あのおじさんどうしてるかな? |
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2013年8月24日 |
もう、約三十年程も前の話ですが、その頃私たちは大阪の一番南にある教会に住んでいました。主人はその日聖書学校に教えに行っていたのだと思います。私と子供は留守番で昼下がりに散歩に出かけました。ぐるりと散策した後、家に帰って玄関の鍵を開けるとそこには見慣れぬ靴が脱いであり、どうも上に人の気配が・・するのです。最初私は近所に住んでおられる教会員の方が建物の修理かなにかで来て下さったのかなぁと思いました。が、それにしても勝手に上がられる事は無いだろうに・・と思って玄関で立ち尽くしていると、誰かが下りて来ます。しかも、その足には、これは見慣れた主人の靴が見えました。 “これは只事では無い”と思った私の口から出た言葉は・・”あなたは何をしているんですか?”でも、何も答えません。そして、よく見ると胸にはしっかと抱きかかえた小さな鞄がありました。”何かを取ったなら、その鞄の中に入れているに違いない”そう思った私は離そうとしない鞄を力ずくで取り上げました。”たとえ僅かであっても盗られてはならない。”と思ったからです。男はと言えば、あれ程大事そうに抱えていた鞄を取られたのに、取り返そうともせずに、さっさと逃げてしまいました。 その後、警察に連絡したり、教会員の方に知らせたり、大変でしたが、その男はすぐに捕まりました。”念のために、奥さん、どんな奴でしたか?”と聞かれ、”こんな風貌で、こんな服装で・・”というやいなや、”あっ、間違いないわ”とお巡りさん。いつもは人の顔を覚えるのが苦手で全然覚えない私が、写真でも撮った様にはっきりと覚えていました。 ただ、盗られた物が入っていると思った鞄には私たちの物は一つも無く、そのおじさんの釜ヶ崎での身分証明とアミニティグッズのみで、すごく恥ずかしい思いがしました。 おかげで、教会員の方には”奥さん、凄いわ”と驚かれ、青年の人には”泥棒の物を取り上げるなんて”と笑われました。 でも、お金はちゃんと盗っていた様で、おじさんの元々の所持金はほぼゼロだったようです。また、私に私物を盗られたおじさんが実は前科何犯だ、というのも後から警察の方に聞き怖くなるとともにいたたまれない気持ちになりました。あのおじさんどうしてるかな?と時々思いますが、更生していてくれると嬉しいのですが・・ |
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