顕治は、ユーロコミュニズムに急接近した中で、その指向方向が、スターリン批判段階に止まらず、レーニン批判に深化し、Democratic Centralismも放棄することを察知した。ヨーロッパの全共産党が社会民主主義路線へ転換していく方向にたいし、彼は、恐怖を抱いた。彼は、宮本秘書団私的分派を駆使した４連続粛清事件クーデターによって、日本共産党をレーニン主義絶対擁護・スターリン型規律強化に逆旋回させる荒療治に成功した偉大な革命家である。彼の荒業・逆旋回クーデターがなければ、日本共産党は、今頃、ヨーロッパなみに、社会民主主義政党に転換していたことであろう。その「ネオ・マルクス主義者」粛清クーデターの対象の中に、兄弟がいた。不条理な査問を受けた屈辱感は、強烈であり、この気持ちは被査問体験者でないとなかなか分からない。
宮本顕治の逆旋回クーデターを、再度、半分だけ逆旋回させたのが、不破哲三の改定綱領における「社会民主主義」者的側面である。不破綱領とは、フルシチョフのようなスターリン批判形式を伴わない、実質的な宮本顕治批判の改定綱領と考えたらどうか。その性格は、逆旋回の半分否定としての半分逆旋回＝２１世紀型の新しい構造改革路線への回帰になる。ただし、否定の半分否定という弁証法は、同一グランドに戻らないので、不破哲三の２１世紀型構造改革路線とは、「資本主義市場経済＋社会主義政治体制との接着」理論となる。そして、その理論について下記でのべるように、彼は、「社会民主主義」者的｢社会主義革命｣家に質的な転化(＝止揚)をした。
一方、不破哲三は、頭がよく、記憶力も抜群で、有名な詭弁家である。「改良」「構造改革」という日本語を使えば、どのような批判・非難が殺到するのか十分わかっている。そこで、彼は、改定綱領で「変革」という日本語を使う決断をした。それが、「民主主義的変革」「社会主義的変革」である。そして、「民主主義的変革とは、権力が移るから民主主義革命のことでもある」という意味不明な詭弁を配置した。もっとも、これらの不破解析は、『謎解き・改定綱領と不破哲三』という政治推理小説に入り込んでしまう危険がある。
『不破哲三の宮本顕治批判』(秘密報告)４連続粛清事件逆旋回と不破哲三の再逆旋回
ヨーロッパでは、すべての共産党指導者が、公然とマルクス・レーニン主義を誤った理論であり、その実践は犯罪だったとして放棄宣言をし、社会民主主義者に大転換をした。不破哲三は、体制生き残りのために、平然と矛盾した二重路線を掲げる中国共産党、ベトナム共産党指導者型のアジア的指導者の一人と言えるのかもしれない。混在・折衷と批判されようとも、共産党一党独裁体制、または、常任幹部会独裁体制さえ維持できれば、そんな不満は馬耳東風で無視し、あるいは、批判党員を逮捕するか、除籍するなどの排除をすれば、自分たちアジア型共産党指導者の地位・身分は安泰である。
文学では、『ジキル氏とハイド氏』『ドリアングレイの肖像』などの二重人格が描かれている。現実政治家の世界でも、思想・理論の二重人格性を隠し持つ、または、厚顔無知に二重性を現す、風見鶏的に転換する指導者の事例はいくらでもある。レーニン型前衛党指導者も例外ではなく、独裁体制の下では、むしろ一般政治家よりもその比率が高い。
改定綱領検討の前置きが長くなった。しかし、彼の人格分析と解説をしたことは、改定綱領における社会民主主義路線の側面が、彼の二面性・二重人格性の一つである社会民主主義思想・理論から出てくる当然の内容であることを言うためのものである。民主連合政府樹立を目指すということは、他の社会民主主義政党、または一部保守政党との選挙協力の実現可能性、政権参加なのか閣外協力なのかの問題に突き当たる。そこでの障害になるのが、天皇制、自衛隊、安保条約のテーマである。それらを社会民主主義路線のレベルに引き下げて、事前に、その障害を共産党の側から取り除いておくことが必要であるとの判断によって、改定綱領の内容を転換した。
天皇制問題、自衛隊問題での改定内容にたいする賛否両論が出ている。それについては、改定綱領にたいする評価、掲示板討論にある。私の見解は、簡単にする。
天皇制問題
現天皇制を、憲法全面擁護の名のもとに、完全容認した。それは、日の丸・君が代容認以来の総仕上げである。６１年綱領の「天皇制の廃止」文言をやめ、「民主共和制」をはかるべきだという見解表明のみに後退した。その存廃について、将来、情勢が熟したときに、国民の総意にまかせると、事実上の無責任丸投げの路線に転化した。廃止路線の明記を放棄した根拠として、「君主制ではない」とする欺瞞的規定をした。この詳しい討論は、さざ波通信掲示板でなされている。
自衛隊問題
自衛隊の存続・利用方針は、社会民主主義者不破哲三がとる当然の現実的政策転換である。しかし、「憲法第九条の完全実施(＝自衛隊の解消)」後の展望がない。共産党は、もともと、社会党式の非武装中立を否定している。よって、共産党式の民主連合政府下＝権力の移動後に、新しい軍隊を所有するという武装中立路線を隠している。権力が移るとは、国家の暴力装置が移ることであり、暴力装置の中核である軍隊の新設是非に触れないのは誤りである。民主連合政府は、新しい軍隊を創設するのか、それとも、「憲法第九条の完全実施」として、軍隊のない非武装中立にするのかを明記して、国民・有権者に選択を迫るのが、共産党綱領ではないのか。
安保条約問題
安保条約廃棄の方針を継承している。これは当然である。しかし、日本の有権者の意識は、北朝鮮問題をどうするのかに直面している。この廃棄方針とそれに代わる「非同盟諸国首脳会議」方針は、現時点の集団安全保障体制について、なんの説得力もなく、空想的構想であり、有権者の支持を得られない。
改定綱領の総体的評価は、以下の論評、討論、記事にある。
中野徹三『古い教条とあたらしい現実との谷間で』綱領改定案を検討
加藤哲郎『日本共産党新綱領草案について』(２００３年６―７月)
3、過去の批判的総括抜きで、ウソの社会民主主義的空手形公約を乱発
不破哲三は、改定綱領・７中総報告・講演などにおいて、社会主義・共産主義日本のあり方について、さまざまな公約をしている。綱領とは、政党としてのマニフェストである。公約内容をのべつつ、「旧ソ連の誤りを絶対に再現させない」と言い切っている。
それならば、旧ソ連の誤りの実態、その原因分析、被害事実の解明、レーニンによる大量殺人犯罪データなどを、改定綱領以外の報告、論文などによって、国民・党員の前に明らかにすべきである。不破哲三は、スターリンの誤りと犯罪に関してのみ、他の著書で一定分析している。しかし、レーニンにたいしては、ごく一部しか批判せず、基本的にレーニン讃美姿勢を堅持している。その一部とは、レーニン『国家と革命』における少数派による武装蜂起権力奪取クーデター路線に関する理論面の否定、および、改定綱領報告などで、「レーニンにもいろいろ誤りがあった」と、具体例を挙げずに、抽象的な批判をしているだけである。
ソ連崩壊後、ヨーロッパでは、「レーニン秘密資料」６０００点や膨大なアルヒーフ（公文書）が発掘・出版されたことにより、レーニンの誤りと大量殺人犯罪、基本テーマでのウソ・詭弁が浮き彫りになった。不破哲三レベルのレーニン讃美者は、コミンテルン型共産党が終焉したヨーロッパにおいて、ほぼ絶滅しているといっていい。
『レーニンの誤り、大量殺人犯罪、ウソ・詭弁データ』ファイル多数
彼は、旧ソ連の誤りを否定するマニフェストを書きながら、その批判的総括をすることを抜かしたままで、社会民主主義的公約を掲げている。それは、政党として国民・有権者をあざむく空手形の乱発という、一種の政党犯罪の性格を持つ。改定綱領の「五、社会主義・共産主義の社会をめざして」における、いくつかの公約を検討する。公約批判の根拠は、それぞれ長大になるので、リンクのファイルを参照されたい。
〔公約１〕、さまざまな思想・信条の自由、反対政党を含む政治活動の自由は厳格に保障される
レーニンの最高権力者期間は、１９１７年１１月７日ボリシェヴィキの単独武装蜂起権力奪取クーデターから、１９２２年１２月１６日第２回脳梗塞発作で、事実上の政治活動停止になるまでの５年２カ月間だった。その間、彼がしたことは、ボリシェヴィキを批判し、その路線・政策に反対・抵抗する政党・個人・知識人のすべてに「反革命」「武装反革命」「人民の敵」「反ソヴィエト」のウソのレッテルを貼り付けたことである。そして、ブルジョア・反対政党の新聞の発行禁止、エスエル・メンシェヴィキ党員の逮捕、聖職者・信徒数万人の銃殺・殺害、共産党に協力しない知識人数万人を追放・強制収容所送りにした。これらレーニンの出版の自由権剥奪、反対政党の政治活動の自由剥奪、他政党弾圧犯罪を総括しないままで、不破哲三は、なぜこんな日本国民だましの社会民主主義的マニフェストを言えるのか。
大藪龍介『国家と民主主義』１９１７年１０月２６日出版の自由権剥奪措置の誤り
『聖職者全員銃殺型社会主義とレーニンの革命倫理』思想・信条の自由権剥奪
