"Old"ナルドの香油

桜の花に罪は無い


桜の花に罪は無い

   私の住んでいる所ではまだまだだが、所によっては桜が満開らしい。毎年、ニュースでも桜前線なる物の地図を発表したり、お花見日和は何日ですよ。と花見客の場所取りのためなのか、わざわざ予想を立てる。桜が日本人にとって特別の花であることは間違いないだろう。

 日本を代表する花、ワシントンとの逸話まで残る桜の木が、きな臭い話題となっている。

 お隣の国、韓国が桜の木はもともと韓国の木であったと言っているというものだ。私も樹木の専門家ではないので、確かなことは分からないが、少なくとも一番ノーマルな桜の木、染井吉野は韓国発祥の木でないことは明らかであろう。

 私はブームが去った今も、韓流ドラマが好きでよく見ている。そんなドラマの中で、主人公達がこんな台詞を言っていたのが忘れられない。

 「ここの桜の木は、日本が占領していた時に植えていた物を全部切って、新たに植え直した物なんだ。」

 "坊主憎けりゃ袈裟まで憎い"と言われるが、桜にまで恨みを抱くのか?とちょっと淋しい思いがしたものだ。

 だから、染井吉野を見れば、韓国の人にとっては日本を思い出させるものだったということであろう。

 だが、韓国に植わっている桜の木が染井吉野であるとすれば、いくら、切り倒して韓国で育てた苗木を使ったとしても、染井吉野はクローンだから、一本目の接ぎ木として誕生した物の子孫となる。

 また、今や、韓国ドラマでも桜の木は絶好の撮影ポイントとなっている事は否定出来ない。

 "美しき日々"のミンチョルとヨンスも"イ サン"のサンとソンヨンも、桜の花びらが舞い散る中で、お互いの思いを確かめあっていた。

 国のほとんどが、日本よりも長く厳しい冬を過ごし、今か今かと待ちわびた春に、咲き誇る桜の花。この春を告げる桜の木が、辛い過去を思い出させるものではなく、明るい未来を想像させるものであって欲しいと思う。 

 ただ、同じ桜をながめても、ウキウキとした温かい思い出に浸れる人と、桜が散る度に失った人の面影を辿る人と、人の思いは様々である。