"Old"ナルドの香油

ハンサムウーマン


ハンサムウーマン
2013年10月3日
 今、大河ドラマで新島八重の話をやっているが、私の中には一人の素敵な女性の思い出がある。

 その人の名前は郭みよさん。大正生まれで笑顔の可愛いおばあちゃんだった。多分、何不自由も無い子供時代を過ごし、歯医者さんと結婚し、二人の子供を授かって幸せに暮らしておられたのだと思う。

 しかし、どちらが先であったかは知らないが、ご主人に先立たれ、息子さんは友達とのトラブルで、頭部に怪我を負い、精神的な障害を抱えることになってしまった。

 その突然の出来事の中で、今の様な賠償がどうとか訴訟がどうとかいうことも無く、ただ泣き寝入りの様な状況で、あまりの不条理に腹が立ち、相手の家に包丁を持って行こうとしたこともあった。とおっしゃっていた。

 ただ、そうした自分の中に潜む恐ろしい程の憎しみは彼女自身を見つめるきっかけになった。教会へと導かれ"自分の罪に初めて気付かされ、救われたんです。"と証詞されていた。

 私が出会った頃はもうおばあちゃんになっておられたが、そんな苦労は微塵も感じさせない、明るい方であった。孫の様な私たち夫婦に、おしゃりたい事は山ほどあっただろうに、何もおっしゃらず、むしろ、上に立てられた未熟な私たちを大切にして下さった。

 そして、また、ユーモアにも溢れておられた。私が"ご主人が早く亡くなられて寂しいでしょうね。"と言ったら、"主人がおったら、洗濯物が増えるだけですわ!"と笑っておっしゃったのには驚いたが、洗濯物で表現されたのには笑ってしまった。

 お年のわりには合理的というか、新しい事にも進んで取り組まれ創意工夫を常にされていた。そして何よりも尊敬できたところは、ご自分はモクモクと教会の雑用をこなしておられても、決して、他の人にあなたもやりなさいと強制されなかったことである。

 人は誰でも、自分だけがしんどいことをする事は受け入れられない。周りを責め、自分を犠牲者の様に考えてしまう。でも、郭みよさんは他の人がおしゃべりしていようとお茶を飲んでいようと、自分の仕事を喜んでしておられた。自分は神様に愛されている!という深い確信があったのでいつも自己充足しておられたのだと思う。

 年を取ると、どうしても不平不満が口をつく人が多いが彼女は違っていた。私もまだまだ彼女の足元にも及ばないが、少しでも近づけると良いと思っている。

 郭みよさん!また、天国でお会いしましょう!