『「反ソヴェト」知識人の大量追放「作戦」とレーニンの党派性』思想・信条の自由権剥奪
〔公約２〕、特定の政党に「指導」政党としての特権を与えることは、きびしくしりぞけられる
マルクスは「前衛」という言葉を使った。レーニンは、それを『なにをなすべきか』によって、前衛党概念に仕上げた。前衛党概念こそ、世界政党史上における、もっともうぬぼれた、排他的な政党理念である。それは、ボリシェヴィキという前衛党こそ、(１)マルクス主義の世界観政党であり、(２)その絶対的真理を認識し、体現できる唯一の政党である、(３)他政党は、真理を認識も、体現もできないという、おそるべき傲慢な犯罪理論である。たしかに、ソ連憲法に「指導政党」「Democratic
Centralism」を明記したのは、スターリンからである。しかし、自ら積極的に一党独裁権力を構築したのは、レーニンである。彼は、自由主義政党カデット、社会主義政党エスエル・左翼エスエル・メンシェヴィキ、アナキストらすべての政党・党派を排除し、逮捕・チェーカーによる拷問・銃殺・強制収容所送り・追放をした。レーニンによる一党独裁体制確立の偉業を、スターリンが憲法で明文化したにすぎない。これらレーニンの犯罪事例をひたかくしにして、このようなマニフェストを言える不破哲三の鉄面皮ぶりには、感心する。
『なぜ民主集中制の擁護か』「指導」政党としての特権
『ゆううつなる前衛』、その粛清と査問システム前衛党概念とその犯罪性
〔公約３〕、国会の安定した過半数を基礎として、社会主義をめざす権力がつくられる
１９１７年二月革命によって、ツアーリ帝政は倒された。その後、ケレンスキー臨時政府と労働者・兵士ソヴィエトとの対立が激しくなり、二重権力状況が生まれた。エスエル、メンシェヴィキという社会主義政党は、その両方に参加していた。その状況において、ボリシェヴィキを含むすべての政党と臨時政府は、憲法制定議会選挙をすることで合意していた。レーニンは、５月の全ロシア農民会議で、農民の土地問題を憲法制定議会で解決すると公約までしていた。レーニンは、１９１７年１１月７日、(１)同日の第２回ソヴィエト大会開会を待たず、かつまた、(２)１１月２５日開始予定の憲法制定議会選挙を直前にして、ボリシェヴィキだけによる単独武装蜂起・権力奪取クーデターを強烈に主張した。ボリシェヴィキ党内では、強烈な反対意見が出た。しかし、トロツキーが賛成に廻ったことにより、単独権力奪取クーデターが決行された。ソヴィエト内のエスエル・メンシェヴィキ、アナキストは、分離したばかりの左翼エスエルを除いて、レーニンの単独権力奪取クーデターに猛反発した。
R・ダニエルズ『ロシア共産党党内闘争史』蜂起、連立か独裁か
その情勢の中で、レーニンも賛成していた憲法制定議会選挙が行われた、選挙結果は、ソヴィエト革命政党であるエスエルが第一党で３７０議席・得票率５２％を占め、ボリシェヴィキは、１７５議席・得票率２４％しか取れず、第二党だった。単独武装蜂起権力奪取クーデター政党ボリシェヴィキは、本来であれば、ソヴィエト内の社会主義政党である第一党エスエルに政権を譲るべきだった。しかし、もともと、マルクス、レーニンの革命権力思想には、政権交代という思考は存在していない。そこで、レーニンは、１９１８年１月１８日、憲法制定議会第一日目に、議会の他党派にたいして、とうてい飲むことができない要求をつきつけ、議会がそれを拒絶したからとの口実を付けて、憲法制定議会を武力解散した。レーニンの議会否定・武力解散の犯罪は、権力奪取クーデターの２カ月後に、早くも、全他党派や国民を反ボリシェヴィキの立場に移行させた。
中野徹三『社会主義像の転回』制憲議会解散論理、１９１８年１月１８日
稲子恒夫『ロシアの２０世紀－年表・資料・分析』憲法制定議会武力解散もクーデター
不破哲三『１９１７年「国家と革命」』暴力革命路線の理論のみ批判
アエラ『不破氏の今どきレーニン批判』(２０００年１月３１日号)
不破哲三は、日本共産党最高権力者として、党史上初めて、レーニンの一部を批判した。それは、『国家と革命』の暴力革命理論の個所だけを否定したもので、憲法制定議会の武力解散をきちんと批判していない。彼は、「スターリンのしたこと」を否定するが、「レーニンのしたこと」に関しては、何一つ批判・否定していない。レーニンの憲法制定議会武力解散のクーデター犯罪を無視したままで、国会の安定した過半数を基礎として、社会主義をめざす権力を改定綱領で唱えることは、ウソの空手形である。これは、日本国民を騙すマニフェストである。
〔公約４〕、生産者を抑圧する官僚体制をつくりあげた旧ソ連の誤りは、絶対に再現させてはならない
不破哲三が、旧ソ連の誤りと言う場合、それは、(１)スターリン以来の旧ソ連のことであり、(２)レーニン本人の誤り・犯罪を指していない。彼は、あらゆる報告・著書で、レーニンの最高権力者期間を、社会主義をめざした時期とし、スターリンから逸脱したと規定している。しかし、ソ連崩壊後に判明したことは、生産者を抑圧する官僚体制をつくりあげたのが、レーニンからだったということである。スターリンは、レーニンの犯罪的誤りを受け継いで、それをさらに発展させ、一段と歪曲したという役割である。８０％・９０００万農民の抑圧と「食糧独裁令」「穀物・家畜の軍事・割当徴発」による略奪と、その誤りに反乱した農民の数十万人を大量殺害したのはレーニンの殺人犯罪である。2％・３００万労働者の抑圧、「ストライキ」労働者の逮捕・銃殺もレーニンが指令した。これらのデータは膨大なので、別ファイルに載せた。
『「ストライキ」労働者の大量逮捕・殺害とレーニン「プロレタリア独裁」論の虚構』
『「反乱」農民への「裁判なし射殺」「毒ガス使用」指令と「労農同盟」論の虚実』
ダンコース『奪われた権力』第１章、レーニンがつくった官僚体制
不破哲三のように、スターリンとレーニンの断絶性のみを強調し、２人の連続性を認めず、これほどまでに、スターリン批判と、レーニン讃美とをきわだたせるロシア革命研究者は、現在の日本に一人もいないと言っていい。彼は、ソ連崩壊後の世界と日本において、稀有な存在である。
〔無視・隠蔽〕、レーニンが犯した数十万人の自国民大量殺人犯罪にほほかむり
ソ連崩壊後、「レーニン秘密資料」６０００点と膨大なアルヒーフ（公文書）が発掘・出版された。それによって判明してきたことは、スターリンによる４０００万人粛清犯罪の以前に、レーニンが犯した前衛党犯罪の事実だった。彼の根本的に誤った「市場経済廃絶」路線、その具体化としての「穀物・家畜の軍事・割当徴発」にたいして、ソ連全土で、農民・労働者・兵士らロシア革命勢力の総反乱が１９１８年春から１９２１年３月の「ネップ」導入までの期間に勃発し、ボリシェヴィキ一党独裁のクーデター政権は、崩壊の危機に直面した。その間、彼は、数十万人の自国民大量殺人犯罪を、秘密政治警察チェーカー２８万人と赤軍に命令して、「赤色テロル」型社会主義を構築した。
『｢赤色テロル｣型社会主義とレーニンが「殺した」自国民の推計』
ニコラ・ヴェルト 『共産主義黒書－犯罪・テロル・抑圧－〈ソ連篇〉』
スタインベルグ 『ボリシェヴィキのテロルとジェルジンスキー』(４人の写真)
ヴォルコゴーノフ『テロルという名のギロチン』『レーニンの秘密・上』の抜粋
不破哲三は、ソ連崩壊後に判明してきたレーニンの大量殺人犯罪に、見事なまでにほほかむりしている。ヨーロッパでは、大陸地続きにより、レーニン型前衛党指導者が、国民の認識程度との関係で、その事実をいち早く認知せざるをえなかったので、レーニン賛美・擁護を一切廃絶した。不破哲三が、レーニンによる数十万人殺人犯罪の事実を認めたら、その時点で、日本共産党は、ヨーロッパなみに、大転換・解党・崩壊せざるをえない。『レーニンと「資本論」』７冊を出版した熱烈なレーニン研究者不破哲三は、これらのデータを知らないはずがない。もっとも、彼が、高度に発達した資本主義国における、最後の生き残り前衛党最高権力者として、レーニンの大量殺人犯罪事実を認めるべきか、それとも、認めざるべきかと、「to be or not to be」という悩める心境にあるとは思えない。宮本顕治は、１９９７年、脳梗塞で政治活動不能になるまでスターリン主義者だった。不破哲三も、自己のアイデンティティを賭けて、死ぬまで、レーニン讃美者の姿勢を崩さないことであろう。
４、市場経済と社会主義とを接着させる「社会民主主義」者的「革命」家
〔小目次〕
4、「ネップ」＝レーニンによるクーデター政権生き残り策謀と大量殺人犯罪の併用
改定綱領における社会主義・共産主義内容は、いろいろ検討すべき問題を持っている。ここでは、その内の一つ、市場経済を通じての社会主義という理論について分析する。不破哲三は、日本共産党史上初めて、この理論を公式に提起した勇気ある指導者となった。ただ、この新理論の欺瞞性を解明するには、かなり専門的な経済学的・政治学的な分析も必要になる。しかし、マルクス研究家でもある不破哲三に対抗して、『資本論』の索引的な引用で、対抗をしても不毛の論争に陥るだけである。とりあえずは、あまり専門的にならないように書く。まず、日本語の定義を確認する。
