"Old"ナルドの香油

ある春の日の午後


ある春の日の午後

   先日、久し振りに大学のゼミの友達と大阪で会った。私は電車に乗るのも何年かぶりで、まず、駅の近くに車を停めるパーキングをネットで探し、それも、一台や二台ではなく、何百台も停められるところ(もし、満車になっていたら、別の所に行かなければならなくなるので)を見つけ、車を停めて駅を目指した。

 最近の駅は便利な様で、下手をすればとんでもなく遠回りをさせられたりするので、ここはオバサンの厚かましさ、まさに車に乗り込み、駐車場を出ようとする男性に"駅に行くにはどう行けば良いですか?"と尋ねた。男性に尋ねるとは"はしたない。"とおっしゃる方もおられるだろうが、そこは、やっぱり、女性よりも男性の方が一般的に道を教える能力に優れていると思うからである。

 その方は急いでいるにもかかわらず、この都上りのオバサンを捨て置けず、丁寧に丁寧に(ひょっとしたら、この方、駅まで連れて行って下さるのではないか?)と思うほど丁寧に道を教えて下さった。その方の道案内は完璧で、言われたとおりに行くと、簡単に駅に着いた。

 さて、これからどうしよう。友人との待ち合わせは12時5分の特急が来るプラットフォームなのに、まだ11時25分。どこかでお茶でも飲もうか?と思っていたら、小さな書店が目に入った。本屋さんに一人で行くなんて久し振り!(だいたい、誰かと行ったら、待たされる。(@_@))本棚をあちらこちら眺めながら、いろいろと物色した後、一冊の本が目に留まり、購入して店を出た。

 友人との待ち合わせ場所は、進行方向からすると、末尾と言われていたので、近くにあるベンチに腰を下ろし、先ほど買った本を読み出した。春とは名ばかりの寒い日で、本を読みながら震えていると、"ひいちゃん?"と懐かしい声がした。顔を上げると、何十年経っても全然変わらない同級生の顔が、そこにあった。

 私はつり革をしっかりと握っていないと転けそうなのに、その友人は腰を横バーにくっつけているだけで、ヨロッともしない。そして、昨日も会ったかの様に、次々と話を繰り出す。連れられるがままに、目的のお店に到着。"ひいちゃんが待ってたら可哀想だから、いつもより早い電車で来たら、早く着いちゃった。いつも、遅刻なのにーって言われるわ。" 案の定、来る人来る人に"早いやんか〜。"と言われている。

 さて、全員が揃い、予約してくれていた個室に案内され、久し振りの同窓会が始まった。男性の会であれば食事だけではなく、お酒やカラオケでもないと場を保てないだろうが、そこは、女性たち、お食事を頂きながら後はひたすら喋る、喋る。

 よくぞ、個室を取っていたなあと納得する事しきりであった。女が三人寄れば姦しいと言われるのに、何せ七人も寄ればけたたましいと言われかねない。一人一人に今、はまっていることを聞きながらあっという間に三時間が過ぎていった。

 私の友人はほとんどが、小学校や聾学校の教師や言語療法士の仕事を卒業以来ずっとやっている人たちである。それぞれが次々にやって来る子どもたちや親たちの問題や課題に追われ、研究会で学び走り続けて来た精鋭である。

 彼女たちの一生懸命に駆けてきた姿を見ると、卒業以来、免許を取っただけのペーパードライバーである自分は何をしてきたのだろうと考えさせられる。いろんな話題に私が意見を言うと、"ひいちゃんは相変わらず、凄いわ〜何でも、つっこめるんやね。"ってお褒めにあずかった。

 褒めてはいただいたが、要するに、これという極めた物が無いと言うことである。私の友人がデパートの中にある専門店であるとすれば、私は昔、何処の町にでもあった"万屋(よろずや)"のたぐいであろう。(塩やいりこやマッチを売っていた)

 "ひいちゃん!また、絶対来てな!"という同級生の温かい励ましを頂いて、帰り道についた。 皆さん、どうもありがとう。