"Old"ナルドの香油

お世話になりました


お世話になりました

  私は神戸で生まれ、小学校四年生の秋に、西宮に引っ越しし、中学校三年生の時に、友達に誘われて教会に行き、高校生二年生の春イースターに洗礼をうけた。その洗礼を授けて下さったのが、高橋昭市先生であった。

 高橋昭市先生はそんなにおしゃべりが得意な方ではないが、私にはいろいろと心に掛けて下さった思い出がある。

 私はいつも自転車で教会に通っていたのだが、教会のすぐ近くで止まること無く、さっと道を斜めに横断したことがあった。それを見かけておられた先生は「姉妹、あんな渡り方をしたら危ないよ。」とおっしゃった。別に、事故に遭いかけたわけでもないのに、わざわざ注意して下さったということに、私は心に留めて下さっているのだと思った。

 また、先生がスウェーデンなど北欧に行かれた折、しばらくお会いしないので、お元気かどうか手紙を差し上げたところ、大変喜んで下さった。お土産に頂いた木靴の型の針刺しは今でも持っている。

 そしてまた、高橋昭市先生には結婚した時にもお世話になった。結婚式の中での説教だけでなく、披露宴での結婚に至った訳を披露する時を引き受けて下さった。その役割は何故かいつも先生がされていて、私たちの時もそうだった。

 そのために、私たちはそれぞれ自分の結婚に至った訳について書いた物を先生に提出し、先生はそれをアレンジして紹介して下さることになっていた。

 いよいよその時となり、先生は準備した物を手に紹介をし始められた。先に主人の書いた物をアレンジして話されたが、非常に短くあっという間に終わってしまった。次は私の書いた物をアレンジして話されるはずだったが、そこで一言。「仁美さんの書かれた物はお人柄がにじみ出てまして・・・」と言われ、多分アレンジ無しに全部そのまま読んでしまわれた。

 読まれた私は恥ずかし過ぎて、どこかに隠れたい心境であった。

 娘の本性を暴露され、父はこれではいかんと思ったのか、最後の親族の感謝を述べる時に、突然、山中鹿之助の話を持ち出し、「この二人に七難八苦を与え賜え!」と挨拶し、何ともユニークな披露宴となった。

 毎年、結婚記念日には昔の8ミリからDVDに焼き直した物を二人で見ながら、思い出満載の結婚式を振り返ることにしている。