この日本語は、２つの内容を持つ。
（１）、理念としての社会主義
これは、体制概念でなく、公正・平等・諸権利擁護拡大を目指す思想・要求・運動を意味する。マルクス・レーニン主義と断絶したヨーロッパ左翼も、この用語の使い方をしている政党がある。社会民主主義とは、広い意味で理念としての社会主義を、資本主義枠内での改良・改革として追求する運動である。
（２）、政治経済体制としての社会主義
不破哲三がどう言いくるめようとも、これは抽象的な概念ではない。現存した経済体制面では、(１)資本主義の商品・貨幣経済＝市場経済を廃絶した上で、(２)生産手段の私的所有の廃止、(３)国有化・公有化などの社会化と計画経済である。レーニンらボリシェヴィキは、権力奪取クーデターとともに、マルクスの根本的に誤った机上の空論「市場経済廃絶」路線を絶対的真理と信じた。そして、全他政党と８０％・９０００万農民の猛反対を無視し、ソ連型具体化として「食糧独裁令」を、１９１８年５月から、秘密政治警察チェーカーと赤軍の社会主義国家暴力装置を使って、数十万の反乱農民を殺害しつつ、強行した。
その「穀物・家畜の軍事・割当徴発」をした結果は悲惨だった。レーニンの誤りと大量殺害犯罪にたいし、農民・労働者・兵士の総反乱がソ連全土で勃発し、１９２１年までに、ソ連の工業・農業は破綻した。それだけでなく、１９２１年２月、そのままでは、ボリシェヴィキ一党独裁政権の崩壊が目前となった。１４カ国のすべてにおいて、マルクスの「市場経済廃絶」路線が破綻し、まったく誤った理論だったことが歴史の実験で証明された。ここでは、政治体制面を省略する。
『反乱農民への「裁判なし射殺」「毒ガス使用」指令と「労農同盟」論の虚実』
不破哲三が初めて提起した新理論は、改定綱領における他の個所を見ても、理念としてでなく、政治経済体制としての社会主義を指していることは明白である。そして、資本主義の政治経済体制を否定し、それに対立する体制概念としての社会主義とは、現存した(する)１４カ国の社会主義政治経済体制以外にありえない。
市場経済とは、商品経済、その商品交換・流通手段としての貨幣経済のことである。それは、物々交換時代からあったが、労働力までも全面的に商品化されたのは、資本主義経済システムの段階になってからである。よって、労働力の全面的商品化を含む市場経済とは、資本主義経済と同じことである。マルクスの『資本論』を読めば、その必然的結論は、商品・貨幣経済廃止に基づく資本主義市場経済の廃絶に行きつく。その市場経済廃絶実験が、１４カ国のすべてにおいて失敗したことは、『資本論』の分析過程のどこかに、マルクスの根本的誤りがあったことを意味している。今は、この『資本論』の誤りに関する検討をしない。
イタリア共産党は、マルクス・レーニン主義との断絶を宣言した。左翼民主党への大転換を、断絶的刷新と規定した。フランス共産党も、ソ連崩壊後、マルクス主義は根本的な誤りを持っているとし、マルクス主義の放棄を党大会で決定した。
不破哲三は、レーニン研究者であるとともに、マルクス・エンゲルス研究もしている。むしろ、最近では、マルクスの『資本論』研究の著書を、異様なまでに、続々と出版している。彼は、『マルクスと「資本論」』３冊、『エンゲルスと「資本論」』２冊、『レーニンと「資本論」』７冊、『「資本論」全３部を読む』７冊を執筆・出版した。さらに、『マルクス資本論草稿集・全９巻』(定価９５０００円)も出版させただけでなく、党中央イデオロギー幹部数人にも、｢資本論｣解説の著書を書かせ、出版させている。彼の『資本論』研究の結論は、市場経済とは、資本主義経済と同一のことではなく、社会主義経済と共存できる原則となった。彼が、なぜ、ここまで、『資本論』を持ち上げるのかという真意は、もう少し、彼の言動を観察しないと分からない。２１世紀の日本において、日本共産党を生き残らせる戦略のキーポイントの一つに、マルクス『資本論』を位置づけようとしていることだけは、確かである。
市場経済の存続とその弊害を改良・構造改革することは、社会民主主義の基本原理である。「市場経済廃絶」を結論とするマルクス・レーニンの社会主義革命理論にたいして、不破哲三が、市場経済の存続を社会主義段階における絶対必要条件と認めたことは、彼が、マルクス・レーニンの基本原理の一つを放棄して、社会民主主義者に大転換したことを意味するのだが。それとも、「社会民主主義」者的「社会主義革命」家としての二重人格を公然と、なんの恥かしげもなく、登場させたか。
もう少し、彼の『資本論』関連著書の４種類１９冊という異様な執筆・連続出版の意図を考える。彼は、いったい誰をその著書の対象としているのか。というのも、ソ連崩壊後の今日、日本の大学経済学部において、経済原論としてのマルクス主義経済学講座は、ほぼ全滅している。マルクス主義経済学者も自信喪失状態に陥り、『資本論』に関する論文を発表する学者も皆無になった。よって、全国の経済学部生は、マル経講座・『資本論』も知らないままで、卒業している。
民青なら、彼の読者になるのか。１９７２年、宮本顕治は、対民青クーデターとしての「新日和見主義分派」事件を起した。その結果、当時２０万人いた民青は、現在、公表２００００人、民青中央発表の同盟費納入率全国平均４０％で、８０００人と、事実上の壊滅状態になっている。不破哲三は、その民青同盟員たちに、自分の『資本論』関連著書を学習せよと指令するつもりなのか。
市場経済を、社会主義段階でも必要不可欠の経済システムと認め、改定綱領に明記したことは、社会民主主義者不破哲三の画期的な功績である。マルクス・レーニンの「市場経済廃絶」社会主義路線の実験が、１４ｶ国のすべてで破綻した。そこで、世界の政治体制の面、および、地政学的な面から見て、４つの転換方向が発生した。
〔転換方向１〕、ヨーロッパの資本主義国共産党
それらの共産党は、ポルトガル共産党を除いて、「市場経済廃絶」路線のマルクス・レーニンの理論は誤りとして、共産党そのものを転換・解党させ、あるいは、崩壊した。それらの共産党は、社会民主主義政党になった。
〔転換方向２〕、ソ連・東欧１０カ国のレーニン型前衛党
これらは、体制崩壊とともに、「市場経済廃絶」型社会主義路線を放棄し、市場経済の資本主義路線に転換した。それら社会主義政党は、すべて社会民主主義政党に転換した。
〔転換方向３〕、残存できた４カ国の前衛党
４党は、１０カ国のいっせい崩壊を目にして、自国・党がドミノ的に崩壊する恐怖に慄いた。彼らの最大の価値基準は、自分たちの党官僚システムと一党独裁体制を守ることである。その目的のためには、手段を選ばないというのが、権力を握ったレーニン型前衛党トップたちの権力倫理である。そこで、中国共産党とベトナム共産党は、「市場経済廃絶」型社会主義体制から、市場経済型社会主義＝社会主義市場経済体制に大転換した。鄧小平は、「市場経済は、資本主義そのものではない」という理屈を付けて、その転換を合理化した。中国・ベトナムにおいて、資本主義市場経済の弊害がいくら発生・拡大しようとも、共産党一党独裁の政治体制さえ安全なら、党官僚は安心できる。
しかし、この新体制の本質は、現存する社会主義の一党独裁型政治・「市場経済廃絶」型経済体制から、一党独裁型政治・資本主義経済体制への後退である。これは、当然ながら、マルクス・レーニン理論の放棄・修正である。中国・ベトナム共産党は、アジアに特有な開発独裁型資本主義体制と同じ性格の政治経済システムを選択した。ただし、異なる点がある。それは、(１)開発独裁型政党が、普通選挙の洗礼を受ける自由主義政党や軍事クーデター政党ではないのにたいし、(２)レーニン型前衛党という秘密政治警察・軍隊という強大な国家暴力装置と一体で、かつ、普通選挙を一度もしたことがない党治国家・軍事独裁政党だ、ということである。
中野英夫『中国・福州からの通信』中国の市場経済型社会主義の表と裏
〔転換方向４〕、高度に発達した資本主義国において、唯一残存する日本共産党
ポルトガル共産党は、発達した資本主義国共産党ではない。インド共産党は、実態がよく分からない。高度に発達した資本主義国に限定すれば、生き残っているレーニン型前衛党は、日本共産党ただ一党だけになった。不破・志位・市田は、日本共産党が世界最大と力説しているが、世界中で一党しかなければ、それが最大にきまっている。彼らは、こういう詭弁を平気でよく使う。日本共産党は、暴力革命を否定した。しかし、前衛党概念、プロレタリア独裁理論、Democratic Centralismの組織原則を堅持、または隠蔽堅持している。その隠蔽度合については、第２２回大会の規約全面改定問題で分析した。
日本共産党の党勢力ＰＨＮ(党員Ｐ・赤旗日刊紙Ｈ・日曜版Ｎ)は、１９８０年をピークとして、２８年間歯止めのない減退を続けている。選挙結果では、前回総選挙・２００１年参院選・２００３年統一地方選と、３連続の惨敗をしている。ここに至って、不破哲三は、このまま、なし崩し的に、共産党をじり貧的瓦解させるのか、それとも、ヨーロッパ共産党型大転換かの選択肢を突き付けられた。
理論家であるとともに、有能な詭弁家である不破哲三は、生き残りを賭けて、それら２つの選択肢を拒否し、第３の道を決断した。その理論内容は、資本主義市場経済と社会主義政治体制とを、無理矢理接着させる道である。それが、市場経済を通じての社会主義という理論である。ただし、これは、彼の独創的理論ではない。綱領その報告においても、彼は、中国・ベトナムの政治経済体制を、市場経済を通じて社会主義をめざしていると規定し、その経済面での発展を高く評価している。
そして、北京の学術講演においても、その規定をし、中国共産党にたいする同志的連帯を表明した。現在の中国・ベトナムの生き残り策謀である市場経済型社会主義理論と実践だけではない。それが、レーニンの「ネップ」評価である。不破哲三は、「ネップ」も、また、市場経済を通じて社会主義と規定し、絶賛した。よって、資本主義市場経済と社会主義政治体制とを接着させる彼の詭弁理論の根拠は、中国・ベトナムと「ネップ」という３つがある。そこで、「ネップ」の評価を検討する。
不破哲三『レーニンと市場経済』中国での講演、｢ネップ｣の絶賛評価
４、「ネップ」＝レーニンによるクーデター政権生き残り策謀と大量殺人犯罪の併用
国際的に見れば、マルクス・レーニン主義理論とその体制・政党は、２１世紀、まさに崩壊の最終段階にさしかかっている。不破哲三は、日本共産党の生き残りを賭けて、最後の知恵を絞った。その脱出口が、中国・ベトナムの社会主義市場経済とレーニンの「ネップ」だった。彼は、２党の生き残り策謀と、「ネップ」と、自分の理論を、４つとも市場経済を通じての社会主義と規定している。
ところが、中国・ベトナムが行っている社会主義市場経済の実態、その性格は、２党の一党独裁生き残り策謀としての共産党の秘密政治警察システム・軍事独裁型党治国家を堅持したままでの資本主義経済体制への路線大転換と規定できる。それは、マルクス・レーニンの「市場経済廃絶」路線に基づく壮大な実験が、完全に破綻し、悲惨な実験結果をもたらしたことを、かつ、資本主義市場経済システムに全面撤退せざるをえないことを、崩壊した１０カ国と合わせて、告白したことを意味する。このような大転換・全面後退路線を、市場経済を通じての社会主義と規定し直す詭弁を組み立てる人は、２党指導者を除けば、世界中でも、今や、不破哲三しかいない。
その詭弁理論を正当化するのには、２つの理論的操作が必要になる。
〔詭弁正当化の理論的操作１〕、マルクスの『資本論』解釈を大転換
不破哲三は次のように、マルクス解釈をした。マルクスは、市場経済を否定面だけでなく、需要と供給の関係調節など肯定面を高く評価している。しかも、市場経済は、資本主義そのものではなく、社会主義段階になっても有効なシステムとしている、とマルクスは言っている。鄧小平の市場経済解釈理論と、私(不破)の改定綱領は同一である、とすることである。彼が、『資本論』関連４種類１９冊の連続出版をした真意は、ここにある。
中野徹三のマルクス・エンゲルス解釈と比べれば、不破哲三解釈の欺瞞性が明らかになる。
中野徹三『マルクス・エンゲルスの未来社会論』市場・貨幣経済の廃絶
〔詭弁正当化の理論的操作２〕、レーニンの｢ネップ｣を逆転評価し、それこそ、市場経済を通じての社会主義をめざした偉大な業績だったと絶賛
そして、不破哲三こそ、レーニンの遺志を受け継ぎ、高度に発達した資本主義国において、世界で初めての社会主義・共産主義を実現させる｢革命｣家であるというアイデンティティ宣言をすることである。
不破哲三『レーニンと市場経済』中国での講演、｢ネップ｣の絶賛評価
彼は、この講演で、｢ネップ(新経済政策)｣は、農民との関係改善めざしての提案と決断だったとし、市場経済をつうじての社会主義への路線を確立したと、持ち上げた。詳細は、この不破講演にある。しかし、ソ連崩壊後、彼のような｢ネップ｣評価をする経済学者、ロシア・ソ連研究者は、日本に一人もいない。ヨーロッパにもいない。
私の｢ネップ｣評価をのべる。｢ネップ｣は、１９２１年３月のソ連共産党(ボリシェヴィキ)第１０回大会で決定された。レーニンとボリシェヴィキは、権力奪取クーデター時点以来、マルクスの『資本論』その他から、「市場経済廃絶（貨幣経済も廃止）」の社会主義路線こそ絶対的真理であると信じた。
そして、１９１８年５月、そのロシア型具体化として「食糧独裁令」を発令した。さらに、ペトログラード・モスクワなど大都市に続いて、農村に階級闘争を勃発させるために「貧農委員会」を組織させる指令を出した。４月２９日には、全ロシア中央執行委員会の場において、レーニン・トロツキー・スヴェルドロフらが、ボリシェヴィキとプロレタリアート側が、農村・小ブルジョア農民に内戦を仕掛けるという発言をした。それは、５月２５日、国外撤退中のチェコ軍団が、レーニンの不当な武装解除命令に反乱を起し、いわゆる内戦が始まった時よりも、前だった。内戦を始めたのは、レーニンの側だったという決定的な証拠議事録が、ソ連崩壊後に発掘された。
『「ストライキ」労働者の大量逮捕・殺害とレーニン「プロレタリア独裁」論の虚構』
レーニンらによる農村・農民にたいする内戦開始の発言議事録、１９１８年４月２９日
８０％・９０００万農民は、二月革命後の１９１７年５月頃から、ボリシェヴィキとの関係は一切なく、貴族・地主の土地を取り上げ、農民に平等に分配する土地革命に総決起していた。土地を公平に分配し、地主とともに富農もなくなり、貧農もほとんどなくなった農村状況になった。土地要求に次ぐ、農民の第２要求は、穀物・家畜の自由商業だった。レーニンの「食糧独裁令」は、農民とその要求に真っ向から対立した。それだけでなく、レーニンは、農民にたいして、ボリシェヴィキ側から内戦を仕掛けた。
土地革命による平等分配により、特殊事例を除いて、貧農がいなくなっていたため、レーニンらによる机上の空論「貧農委員会」は、半年もたたず、失敗した。飢餓は深刻になった。レーニンは農民の要求を受け入れるどころか、逆に、秘密政治警察チェーカーと赤軍、都市プロレタリアートによる食糧徴発隊を農村に大量投入し、「穀物・家畜の軍事・割当徴発」をした。これは、農民に農業用品・日用品も渡さず、価値暴落の紙幣を渡しただけの穀物・家畜の収奪作戦だった。
梶川伸一『飢餓の革命 ロシア十月革命と農民』１９１８年
梶川伸一『ボリシェヴィキ権力とロシア農民』戦時共産主義
食糧独裁令の割当徴発とシベリア、タムボフ農民反乱を分析し、
レーニンの「労農同盟」論を否定、「ロシア革命」の根本的再検討
農民は、ソ連全土で、レーニンの穀物・家畜収奪路線にたいして抵抗し、反乱を起した。レーニンは、反乱農民に「富農」「人民の敵」というウソのレッテルを貼り付け、チェーカーと赤軍に抵抗・反乱農民の大量逮捕・殺害を指令した。その一つが有名な絞首刑命令である。農民だけでなく、飢餓に苦しむ労働者・兵士たちも、それら独自の要求を掲げて、ソ連全土で、ボリシェヴィキ一党独裁にたいする総反乱に決起した。１９１８年春以来のレーニンの誤りと大量殺人犯罪への総反乱によって、１９２０年から２１年春にかけて、ボリシェヴィキ一党独裁のクーデター政権は、崩壊の危機に直面した。(１)タンボフ・ウクライナ・西シベリアの３大農民反乱、(２)ペトログラード労働者の全市的ストライキ、(３)革命の栄光拠点クロンシュタット・ソヴィエトの水兵・労働者１４０００人の１５項目の要求である。
レーニンとボリシェヴィキは、一党独裁クーデター政権崩壊の恐怖に打ち震えた。レーニン政権の本質は、秘密政治警察・赤軍を国家暴力装置の根幹にした大量殺人の「赤色テロル」型社会主義になっていた。レーニンは、クーデター政権生き残り策を必死で考えた。１９２１年３月、第１０回大会前後で、彼が執行したのが、９０００万農民の第２要求に屈服・譲歩し、穀物・家畜の自由商業、市場経済を認める「ネップ」の導入だった。しかし、彼は、あくまで、一党独裁クーデター体制を維持するとしいう反民主主義的意図を放棄しなかった。
そこで、彼は、農民への屈服の一方で、全面的な政治弾圧と党内引き締めを同時に行う。それが、(１)ペトログラードの「ストライキ」労働者数千人逮捕と５００人の幹部即時銃殺、(２)クロンシュタット・ソヴィエトへの５万人の赤軍による武力鎮圧、クロンシュタット水兵・労働者１４０００人の皆殺し政策、(３)タンボフの「反乱」農民にたいする「裁判なし射殺」「毒ガス使用」指令、（４）党内における分派禁止規定という党内民主主義破壊路線の導入、(５)分派参加の規律違反、不活動などを口実として、全党員の１／４に相当する１３６８３６人を除名(ダンコース『ソ連邦の歴史１－レーニン、革命と権力』新評論、１９８５年、Ｐ．２２３)などだった。
『「反乱」農民への「裁判なし射殺」「毒ガス使用」指令と「労農同盟」論の虚実』
『レーニン「分派禁止規定」の見直し』１９２１年ボリシェヴィキ政権崩壊の危機
大藪龍介『党内分派の禁止と反対政党の撲滅』ネップと同時遂行の赤色テロル
稲子恒夫『１９２０、２１年のソ連とソ連共産党年表』不支持者・政党の排除・浄化テロル
Ｐ・アヴリッチ『クロンシュタット１９２１』クロンシュタット綱領、他
イダ・メット『クロンシュタット・コミューン』クロンシュタット綱領、他
これらの両面が、「ネップ」の本質であり、「ネップ」と同時執行の大量殺人犯罪である。まさに、「ネップ」期こそ、レーニンの大量殺人犯罪は、質量とも、もっともひどい「赤色テロル」段階になっていた。
不破哲三は、「ネップ」期における、(１)レーニンの農民への譲歩と、(２)一方での同時大量殺人犯罪という両面を総合的に捉えるのではなく、新経済政策としての市場経済の側面だけを切り離している。それだけでなく、それをレーニンが市場経済を通じての社会主義路線を進めたと、絶賛し、レーニン・中国・ベトナムと不破哲三の改定綱領とを同列にしている。これほど、恣意的な歴史解釈はない。
ちなみに、レーニン研究者不破哲三が読んだはずのレーニンメモ・発言を２つ確認しておく。彼の恣意的な取捨選択ぶりは、さすが日本共産党きっての詭弁の天才と言われるだけのことはある。
〔第１の証拠〕、それは、１９２１年３月第１０回大会演説のための「レーニン秘密メモ」である。P･アヴリッチが、『クロンシュタット１９２１』(Ｐ．２７１)で公表した。レーニンは、そこに、クロンシュタットの教訓：政治学では――党内における隊列(および規律)の閉鎖、メンシェヴィキと社会革命党にたいする一層の闘争。経済学では――中産農民を可能なかぎり満足させること、と記していた。
〔第２の証拠〕、これは、「戦術的後退」作戦であり、「戦略的転換」ではない。たしかに、「ネップ」後、穀物・家畜が自由商業で出回るようになり、農民は、現物税を収めるようになった。レーニンは、｢ネップ｣を成功させるために、必死で演説し、具体的指示を出した。なぜなら、その「一時的な戦術的後退」作戦が失敗すれば、即座に、ボリシェヴィキ一党独裁クーデターの挫折、レーニン・クーデター政権の崩壊になるからである。彼は、その予想外の進行を見て、戦術的効果を評価する発言もしている。しかし、あくまで「後退・退却」とする観点を変更していない。
なぜなら、「ネップ」は、社会主義政権が、資本主義経済に後退する政策を、権力奪取クーデターから約３年半も経ってから、一時的にせよ、採らざるをえないという「屈辱的な大敗北」だったからである。政治局、ボリシェヴィキ内で、論争になったテーマは、この後退をいつまで、どの資本主義経済レベルまで続けるのかということだった。「いつになったら、後退を中止し、社会主義農業政策に戻るのか」が、重大関心事だった。「ネップ」期間中、いかに秩序だった後退を行うのかが、政権崩壊のがけっぷちから、生き長らえる最大問題だった。
レーニンは、１９２２年３月においても、この「後退、退却」観を堅持していた。Ｒ・ダニエルズ『ロシア共産党党内闘争史』(P.１３１)を、そのまま引用する。一九二二年の三月末から四月はじめにかけて開催された第一一回党大会は、レーニンの指導下における最後の党大会だった。「更にいっそうの団結と規律」というのが党指導者の考えた主要なテーマだった。レーニンは時を移さず、党の団結を維持するには無慈悲さが必要なのだ、と断じた。「もし人々が狼狽をもちこむならば――こういう瞬間には、どんなわずかな規律紊乱も、厳重に、手ひどく、容赦なく罰する必要がある」。ネップは一種の退却であるから、党の隊列における秩序はそれだけるる必要である。「本物の軍隊にこのような退却が行なわれるときは、機関銃をすえる。そして正常な退却が無秩序な退却になっていくときには、射て！という命令がくだる。しかもそれは正しいのである。」
レーニンは、「ネップ」開始１年後においても、それが、資本主義経済への「無秩序な退却」を引き起こさないかと、恐怖のストレスにさいなまれていた。ヴォルコゴーノフは、『レーニンの秘密・上下』(ＮＨＫ出版、１９９５年)において、「レーニン秘密資料」６０００点を最初に閲覧・研究した共産党幹部として、秘密メモや政治局員の証言などから、当時のレーニンがそううつ病状態になっていたと記している。
レーニンが最初に脳卒中の発作を起したのは、この第１１回大会約２カ月後の１９２２年５月２６日だった。無秩序に陥る危機を阻止する方策として、レーニンの採った政策が、上記５項目の政治弾圧、大量殺人犯罪と大量除名だった。一党独裁クーデター権力を守るという目的のためには、「一時的後退、退却」作戦をする一方で、大量殺人犯罪「射て！」と大量除名という手段を採ることは、権力を取ったマルクス主義者に許されている、というのが「ネップ」期におけるレーニンの最高権力者思想である。これは、最高権力者となったレーニンが死ぬまで抱いた、目的と手段の関係倫理である。
まさに、その１９２２年前半、第１１回大会前後の時期に、レーニンは、トロツキーに「射て！」と命令し、教会財産没収・略奪とともに、聖職者数万人銃殺・信徒数万人殺害の「赤色テロル」を遂行した。
５月２６日の第１回発作の症状が少し治ると、１９２２年後半、レーニンは、共産党に参加せず、協力しない知識人に、「反ソヴィエト」というウソのレッテルを貼り付け、彼ら数万人を逮捕・国外追放・強制収容所送りにした。秘密政治警察チェーカーは、これに「作戦」と名付け、レーニン自身が、追放対象の知識人リストも作った。この２つの「赤色テロル」は、レーニンが仕掛けた旧ロシア文化の人的絶滅作戦だった。大量殺人・追放作戦が、脳卒中病人レーニンにもたらすストレスは強烈だった。
これらの「赤色テロル」作戦を遂行中の１９２２年１２月１６日、レーニンは、第２回目の脳梗塞発作で倒れた。これにより、彼の５年２カ月間のボリシェヴィキ一党独裁最高権力者活動は、事実上終わった。「ネップ」は、レーニンによる大量殺人「赤色テロル」と一体だった。
１９２２年に「レーニンがしたこと」と２回の脳卒中発作
『「反ソヴェト」知識人の大量追放「作戦」とレーニンの党派性』
稲子恒夫『１９２２年のソ連とソ連共産党年表』不支持者・政党の排除・浄化テロル
山内昌之『革命家と政治家との間―レーニンの死によせて』レーニンの人間性とストレス
ソ連・東欧と地続きのヨーロッパ諸国民、そこの共産党は、ソ連崩壊後に発掘・公表されたレーニンの大量殺人犯罪データを目にして、これ以上、レーニン擁護・「ネップ」讃美はできないとして、レーニンと断絶した。不破哲三の「ネップ」評価と私の「ネップ」評価とでは、天と地の開きがあるが、このファイルを読まれる方は、「ネップ」をどう評価するであろうか。できれば、２つを見比べていただきたい。
不破哲三『レーニンと市場経済』中国での講演、｢ネップ｣の絶賛評価
『「反乱」農民への「裁判なし射殺」「毒ガス使用」指令と「労農同盟」論の虚実』
ファイル末尾 誤りの遅すぎた撤回としての「ネップ」と５００万人飢饉死亡者
５、討論・代議員選出での抑圧・排除をする「反民主主義」者
〔小目次〕
１、４つの党大会における党内民主主義抑圧・破壊行為のデータ
綱領全面改定をする党大会の運営には、２つの問題がある。第１、改定綱領の討論方針、その討論過程が、実態として民主的に行われるかどうか。第２、党大会代議員選出が公正、かつ、民主的になされるかどうか、という問題である。
〔小目次〕
１、第８回大会･１９６１年における綱領採択めぐる宮本顕治の策謀
２、第１７回大会・１９８５年における東大院生支部の宮本勇退決議案提出問題
３、第２０回大会・１９９４年における｢誹謗・中傷｣項目新設の規約問題
４、第２２回大会・２０００年におけるＨＰ「さざ波通信」批判の大キャンペーンと査問・除籍
１、第８回大会の６１年綱領採択めぐる宮本顕治の策謀
ここでの宮本顕治の満場一致大会めざす策謀は、小山弘健の２論文で暴露・証明された。この策謀内容については、当時の中央委員片山さとしも、『日本共産党に与える書』(三一書房、１９７４年、Ｐ．１７５)で、簡潔に５項目にまとめている。
（１）、自由な討論の禁止。中央委員会の密室をのぞいて、自由な討論は全然しなかった。中央委の討論は発表しなかったし、機関紙誌の上でも自由な討論はしなかったし、討論雑誌もださなかった。大会前討論ということで党の各組織で口頭の討論がある程度やられたことは事実であるが、その討論の原則として「アカハタ」の主張がのべたのは、次のようなものだった。
「党大会準備のなかでの討議は……賛成か反対かの意見をのべあうことであってはならない。……議案を正しく理解し、討論して、その内容を豊かにすること……党員は、議案を通じて自分の見解と態度に誤りがあればそれをただし、その意見を大会に集中すること……」。自由な討論とはあくまで議案が正しいかどうかを討論することである。
（２）、反対意見の発表禁止。中央委員の反対意見さえ、発表させようとしなかったし、下部党員のそれはいうまでもない。
（３）、反対意見者は代議員にしなかった。東京ではそれを監視するために、袴田が組織したといわれる中国帰りの「督戦隊」が下部組織をまわり、反対意見者を侮辱するような態度をデモンストレートしていた。
（４）、反対意見者は党綱領が採決されたら、除名するというおどかしもおこなわれた。また機関からはずすという説得兼おどかしもあったようだ。
（５）、その結果反対意見の中央委員の排除。彼らは代議員にもなれず、次期中央委員からもはずされ、つまり中央委員会から排除されて、ひら党員におとされて、どこかの細胞員としていわば軟禁状態におかれ、党内外でのいっさいの発言のチャンスを完全に失うことになる。
２、第１７回大会・１９８５年における東大院生支部の宮本勇退決議案提出問題
東大院生支部が、宮本勇退決議案を党大会に提出しようとして、党中央と相談しつつ、かつ、正規に東京都党会議代議員を選出した。それにたいして、宮本顕治らが、彼らを分派活動・規律違反とでっち上げて、代議員権を不当に剥奪した事件である。この党内犯罪の共同正犯は４人である。宮本顕治・上田耕一郎・赤旗記者河邑重光、党中央青年学生対策部専従志位和夫である。この提案運動と粛清事件については、別ファイルで書いた。
『不破哲三の宮本顕治批判』(秘密報告)東大院生支部の宮本勇退決議案事件
３、第２０回大会・１９９４年における｢誹謗・中傷｣項目新設の規約問題
党規約改定で、(旧)規約前文(三)に「誹謗、中傷に類するものは党内討議に無縁である」とする文言を入れた。それは、党内民主主義を抑圧する役割を果たした。党大会準備の過程で、宮本議長８５歳高齢による引退要求、意見が党内外から多数出されマスコミでもほとんどが引退勧告を打ち出した。党内で大会決議案への正規の文書意見が３６７通提出された。そのうち３２７通を｢赤旗評論特集版｣で６回にわたり掲載したが、不掲載の４０通、１１％のほとんどが宮本退陣意見書だった。宮本顕治はその意見内容を「誹謗、中傷」と断定し、不掲載を強烈に主張した。それ以後、党内では、党中央批判意見にたいして「誹謗、中傷」レッテル貼りが乱発されるようになった。党中央批判の抑圧にとって、これほど簡便な規約用語はない。
『ゆううつなる党派』指導部統制、異論排除システム、「誹謗、中傷」条項
高橋博彦『論争無用の科学的社会主義』著書内容を「誹謗、中傷」として査問・除籍
４、第２２回大会・２０００年におけるＨＰ「さざ波通信」批判の大キャンペーンと査問・除籍
「さざ波通信」とは現役党員グループが運営するＨＰである。「ＪＣＰウォッチ」は、日本共産党問題を討論するＨＰである。いずれも、掲示板を持ち、そこで共産党の路線・政策について活発な賛否討論がなされている。発言者は、党員・支持者・共産党批判者などさまざまで、アクセスは、それぞれ１００万件を超える人気掲示板である。
宮本顕治脳梗塞後、不破・志位・市田らは、党員がそこで発言することを、Democratic
Centralismの規律違反と断定し、第２２回大会前後で、それら２つの掲示板批判大キャンペーンを展開した。党大会の上り・下りの４７都道府県党会議の９４回、３１６地区党会議の６３２回で、批判した。それだけでなく、２つの掲示板発言者全員をチェックし、共産党員らしき者・発言内容をピックアップし、その所属都道府県委員会と地区・本名を特定する作業を全党的に行った。そして、発言者を規律違反容疑者として、呼び出し、調査という名前の査問をし、除籍という党外排除を断行した。
ＨＰで具体的証言をした人は、京都府委員会の嫌煙家さん、秀樹さん、非党員のＲＯＮさんであるが、調査(＝査問)されたという人は、ＨＰ発言で１０数人おり、全体で数十人が規律違反容疑者として査問されたと思われる。これは、日本共産党が、まさに、Ｄigital Ｐoliceに変質したことを示すものである。「ＪＣＰウォッチ」は、その後、閉鎖された。ＩＴ社会になっている世界の政党において、このような形で、インターネットＨＰ攻撃をし、掲示板発言者を規律違反として摘発・査問・排除している政党は、中国共産党と日本共産党の２つだけである。
『インターネットＨＰ攻撃政党』『掲示板発言者摘発・粛清政党』
２、臨時党大会で綱領全面改定をしようとした策謀と挫折
２０００年１１月の第２２回大会、日本共産党は、４３年ぶりの規約全面改定をした。そこでは、民主集中制という略称のDemocratic Centralismを堅持した。綱領内容と同じという理由で、規約前文を削除したことに伴い、「前衛」文言もなくなった。マスコミは、前衛党思想の放棄と錯覚したが、実態は、前衛党概念を放棄していない。なぜなら、不破哲三は、規約全面改定の報告で、(１)前衛党概念を高く評価しており、(２)理論誌『前衛』の名前も継続しているからである。
そこには、もう一つ、重大な規約改悪陰謀があった。それは、「規約第４章第１９条、中央委員会が必要と認めて決議した場合、前大会の代議員によって、３カ月以内に臨時党大会を開く」という黒太字文言の新規挿入をしたことである。その前後経過を見ると、この新規文言の意図が明白になった。不破哲三の狙いは、規約全面改定と綱領全面改定とを、ワンセットとし、同一代議員の満場一致によって、第２２回大会と第２３回臨時大会で、強行採択することだった。
その証拠がある。（１）、中央委員会書記局は、規約全面改定案が党大会で採択される前の上り都道府県党会議で、党大会代議員の補欠代議員を通常の数倍、１０％以上も選ばせた。代議員は約１０００人であるので、１００人以上の補欠をなぜ必要としたか。それは、改定綱領を、数カ月後から半年後の臨時党大会で、同一代議員によって満場一致採択するには、代議員の病気・任務変更による補欠入れ替えを必要としたからである。これは、多数のＨＰ発言、私の直接ルートでも確認できている。
（２）、臨時党大会に向けた改定綱領が、ほとんど完成しているという情報も入手した。私は、党中央ルートと、党中央社会科学研究所ルートの２つで確認した。党大会が２０００年１１月であるから、改定綱領を同一代議員で採択する時期は、２００１年７月の参院選前だった。
４３年ぶりの綱領全面改定をするのに、改めて代議員選出をしないで、第２２回大会の満場一致型代議員によって、採択しようとすることは、まさに、不破哲三の反民主主義的暴挙だった。彼は、この連続党大会によって、４３年ぶりの規約・綱領全面改定をなしとげ、宮本顕治と宮本秘書団私的分派体制から、不破・志位・市田体制に転換したことを、党内外に宣言しようと企んだ。彼が、それによって、「社会民主主義」者的な｢レーニン讃美革命｣家というアイデンティティ宣言をすることは勝手である。しかし、このような｢反民主主義｣者的な手口で、綱領全面改定を企んだことに、党内外から強烈な批判・反発が、党中央に殺到した。
第２２回大会当時の臨時党大会問題
それらの暴露情報と反発に驚いて、党中央側はうろたえた。党内外批判を怖れた不破側の諸事情や思惑によって、彼の策謀は撤回され、挫折した。２００１年７月参院選結果は、共産党惨敗だった。彼は満を持して、今回、２００３年１１月２２日の第２３回大会招集を決定した。ところが、不破・志位・市田らの思惑にとって、不幸なことに、思わぬ誤算が２つも同時発生した。(１)筆坂・志位問題と、(２)２００３年１１月の解散・総選挙と党大会の重複問題である。(１)による共産党のイメージダウンは、綱領全面改定作戦の出鼻をくじいた。(２)は、不破・志位・市田らの解散・総選挙時期に関する読みの初歩的欠陥を露呈した。
３、党内討論・代議員選出のやり方
〔小目次〕
３、党内討論における民主集中制の原則厳守と規律違反者の調査（＝査問）
７、下り党会議の機関役員選出(＝任命)における異論・反対者の排除、専従解任
討論と代議員選出は、結局、第８回大会以来の反民主主義的なやり方で行われた。１９８０年の党勢力ピーク時点から、２８年間、歯止めのない党勢ＰＨＮ減退を続けている要因の一つは、党大会の運営システムが、常任幹部会独裁による反民主主義的なやり方で停滞しており、Democratic
Centralismという党内民主主義を破壊する犯罪的組織原則が、党大会に向けた党員の発言・活動意欲を抑圧していることにある。
本来なら、(１)改定綱領に関する討論に限って、党内外をかまわず、フリー討論にする。(２)インターネットＨＰ掲示板での党内外討論を解禁する。(３)支部の枠を越えた横断的水平的討論・交流を認める。(４)全党横断的な交流に基づく綱領修正提案権を与える。（５）横断的なグループによって、党大会代議員を推薦・立候補するという党員権を第２３回大会に限って、実験的に許す、などと党大会の運営を大転換すれば、党大会に関する党員の姿勢は一変する。
しかし、これらは、Democratic Centralismの実質的な放棄路線になるので、不破・志位・市田らが決断するはずもない。解散・総選挙時期の初歩的読み誤りによって、第２３回大会を２００４年１月１３日にまで延期せざるをえなくなったから、これらは、起死回生の大転換作戦になるはずだったが。しかし、これは、夢物語だった。
『イタリア左翼民主党の規約を読む』党大会運営のやり方
福田玲三『党史上初めて対案提出』フランス共産党３２回大会運営のやり方
以下、不破・志位・市田らの語り口を使って、討論と代議員選出のやり方を検証する。
改定綱領は、常任幹部会と幹部会が決定した。第７回中央委員会総会は、４３年ぶりの全面改定案を、３日間で１６６人中４０人だけが発言し、全員一致で決定した。その内、１０数人の常任幹部会員・幹部会員も積極的に賛成の立場に基づく指導的発言をした。それを除く中央委員で発言・質問したのは、２０数人だけだった。幹部会員５７人を含む１６６人中、保留・反対者が一人もいなかったことは、改定綱領内容が、理論的にいかに優れているのかを示すとともに、中央委員１６６人の一枚岩的団結を証明した。
なぜなら、幹部会員を除く１０９人－２０数人の発言・質問者＝７９人・７２％以上の中央委員は、４３年ぶりの改定綱領を初めて聞いたのにもかかわらず、３日間に一言の発言・質問もできないほど、練り上げられた完成品だったからである。よって、これは、党大会議案であるとともに、中央委員会満場一致決定である。
改定綱領を受け止める姿勢が重要である。その正否を検討するのではなく、まず、中央委員会決定としての議案を正確に理解し、学習することがポイントである。党機関は、２５０００支部と４０万党員にこの趣旨を徹底させる。正否を討論しようとする支部には、これが、党中央の全員一致決定であることを強調する。
２、読了運動・読了率と届け運動・届け率のアップ
この１０数年来、各中央委員会総会決定の読了率は３０％前後にとどまっている。党大会政治報告・諸決定の読了率も５０％台である。第２２回大会決定の読了率は４９・５％しかなかった。議案段階と大会後を合わせても、４０万党員×４９・５％＝１９．８万人しか、第２２回大会決定を読んでいない。それは、４７都道府県委員会と３１６地区委員会の怠慢に原因がある。
第２３回大会では、少なくとも、党費納入者全員に決定を読了させなければならない。現在の党費納入率は６９・８％である。４０万人×６９・８％＝２７.９２万人は、毎月所得の１％になる党費を納入しており、地区機関はそれを完璧に掌握できる。読了率をアップさせるために、不破報告の放送・ビデオの大々的活用を推進する。放送・ビデオを支部会議、地区の改定綱領学習会に参加して、視聴した党員は、「読了完了者」とみなしてよい。その集計を、地区→都道府県→党中央書記局に、週報・月報で報告せよ。読了完了行為を、このように簡素化・視聴覚化をすれば、党大会決定を４９・５％しか読了しないという不名誉な組織体質を挽回できる。
党費納入率６９・８％とは、１９９８年(平成１０年)度分について、「政治資金規制法」で、わが党が報告し、「政府官報」が公表したデータである。その年度の公表・在籍党員は３８万人だった。１年分の個人の党費・会費は、延べ３１８３２３３人で、１２カ月で割ると、１カ月平均の党費納入党員は２６５２６９人となる。２６５２６９÷３８万人＝党費納入率６９・８％である。現在も、納入率は、基本的に変わっていない。ただし、志位和夫委員長は、２００７年７月、５中総において、党費納入率が６３．０％に激減したと報告し、危機感を込めて納入率アップを訴えた。
『日本共産党の党勢力、その見方考え方』〔目次〕Ｐ(党員)欄に「政府官報」公表データ
その運動と合わせて、３０･２％・１１４７３１人の長期未結集・党費未納者に、『７中総決定パンフ』(２５０円)を届け、日本の民主主義革命に再結集するよう呼び掛ける。党外からは、これを「共産党の水増し・幽霊党員」とけなす声もある。しかし、彼らは、日本革命を目指し、６１年綱領に賛成して、入党した者である。今回の改定綱領は、７９人・７２％以上の中央委員が、４３年ぶりの改定綱領を初めて聞いたのにもかかわらず、３日間に一言の発言・質問もできないほど、練り上げられた完成品だった。
党機関は、この長期未結集・党費未納者にたいする再工作を強化せよ。というのも、党大会代議員数の選出枠は、各都道府県委員会の党費納入者約３００人に１人となっており、その合計が切り上げ３０万人÷３００人＝約１０００人の代議員になっている。長期未結集・党費未納者を解決すれば、都道府県の党大会代議員が増えるという書記局決定になっているからである。第２３回大会の代議員は、１０１３人だった。
党中央は、２００３年１２月３日、１０中総を開いて、総選挙総括と参院選方針を決定した。そこでは、深刻な事態が判明した。総選挙２０議席→９議席惨敗の問題だけではない。『７中総決定パンフ』届け運動の結果である。６月２３日の７中総後、６カ月間たっている。それにもかかわらず、改定綱領が届いた党員７０．４％だけで、届けられていない党員は、２９．６％・１８．４万人に上る。これは、全中間機関と２５０００支部指導部の怠慢である。このままでは、この数値が、「共産党の水増し・幽霊党員」であることを、自ら立証することになりかねない。
３、党内討論における民主集中制の原則厳守と規律違反者の調査（＝査問）
現在、４３年ぶりの綱領全面改定内容にたいして、賛成意見が圧倒的である。しかし、一部の支部・党員の間に、強い批判・反対意見があり、反対運動の動きや離党の声もかなり出てきた。インターネットＨＰ掲示板や一部学者が批判意見を発表している。マスコミによる批判論文・記事も出ている。これらを軽視してはならない。なぜなら、それら党内外の批判・反対意見に影響を受けて動揺する党員が表面化する危険があるからである。
よって、改定綱領討論は、支部の枠を越えてはならない。他支部や他グループは、民主集中制の立場から見れば、「党内」ではなく、「党外」となる。支部を越えた横断的水平的討論のやり方は、分派活動とみなす。それは、地区委員会が正規に招集した改定綱領学習会以外の、複数の支部間、あるいは、異なる支部の党員間で、改定綱領にたいする批判・反対意見を討論することである。その性質は、１９７２年「新日和見主義」問題で、民青中央・都道府県幹部たちが、個人宅・居酒屋・喫茶店で、共産党中央委員会にたいする批判・不満を話し合った分派活動と同じである。その行為を「２人分派」「３人分派」と認定し、６００人を調査（＝査問）し、１００人を党員権１年間停止処分にし、民青から追放したことは、まったく正しかった。今回も、各機関は、「２人分派」「３人分派」基準を適用せよ。
『｢新日和見主義分派｣事件』「２人分派」「３人分派」の実態と性格
民主集中制の規律に違反した党員を発見した党員は、それを党機関に報告(＝密告)する義務がある。その通報を受けた党機関は、その支部・党員にたいして、ただちに厳格な措置をとる。(１)その党員を呼び出しての「協議」→（２）規律違反容疑としての「調査（＝査問）」→(３)本人がその分派行為を自白したら、綱領規約の精神に不適格とし、所属支部には事後通知で、党機関が直接「除籍」措置をとり、党外排除をする。この対応が厳し過ぎると動揺してはならない。
というのも、１９５８年第７回大会において、党章の綱領部分(＝６１年綱領と同じ内容)に反対する代議員が４０％もいた。宮本顕治書記長は、６１年綱領採択に向けて、綱領批判・反対の幹部・党員の数百人を、これに類似する手法で、分派活動とのレッテルを貼り付け、続々と摘発し、一人残らず党内外排除をした英雄である。彼の英断によって、３年後の１９６１年第８回大会は、４０％反対から一転して、満場一致で６１年綱領を採択したという実績があるからである。
改定綱領に賛成する立場からの質問、その立場からの修正提案は大歓迎である。しかし、批判・反対の意見書を支部内で討論させてはならない。党機関は、その文書を受け取るだけにする。なぜなら、それはあくまで、その党員個人の上級機関にたいする垂直・単独意見提出権に基づく文書だからである。
この文書は、赤旗臨時号として、随時発行した。第１号は、８月４日付で６１通を載せて、発行した。第９号まで発行した。全体で、討論誌への応募意見は、５６７通だった。これは、有料・予約注文制である。討論版について、全党員に無料で配布すべきという意見も党中央に来ている。しかし、第２２回大会決定の読了率が５０％台で、党員の半分２０万人が、党大会議案・決定も読まない状況にある。その党員レベルで、全党員に無料配布することは、意味がない。読みたい党員が買えばよい。
第２２回大会は、赤旗臨時号を各支部に一冊を無料配布したが、途中から止めた。値段は４号全部で２００円、一冊５０円だった。第２３回大会では、各支部への一冊無料配布を最初からしない。そして、個人予約注文のみとし、一冊２００円に値上げした。
批判・反対意見を持つ党員の言動を注意深く監視する。党機関は、異論提案者を、３１６地区党会議の支部選出代議員にさせないよう、支部長・ＬＣと秘密裏に協議する。そして、異論者が、パソコンを持ち、インターネット接続者がどうかを調査し、上級機関に党員名・支部名・異論内容・パソコン所持有無などを報告する。それは、「さざ波通信」「ＪＣＰウォッチ」掲示板の共産党批判発言と照合し、反党活動を摘発する上でも絶対に必要なことである。
インターネットＨＰ掲示板「さざ波通信」「ＪＣＰウォッチ」に、共産党員が意見を発表することは、規律違反とみなし、全面禁止する。わが党は、２０００年、第２２回大会で、４３年ぶりの規約全面改定をした。規約第５条５項「党の決定に反する意見を勝手に発表することをしない」、８項「党の内部問題は、党内で解決する」は共産党員の義務条項である。そもそも、「さざ波通信」は、現役共産党員グループと詐称する反党的ＨＰである。共産党ＨＰのメール欄に「さざ波通信は共産党となんの関係もない」と明記してきた。しかし、それは、かえって、彼らのＨＰを宣伝してやるような逆効果をもたらす危険があるので、２００３年７月、メール欄から削除した。
いずれにしても、ＨＰ掲示板や党外雑誌に、党員が発言する行為は、規律違反として、調査（＝査問）の対象とする。共産党ＨＰは、日本の政党ＨＰのなかでも、もっとも充実したコンテンツと優秀なスタッフを抱えている。そのことは、インターネットＨＰにおける反党分子摘発の技術もハイレベルにあることを意味している。中央委員会は、書記局、幹部会第二事務部(＝非政権共産党の秘密政治警察機関)、共産党ＨＰ作成部門、全都道府県委員会組織部(＝反党分子対策部)など、２１世紀型Ｄigital Ｐoliceとしての科学的社会主義機能を最大限に発揮し、ＨＰ掲示板を使った規律違反・反党活動党員の摘発を強化する。
ちなみに、レーニンは、秘密政治警察チェーカーを、権力奪取クーデターの１カ月後に創設し、それを２８万人に拡大した。レーニンは、「反革命」「武装反革命」「人民の敵」と認定した自国民数十万人を逮捕・銃殺・強制収容所送りにして、社会主義めざす道を推進した。さらに、レーニンは、１９２１年３月第１０回大会からその夏にかけ、秘密政治警察チェーカーに指令して全党員を再チェックさせた。そして、当時の党員数の１／４にあたる１３６８３６人を分派活動規律違反や不活動・退廃容疑で除名し、一党独裁クーデター政権生き残り作戦の一つとして、党内規律を高めた。
党内に巣食って、日本の民主主義革命・社会主義的変革に反対する者を摘発・排除することは、レーニンの偉大な教訓に習うことでもある。
第２２回大会前後で、「さざ波通信」批判キャンペーンと掲示板発言者摘発・査問・排除運動を全党的に展開した。党内における異論者の発言内容と、掲示板発言の内容とを照合し、ハンドルネームから、所属都道府県委員会と本名を割り出す作業は、困難を極めた。しかし、それによって、中央委員会は、インターネット発言と党内発言の両者から、数十人の規律違反者を特定し、摘発・調査（＝査問）、除籍をできた。もちろん、自己批判書を書いて、掲示板発言を中止した党員もかなりいる。
規律違反との科学的な闘争によって、蓄積した体験とデータは貴重である。今回の第２３回大会では、それをさらに発展させて、規律違反者の摘発を継続する。なお、第２３回大会の赤旗臨時増刊号の予約注文者のリストを整備しておく。というのも、第２２回大会前後における「さざ波通信」「ＪＣＰウォッチ」掲示板発言の数十人の規律違反者摘発で判明したことは、彼らのほとんどが、第２２回大会赤旗臨時増刊号の予約注文者だったことである。彼ら党内に巣食う反党分子らは、貪欲に反対意見・異論を読みたがる本性をもっているからである。第２３回大会における規律違反者摘発・排除作戦においても、予約注文者リストは、役に立つ。このような２１世紀型の科学的闘争をしているのは、世界の政党で、日本共産党と中国共産党だけであり、２党は、誇るべき先進政党となっている。
『インターネットＨＰ攻撃政党』『掲示板発言者摘発・粛清政党』
６、代議員選出(＝任命)のやり方と上級機関の事前許可制
現在の中央委員１６６人は、６１年綱領と同一内容の党章草案に中央委員の２４％が反対した第７回大会と違って、一人も反対しなかった。地区党会議選出の都道府県党会議代議員、都道府県党会議選出の党大会代議員の機関推薦リストは、第２２回大会リストとほぼ同じになると思われる。そのリストメンバーに、批判・反対意見者がいないかどうか、綿密に再調査し、チェックをする。とくに、異論・反対意見を表明する役員だけでなく、面従腹背的な態度をとる地区委員、都道府県委員を、党大会代議員の機関推薦リストから排除せよ。
偉大な宮本顕治書記長は、代議員４０％反対の第７回大会から３年後、一挙に、満場一致の第８回大会を演出した。このような秘密裏の異論者摘発・排除作戦を通じてこそ、第２３回大会においても、世界に冠たる一枚岩党大会の業績を継承できる。もし、地区委員・都道府県委員クラスで、反対者が出た場合は、宮本書記長のやり方を実行する。
第８回大会が近づいても、中野重治中央委員と他一人の中央委員が反対の立場を変えなかった。彼を党大会代議員にすれば、反対の挙手をすることが確実視された。そこで、宮本書記長は、中野中央委員ら２人を、どこの都道府県党会議の党大会代議員リストにも載せさせず、党大会議決権のない評議員とした。というのも、中央委員といえども、４７都道府県党会議において、党大会代議員リストに載り、その党会議で選ばれなければ、党大会議決権がないという規約取り決めになっているからである。宮本書記長は、この規約の落とし穴を見事に生かして、反対派中央委員を排除した。
中野重治は、中央委員会席の壇上にいたが、評議員なので、党大会の反対・保留・賛成の採決で一度も挙手できなかった。宮本書記長が、反対者の彼を満場のさらし者にしたように、反対の地区・都道府県委員の議決権を合法的に剥奪し、満場一致の党会議と党大会を演出せよ。いうまでもなく、代議員リストは、従来どおり、各党会議の前に、上級機関の点検と許可を必要とする。ただし、マスコミ向けには、事前許可制を廃止したとウソの説明してあるので、その点を留意せよ。
『ゆううつなる党派』代議員選出＝任命システム、機関役員任命システム
ところが、第２３回大会において、京都府委員会選出の代議員１人が反対の挙手をした。これは、日本共産党の栄えある満場一致党大会の歴史を汚した反党行為とも言える。第２２回大会では、東京都委員会選出の弁護士支部代議員が、規約全面改定には賛成したが、自衛隊容認問題に関して党大会決議に保留の挙手をした。今後、このような汚点を残さないように、党中央は、東京都委員会と京都府委員会にたいして、強烈な批判をし、自己批判書を提出させた。
７、下り党会議の機関役員選出(＝任命)における異論・反対者の排除、専従解任
さらには、常時、都道府県委員長会議で秘密の口頭指令をしていることであるが、異論・反対意見を表明した都道府県委員・地区委員は、後期・下りの都道府県党会議・地区党会議において、次期役員の機関推薦リストから排除する。彼らが専従である場合は、なんらかの口実をつけて、即刻、専従解任をする。専従解任は、規律違反処分ではないから、各中間機関委員長が、本人に解任を口頭通告する措置だけで完了する。それに抵抗・対抗できる規約上の手段は、垂直・単独意見書を提出できる権利以外、専従側に一切なく、仮にそれが党中央に届いても必ず握りつぶすので、安心して通告せよ。
なぜなら、宮本顕治議長が、つねづね常任幹部会や幹部会で強調していたように、「一般党員には党中央批判が許されるが、４０００人の日本共産党専従・赤旗記者・国会議員秘書が党中央批判を言うことは許されない」というのが、日本革命を起すことを職業とする職業革命家の倫理だからである。
第４部『「第三の男」への報復』警告処分・専従解任・点在党員組織隔離
第５部１『宮本・上田の党内犯罪、「党大会上訴」無審査・無採決・３０秒却下』
高度に発達した資本主義国という点では、ポルトガルはそれに該当しない。そのレベルの国家において、生き残っているレーニン型共産党は、日本共産党ただ一党になってしまっている。その日本共産党が、２１世紀に生き残るには、これらの措置は絶対必要条件である。
以上 健一MENUに戻る
(関連ファイル)
共産党日本共産党index 『しんぶん赤旗』 「新綱領」 「新規約」
不破哲三『綱領改定についての報告』(全文)
志位和夫『大会決議案についての報告』(全文)
『規約全面改定における放棄と堅持』２０００年第２２回大会
『「削除・隠蔽」による「堅持」作戦』２０００年第２２回大会
『不破哲三の体質』ファイル多数
中野徹三『古い教条とあたらしい現実との谷間で』日本共産党の改定綱領を検討
加藤哲郎『日本共産党が新綱領採択――現実政治への影響力は疑問（2004/1）』
Google検索『日本共産党 綱領』